[Transcode]00: ファイルベースで重要性を増す「トランスコード」

HOME  >  SPECIAL  > [Transcode]00: ファイルベースで重要性を増す「トランスコード」

Special

[Transcode]00: ファイルベースで重要性を増す「トランスコード」

2010-02-10 掲載

[Transcode]00: ファイルベースで重要性を増す「トランスコード」

ファイルベース・ワークフローが一般化してきた。Inter BEE特集や実際の会場を見渡しても、その関心の高まりは顕著だ。ファイルベース・ワークフローが普及するようになってきてから、「●●から▲▲へトランスコードして......」というように、「トランスコード」という言葉をよく目にするようになった。しかし、ファイルベースに移行したばかりの人にとっては、「あぁ、納品フォーマットに整えたけど何かを行っているのかな...?」と、実際にどんなことを指すのかは具体的には知らないということも増えてきていることも事実だ。ここでは、トランスコードで何が行われているのかについて整理してみよう。

振り返ってみれば、2年前のNAB 2008あたりから「テープレス・ワークフロー」という言い方を「ファイルベース・ワークフロー」へと置き換えて使うようになってきた。このタイミングは、各社からテープレス・カメラレコーダーが出揃い、テープベース・カメラレコーダーもファイルベース収録が可能になり、同時にサーバで管理された映像素材を用いてノンリニア編集/フィニッシング、配信が可能なトータルワークフローを構築できるようになってきた段階だ。つまりワークフロー全体で、テープに書き出すことなく、ファイルを作り変えるだけで作品を完成できることから「ファイルベース」と呼ばれるようになったのである。

このファイルベース・ワークフローの進展とともに、「トランスコード」という言葉も一般化してきた。トランスコードは、Transcodeと表記するように、「コード(code)を別の状態にする(Trans-)こと」、すなわちコーデック変換することを意味する業界用語だ。この用語が一般的になるまでは、ファイル変換と言ったり、ファイルエンコードと言ったりしていたことが多かったと思う。テープレス・カメラレコーダーが登場してしばらくの間は、テープベースで制作していた時に使用していた「エンコード/デコード」という表記を流用してきた。つまり、コーデック変換を行うハードウェア製品は「エンコーダー/デコーダー」としたり、変換器を意味する「コンバーター」と言われていた。

余談になってしまうが、ノンリニア編集で映像ファイルをハードディスク上に作成する段階についても、テープベースでは「ビデオキャプチャ/デジタイズ」としていたが、ファイルベースでは「インジェスト」「読み込み(インポート)」とするようになってきている。「インジェスト」と「読み込み(インポート)」については、共有サーバを使用するのか、ノンリニア編集ソフトウェアから読み込むのかという部分で使い分けている。

このように、新たに「トランスコード」という言葉を使用するようになった背景には、テープベースとファイルベースのどちらのワークフローが主体になっているかで明確に用語を区別していこうとしているわけだ。現在では、「エンコード/デコード」と言う場合は、映像出力信号を変換する場合に限定して使用されるようになってきている。

トランスコードがワークフローを担う

「トランスコード」がなければファイルベース・ワークフローは成り立たない。それほど、重要な役割を担っていると言ってもいい。例えば、

  1. 収録したカメラコーデックの素材をノンリニア編集で使用する制作用コーデックに変換する。
  2. 編集途中の作品を、プレビュー確認用に書き出す。
  3. 編集が終わった作品を納品用に書き出す。
  4. 作品の2次利用のためにDVD/Blu-rayオーサリング用に変換する。
  5. Webストリーミング用の配信用ファイルとして書き出す。
  6. 異なる制作システムで利用できるファイル形式に変換する。
  7. 放送局間や編集スタジオ間で、素材を共通なフォーマットに統一する。

などなど。映像制作に携わっていれば必要となる作業であることが分かる。

ここで注目したいのは、以前、フォーマット変換やメディア変換と表現していたものが含まれているということだ。「書き出し(エクスポート)」と言われると「そのまま書き出される」イメージだが、「変換(Transform)」と言われると「全く別のものになってしまう」という「Change」に近いイメージを持つ人も多いだろう。これは、テープベース時代(*)に、テープからファイルへと全く異なるものに変えて作業をしていたことにも起因する。ファイルベースで「トランスコード」という表現に統一されてきた背景には、こんな負のイメージを取り除く意味もある。

(*注) ここでは、現在のようにワンソース・マルチユースでさまざまなフォーマットの映像を出力する必要性が少なく、テープ収録後にノンリニア編集を行い、編集結果をテープに書き出すことを中心にしていた時代を指す。

もちろん、画像解像度やビットレートを低いものに変更する場合であれば、可逆的な圧縮を使用しない限り元の映像クオリティを保つのは難しい。これは情報を間引いてしまう以上避けられないことだ。しかし、制作段階において映像を扱いやすくするために使用する変換は、映像素材を変えずにラッピングし直して、別のファイルフォーマットに変更することも含まれる。この場合であれば、ファイル構造が変わるだけで、映像クオリティは維持されている。

例えば、次のようなケースを考えてみよう。XDCAM、XDCAM EXなどではMXFファイルフォーマット・MPEG-2コーデックを採用している。同じ形式・同じコーデックだから互換性があるのかと言えば、そうではない。それぞれのファイルを別のカメラレコーダーで扱うメディアにコピーしてもうまく動作しないはずだ。それは、映像ビットレートが異なったり、メタ情報の取り扱いなどが異なり、互換性はないからだ。MXFは映像ストリームとオーディオストリーム、メタ情報をどう格納するかを定義しただけであり、自由度がかなり高くなっているためだ。これをノンリニア編集で利用するためには、映像ストリームやオーディオストリームを取り出し、メタ情報を活用しなければならない。単にアンラップして情報を取り出すだけに過ぎないのだが、やはりファイル変換作業である。ここで「ファイル変換して取り出す」とすると、ただ取り出すだけなのに映像品質が下がったように感じてしまう。

このように、現在のファイルベース・ワークフローでは、「映像品質はそのままに扱いやすいフォーマットへ変更する」という場合も含め、ファイルからファイルへの変更を「トランスコード」と表記するように統一するようになった。それでは実際のワークフローを見てみよう。

Transcode2.jpg

イメージしやすいトランスコードは、カメラコーデックから制作用コーデックに変換する作業だ。ノンリニア編集システムに搭載されている「インポート」「読み込み」「切り出し」といった機能が受け持っている。特殊なケースでは、カメラコーデックのファイルを共有ディスクにインジェストすると映像とメタ情報に自動的に分けて記録する製品もある。また、AJA Video SystemsのKi Proのように、ハードウェアを使用してカメラなどのベースバンド出力信号と制作用コーデックを相互にエンコード/デコードする、ファイルベースとテープベースとを橋渡しするようなトランスコード製品的なものもある。こうしたファイルベース・ワークフローをより円滑にさせるための製品は、今後も増えていくはずだ。

その後、この素材を使用して実際の編集作業に入ってしまうと、素材の受け渡しや作品のプレビュー、作品の納品や2次利用など、さまざまなファイル形式を取り扱わなければならなくなる。ここからは、いかにトランスコードの回数を少なくするか、いかに作業をスムースにするかによって、ワークフロー全体の効率が大きく変わってきてしまう。ここで活躍を始めるのが、各社から発売されているトランスコーダー製品だ。

トランスコードがファイルベースで重要な役割を担っていることは整理できたと思う。次回は、トランスコーダー製品について紹介しよう。


[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2010-02-10 ]
[ TAG : Transcode トランスコード ]

この記事に関連する記事一覧

[Transcode]03: HP Z800によるRhozetトランスコーダ導入検証レポート

[Transcode]03: HP Z800によるRhozetトランスコーダ導入検証レポート

VTRによるリニア編集からノンリニア編集になり、1インチやD2、スイッチャー、DVE、編集機、ミキサー、テロップなど、高価な上に大きく重たい機材から開放された。こうした機材は、スペ .... 続きを読む

[Transcode]02: アクトビラへの対応でRhozetトランスコーダを活用

[Transcode]02: アクトビラへの対応でRhozetトランスコーダを活用

前回はトランスコーダ製品のなかからRhozetトランスコーダの機能について紹介した。今回は、実際にトランスコーダ製品を利用している現場として、デジコン株式会社(東京都台東区)の取り .... 続きを読む

[Transcode]01: ワークフローの作業効率を改善する「トランスコーダ」

[Transcode]01: ワークフローの作業効率を改善する「トランスコーダ」

トランスコードは、ファイルベース・ワークフローに欠かせない作業であり、作業を効率化する鍵を握るのがトランスコーダの役割であることを、『00: ファイルベースで重要性を増す「トランス .... 続きを読む

USTREAM生放送番組

PRONEWS Lounge
テーマに沿ったゲストを招き、対談・ディスカッションなどを特設会場より生放送。過去放送分も視聴できます。

特集記事

CES 2012レポート
世界最大級の家電見本市CES2012の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。
PRONEWS AWARD 2011
2011年を振り返りつつ、2012年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2011 スペシャルレポート Inter BEE 2011スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されるInterBEE2011。PRONEWSでは今年もInterBEEのオフィシャルメディアパートナーとして、様々なコンテンツをお届け!
Inter BEE 2011の歩き方 Inter BEE 2011の歩き方
最小限の力で最大の効果が得られるInterBEE2011のおすすめの歩き方を、目的に合わせたコースごとに紹介する。
CEATEC JAPAN 2011 CEATEC JAPAN 2011
10月4日(火)から10月8日(土)まで幕張メッセにて開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展 "CEATEC JAPAN 2011"をプロの視点からレポートする。
Movie Maker's GIG in Europe Movie Maker's GIG in Europe
オランダ・アムステルダムで開催されたIBC2011レポートを中心に、新たに湧き起こって来た映像技術における次世代の新テーマなど、現場から伝わって来たその温度感をレポートする。
PRONEWS課題図書 PRONEWS課題図書
2011年の夏の終わりに、あらためて「映像」に関わるものとして「映像」について考え、新解釈を探る事にした。
SIGGRAPH2011 SIGGRAPH2011
CGの祭典「SIGGRAPH」が8月7日から11日の5日間、カナダ・バンクーバーで開催された。受賞作品を映像と共に紹介する。
Stereoscopic 3D 第4章 Stereoscopic 3D 第4章
1年ぶりの3D特集。この間に3Dを取り巻く状況はどのように変化しただろうか?押さえておくべき3Dの基礎を考えつつ、2011年の3Dを再考してみる。
Movie Maker's GIG in Hollywood Movie Maker's GIG in Hollywood
セッション(GIG)感覚で映画が創れる時代の潮流をハリウッドではどう捉えているのか?CineGearExpoの情報もお伝えしつつ、次世代のプロ映像制作者像を追い求める。
Master Mind Camera 2011 Master Mind Camera 2011
今必要な理想のカメラを追求しつつ、カメラを使う人と機能から紐解いていく。
NAB2011 NAB2011 スペシャルレポート
4月11日から米ラスベガスにて開催された世界最大の放送機器展「2011 NAB Show(NAB2011)」。毎年恒例のレポート特集を現地よりお届け。
USTREAM最終案内+ USTREAM最終案内+
奇しくも、今回の震災でのライブメディアが活躍する事になった。3.11以後USTREAMをはじめとするライブメディア/ソーシャルメディアのあり方を今一度取り上げてみたい。
ファイルベース新時代 ファイルベース新時代
ファイルベースの進化は、VTRの進歩とともに現在に繋がってくる。1950年代に開発されたVTRを起点にその流れを簡単にさかのぼってみよう。
Into the Lens
『CP+』における取材を通じて、2011年のプロ映像界におけるレンズの世界最新事情や表現者たちの最新機材での挑戦を追う。
CES 2011レポート
世界最大級の家電見本市CES2011の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。
PRONEWS AWARD 2010
2010年を振り返りつつ、2011年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2010スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2010のレポート記事や動画を掲載。
Inter BEE 2010の歩き方
目的に合わせたInterBEE2010の歩き方を紹介する。
映像品質検証 -VQC-
デジタル映像全盛の今、問われる映像品質検証の現状とは?
DSMC/DSLR 2010 #2
現場感覚におけるDSLRの現状の捉えられ方を取材してみた。
Stereoscopic 3D 第3章
ステレオスコピック3Dの具体的な制作方法を考えていく。
Ustream最終案内
Ustreamの世界の可能性を実際に現場で活躍する人々から探ってみた。
Digital Cinematography 2010
Cine Gear EXPOの様子などから、これからのハリウッド映像制作の方向性を紹介する。
Stereoscopic 3D 第2章
関心が高まっているステレオスコピック3Dコンテンツの制作について整理していく。
DSMC・DSLR 2010
CP+のレポートを中心に、2010年のDSMC/DSLRの動向について考察していく。
ファイルベース収録カメラ最新案内
ファイルベース収録カメラを選択するための基準や基礎知識等を、レビューを交えて考察する。
Transcode
ファイルベース・ワークフローの普及と共によく目にするようになったトランスコードについて整理する。
映像新時代2010
2010年の映像制作の潮流を様々な方面から予想していく。
稲田出のトレンド100選
InterBEE2009で見た2010年注目100アイテムを紹介。
PRONEWS AWARD 2009
2009年を振り返りつつ、2010年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。
Inter BEE 2009スペシャルレポート
千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2009のレポート記事やブース動画を掲載。
Inter BEE 2009の歩き方
目的に合わせたInterBEE2009の歩き方を紹介する。
最新映像制作ワークフロー VFX 2009
最新映像制作ワークフローの中から、制作効率を改善していくヒントを探す。
オンボードライト特集 Light House
新時代を予感させるLEDを中心にオンボードライトを解剖する。
立体視映像特集 Stereoscopic 3D
再び脚光を浴び始めているステレオスコピック3D制作に焦点を当てる。
REDワークフロー特集 RED flow Now
RED ONEの最新ワークフローを考える。
4Kデジタルシネマ特集 4K Ready!
RED ONEの登場で一気に注目されつつある4K映像とは?
デジタルサイネージ特集デジタルサイネージ2009
急速な広がりを見せるサイネージメディアを紹介する。
ワークフローの鍵を握るMXF
MXFファイルを活用する現場を取材し、制作ワークフロー全体に広がるMXFを紹介する。
フルデジタル制作移行、その課題と展望
フルデジタル制作環境に向けて乗り越えなければならない課題と、その先の可能性を紹介する。
2008年総括:これからの映像業界
2008年の売れ筋を見ながら、人気機材の動向を振り返ってみる。
次世代収録環境へのアプローチ
2008年のカメラ環境を踏まえ、次世代環境に必要なものを考える。

HOME  >  SPECIAL  >  [Transcode]00: ファイルベースで重要性を増す「トランスコード」