CCDまたはCMOSの関係に迫る!

ビデオカメラの撮像素子(センサー)は、放送用はCCD、業務用はCCDまたはCMOSが採用されている。撮像素子は感度、ノイズ、ダイナミックレンジといった性能面で、業務用のカメラでも以前はCCDを採用していたが、現在ではCMOSの性能もかなり向上し、CCDより高性能な素子も出てきている。ただし、すべての面でCMOSが優れているというわけではなく、センサーのサイズや用途などで、ある程度住み分けができているというのが現状のようである。

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▴ソニーPower HAD CCDセンサー

CCDかCMOSかは解像度や感度、SNといった問題もあるが、現状ではこうした性能面での優劣は一概に付けがたくスミアやローリングシャッター、高速撮影といった構造上の違いからくる機能面での差が大きいようである。両者の撮像原理を簡単に説明するとCCDは、面で捉えた画像を転送領域に一度にコピーし、それを順次読み出すグローバルシャッター方式となっている。

一方CMOSは画像を順次読み出すローリングシャッター方式だ。したがって、画像の上と下では撮像時間が異なるということになる。たとえば、毎秒60コマ撮影であれば、画面の上と下では1/60秒の時間差があるというわけだ。これが、高速で動く被写体がゆがむ原因であり、ストロボのように非常に短時間で画面全体を照射するような被写体を撮影したときに画面の一部分だけが白く飛んでしまうというフラッシュバンドといった現象を生んでしまうということになる。

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▴ソニーExmor CMOSセンサ

CCDはこうしたウィークポイントがない代わりに、CMOSのように既存の半導体製造ラインとは異なった製造工程が必要となるので、コストが高くなるほか、転送や読み出しなどを行うためのタイミングや消費電力などの面でデメリットがある。また、CMOSのようにセンサー内にADコンバーターや駆動回路などを組み込むことができないため、実装時の周辺回路が複雑になってしまう。 放送用のカメラの場合は様々な用途で使われるほか、運用形態も業務用カメラより幅広い。また、業務用のカメラほどコスト面で制約がないので、CCDが採用されているといってよいだろう。ただ、これも現時点での話であり、今後はCMOSを採用した放送用カメラが開発される余地は充分にあると思う。

イメージサイズについて

一般に同じ技術レベルで作られた素子であればCCDでもCMOSでもサイズが大きいほうが感度、ノイズ、ダイナミックレンジの面で有利である。さらにいうならば、画素の面積が大きいほうが高感度ということになる。長年CCDがCMOSに比べ、高画質、高感度といわれてきたのは、構造上CCDのほうが画素の面積が大きく実装できたからだ。

CMOSは配線などのスペースがCCDよりスペースが必要になるため、その分画素の面積が狭くなりCCDに比べ不利になっていたからだ。2008年にソニーから発表され、実用化された裏面照射型CMOSは画素の裏側に配線を配置することで、こうした欠点をなくしている。ただ、配線に必要なスペースは、イメージサイズや画素数、画素サイズにかかわらず一定量が必要になるため、画素サイズが大きいものほどその効果は少ない。画素サイズが小さいものほど効果的ということになる。

さて、性能的にも機能的にも差がなければ、イメージサイズは小さいほうが小型化できるだけでなく、コストも安くすむ分有利になる。特に業務用カメラでは3板式のカメラが主流なため、サイズが2分の1になればプリズムの体積が4分の1なるので、イメージサイズの小型化は現在のビデオカメラのトレンドはこうした方向に向いているといえよう。また、イメージサイズが小さくなれば、レンズも小型化できるため、カメラの小型軽量化や消費電力の面でもメリットがある。

イメージサイズの小型化は、あらゆる面でメリットがあるのだが、制作の面では必ずしも歓迎できないこともある。イメージサイズが小さくなればなるほど、被写界深度が深くなりピントの合う範囲が広くなるからだ。民生機や報道用の取材カメラなどでは有利だろうが、ドラマなどの制作には不利になることもある。

これは、一時期流行したDOFや現在ではRED ONEが注目される要素になっているし、今に始まったことでもない。2/3インチの撮像管時代もスタジオなど制作用のカメラは1インチクォーター(11/4)が使われてきたのは、プランビコンかサチコンかといった素子の違いだけでなく、サイズの違いもあったのである。カメラを選択する場合はこうした制作面で重要な絵作りという側面も考慮したい。

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