DSMC/DSLRの素材持ち込みが増えたことで、ポストプロダクションの世界でも変化が起こっている。カラーグレーディング/カラーコレクションという分野が、より判りやすく身近になってきた。

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株式会社サウンド・シティ(東京都港区麻布台)ではこの2月より、カラーグレーディングシステムのDa Vinci Resolve(Black Magic Design)を導入した。その導入効果もあってか、RED ONE撮影のカラーグレーディング作業が増えているという。

「Da Vinci Resolveの導入効果もあり、ここに来てカラーグレーディングの仕事が増えました。まだ100%のお客様がカラーグレーディングについて、どれだけ作品に対して意味があるのかということを判って頂けているわけではありませんが、特に以前フィルムのカラーコレクションを経験している方は、カラーグレーディングすれば独自のルックを得られるし、作品全体の質も向上するということを理解されている方は確かに増えました。特にRED ONEが出てきてからは、そうした部分の認知度は上がったと思います」
(技術部 次長 井口信吾氏)

これまでカラーグレーディングに入るのはCMが中心だったが、ここに来てミュージックビデオなどのPVの需要も増えてきたという。特に撮影をEOS 5D Mark IIや7Dで撮影し、編集〜最終完パケまでもApple Final Cut Proで行うことで、ここでは予算を圧縮しておき、カラーグレーディング作業にお金をかけることで、作品の質の向上を求めるというクライアントも増えてきた。

「テレシネの時と同じでカラーグレーディングの部屋の場合、そこに立ち会われるのはほとんど撮影部の方です。彼らとしては、素の状態での素材は我々の狙いではなく、そこから後処理で追い込んで「こういう風にしたかった」という狙いがあるわけですね。そこでDa Vinci Resolveが大きな役目を果たしてくれるのです。しかもREDのRAWデータをダイレクトに触っているのにも関わらず、しかもタイムラグなくリアルタイムに動くというところに一番魅力を感じて頂いています。実際に作業上であまりストレスを感じない上に、撮影後にも感度や色温度、ガンマカーブを自由に変えたりすることができるのは非常に喜ばれており、まさに第二の撮影現場となっています」
(DIグレーディング チーフカラリスト 杉山裕信氏)
「カラーグレーディングでも、素材の持っているルックを180°変えるということは出来ません。やはりDSLR機などが持っている元々の素材で良いルックが得られるようになったことは大きいですね」
(井口氏)
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左から、井口信吾氏、杉山裕信氏、堀 岳人氏

テープレス/ファイルベースワークフローの必然性と問題

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DSMC/DSLRが撮影機材として台頭してきたことがポストプロダクションに与えた影響として一番大きいのは、否応無しにテープレスワークフローを余儀なくされたことだ。そこにファイルベースの知識も含めて、DI(デジタル・インターミディエイト)までの技術フローを理解している必要がある。データ/ファイルベースの知識が必須になってきているところで、人材としてもそういう知識を有した、デジタル・テクノロジスト的な人員が必要だ。

「ここ半年でテープレスワークフローがかなり浸透してきましたね。最近、CMでも完全テープレスワークフローで進めた作業が出てきました。制作スタッフの方も帰るときにテープの袋を持っていないことにかなり違和感があったようですが(笑)、テープレスワークフローがどれだけ便利なのか、ということは我々も含めて良い経験が出来ました。今後はバックアップ/アーカイブの問題は、これからクリアにしていかなければならないところです。データの出し入れが頻繁にある現場ですが、現在のバックアップ/アーカイブメディアは、HDDかLTO4です。一般に購入出来るLTO4でも作業効率的には、現状何ら問題ありません」
(エディター 堀 岳人氏)

また周辺の制作関係者にもデータワークフローなどの知識理解は必要になってくる。

「EOS 5D Mark IIにしても単に撮影費が安いだけで使っているだけではなく、ちゃんと狙いを考えて使用されている方も増えています。又、ポスプロでのカラーグレーディング自体をかなり勉強されているVEさんも多くいらっしゃいます。後半のポスプロ作業を理解していただくことで、結果的に撮影現場での作業効率をあげることが出来、作品のクオリティアップにつながるのではないでしょうか」
(井口氏)

ポストプロダクションとしては、新たなDSMC/DSLRなどが出てくることで様々なフローに対応しなければならないことは必然だが、また新たな技術にチャレンジすることも使命だという意識もあり、そこをいかにしてシームレスに作業を行えるかというのが、ポストプロダクションの永遠のテーマでもある。知識の間口を拡げておく必要は益々必然となっているようだ。

「逆にファイルベースになったことで、どこをどう処理すれば一番効率的なのかがハッキリと見えてきたところはあります。ファイルベースの欠点でもある最終形の画が、途中では見えにくいという部分では、我々ポストプロダクションが唯一完成形を見ることができる立場でもあるので、全体の制作進行の中で、我々が最終仕上げから想定して、より良いカメラ機材なども推薦出来るような仕組みが出来ると、更なる効率化と高品質がご提供出来るようになると考えています」
(井口氏)
協力:
株式会社サウンド・シティ
〒106-0041 東京都港区麻布台2-2-1

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