[ファイルベース新時代]Vol.00 ファイルベースへの道のり
2011-03-10 掲載
ファイルベースの進化は、VTRの進歩とともに現在に繋がってくる。1950年代に開発されたVTRを起点にその流れを簡単にさかのぼってみよう。そこから見えてくるものは明るい未来なのだろうか。それとも悪夢なのだろうか。いずれにしてもファイルベースへの道のりを歩む上で避けては通れない道のりなのだ。
VTR時代の編集の歩みについて紐解く
テレビ放送が開始された初期にはビデオの記録にはフィルムが使われていたが、時差放送を行う目的でアンペックスが2インチ幅の磁気テープを使ったビデオテープレコーダーを開発。編集が必要な場合は映画のフィルム編集と同じようにテープを切ってつなげるという今にして思うと原始的な方法が取られていた。もっとも幅5cmのテープが毎秒38cmで走行するため、接続部分の強度の問題やテープの価格が高価ということもあり、この方法で編集されることはほとんどなかったようである。
その後、VTRからのビデオ信号をVTRで記録するいわゆる電子編集が開発され、従来の切った貼ったの編集作業から電子的な編集へと移行していく。対応する編集機が開発され、従来の編集と区別するためEED(ELECTRONIC EDITING)といわれた。
編集を行うためには、画面のコマごとに絶対番地が必要となるが、そのためにタイムコードが導入され、その後1インチVTRが開発されてから本格的な編集が行われるようになる。ちなみに広く普及した1インチVTRはタイプCという規格であり、BやDという規格の1インチVTRも発売されたが、主にCMバンクなどに導入されたに過ぎなかった。1インチタイプCのVTRが編集に採用されたのは、静止画像や正逆再生時に画像の確認ができるということが大きな理由だったようである。
さて、1インチVTRとともに編集作業を行うポストプロダクションが数多く設立され、単なるカット編集だけでなく、スイッチャーを使ったABロール編集や特殊効果装置を使ったデジタルビデオエフェクト(DVE)などが行える高価な機材が導入された。いわゆるリニア編集の最盛期である。
VTRを使ったこうした編集では、ワイプなどで2つの画面を切り替えるだけでも、2台の再生VTRと録画用VTRが最低限必要で、計3台のVTRは同期している必要がある。1つの画面に4つの動画を合成する場合は再生VTRが4台必要になるわけだ。また、1つのテープの映像同士をワイプなどで切り替え編集することはできないので、必要な部分は別のテープなどにコピーする必要がある。いわゆるやりくりといわれた作業が必要になるのだが、ここでデジタルディスクレコーダーが登場し、飛躍的に作業性が向上した。
デジタルVTRも開発され、ポストプロダクションは一気にフルデジタルとなるもののワークフロー自体はテープのままであり、アナログとそれほど差はなかった。記録媒体はアナログ、デジタルともにテープが主流だったが、パソコンで動画が扱えるようになり、オフラインやマルチメディアへと発展していく一方、ハイエンドの編集や合成を伴う作業に向けたシステムも開発され、現在のノンリニア編集システムへと繋がっていく。
SDでは放送電波に乗せるビデオフォーマットは国による違いはあるものの国内では1つしかなく、編集や撮影もこれを基準に考えていればよかったので、VTRのフォーマットが増えようがアナログがデジタルになろうがシステムもワークフローも劇的に変わるようなことはなかったといえる。さらに撮影も局納品もテープであったことからその中間の作業だけをノンリニアにするにはそれなりの必然性が必要だったということもあるだろう。
信号形式の乱立の元凶はなんなのか。

1インチVTRは編集や局の送出などに使われていたが、当時は取材用としてはUマチックが使われていた。1インチVTRもBVH-500というポータブルタイプのものがあったが20kgほどの重量があり、ニュースなどの取材にはほとんど使われることはなかった。
ちなみに2インチVTRもVR-3000というポータブルタイプがあったが、1インチVTRより大きく重くとても1人で担げるようなシロモノではなかったし、高価かつ記録時間も10分しかなかったので、国内ではほとんど使われることはなかった。
国内でのニュース取材は16mmのフィルムカメラが長い間使われることになるが、ビデオもVTRとカメラが一体になったものが開発された。パナソニックがVHSカセットを使ったMビジョンが放送局の取材用として発表される。ベータカムはその1ヶ月後の1981年4月の発表だが、いずれもそれまでのVTRとは異なり、輝度信号と色信号を独立したヘッドで記録するコンポーネント記録方式が採用されていた。ここで、VTRの入出力にコンポーネントが登場することになる。
1インチVTRと2インチVTRは、コンポジットのビデオ信号をFM変調して記録しており、入出力コンポジット。Uマチックも輝度信号はFM記録で、周波数の高い色信号のみ低域変換して記録していた。特殊ではあるがUマチックVTRにはUダブ端子というものが装備されていた機種もあり、これは周波数変換された色信号と輝度信号を独立して入出力できるようにすることで、ダビング時の信号劣化を少なくしようというものだが、色信号の周波数がUマチックの低域色変換周波数である688.374kHzだったので、Uマチック同士でしか使えなかった。
デジタルVTRは、D1、D2、D3などが開発され、入出力もコンポーネントとコンポジットがあったが、同軸ケーブル1本で接続できるSDIに最終的には落ち着いたといえる。このようにビデオの入出力はVTRのフォーマットに依存したところが大きいが、小型ビデオカメラでは、HDMIやアナログコンポーネント(D端子)が装備された物もあり、レコーダーもこうした入出力に対応した機種もある。
ビデオカメラに装備されたHDMIやアナログコンポーネントは、民生機器のモニターに接続するために装備されたもので、違法コピー排除の観点から民生用のハイビジョン機器からアナログコンポーネント端子が廃止されてしまったため、現在ではHDMIが主流となっている。
業務用では、SDのカメラでもコンポーネントに対応した機種もあるがこれは、クロマキー合成を行うため古くから装備されていたという歴史的な流れと業務用は基本的に著作権などが絡まないためといえる。
ファイルベースの時代になるとVTRという足かせがなくなり、こうした先人の苦労は解消されるのであろうか。実はあまり変わっていない部分もある。例えば、撮影のフォーマットと編集のフォーマットはVTRの時代から別だったし、ビデオの入出力なども基本的にはVTR時代のものを引き継いでいる。このあたりを基礎知識としてコーデックやワークフローについて引き続き考えていこうと思う。
[ Category : SPECIAL ]
[ DATE : 2011-03-10 ]
[ TAG : ファイルベース新時代 ]
この記事に関連する記事一覧
|
|
[ファイルベース新時代]Vol.04 役に立つファイルベースの基礎知識ファイルフォーマットとは? 現在ファイルベースワークフローで利用されているファイルフォーマットやコーデックは多岐にわたっているが、そのほとんどがMPEG由来のものだ。MPEGも1、 .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース新時代]Vol.03 ファイルベースはワークフローで乗り切る最適なフォーマットとコーデックを組み合せを考える アナログではコピーによる劣化があり、編集工程の工夫やコピーによる劣化の少ないVTRや機材を選択していた。デジタルでは原則コピーによ .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース新時代]Vol.02 撮影コーデックと編集コーデックのあやしい関係デジタル化がもたらしたもの ビデオ機器のデジタル化は、VTRのフォーマットや放送方式に依存した様々なコーデックが開発される一方、ノンリニア編集システムは、アナログビデオ信号をキャ .... 続きを読む |
|
|
[ファイルベース新時代]Vol.01 百花繚乱コーデックの世界を読み解くアナログからデジタル、SDからHD、VTRからファイルベースへテクノロジーの進化やメーカー各社の思惑、さらにはビデオや映画、ITなど業界間のボーダーレス化とグローバル化により映像 .... 続きを読む |
USTREAM生放送番組
|
PRONEWS Lounge テーマに沿ったゲストを招き、対談・ディスカッションなどを特設会場より生放送。過去放送分も視聴できます。 |
特集記事
|
ファイルベース新時代2012 ファイルベースの普及と共に、様々なフォーマットやコーデックが登場。制作現場におけるデファクトスタンダートとは何かを考える。 |
|
|
CP+2012レポート カメラと写真映像の情報発信イベント「CP+(シーピープラス)2012」を映像業界視点でレポート。 |
|
|
CES 2012レポート 世界最大級の家電見本市CES2012の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。 |
|
|
PRONEWS AWARD 2011 2011年を振り返りつつ、2012年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。 |
|
|
Inter BEE 2011スペシャルレポート 千葉幕張メッセにて開催されるInterBEE2011。PRONEWSでは今年もInterBEEのオフィシャルメディアパートナーとして、様々なコンテンツをお届け! |
|
|
Inter BEE 2011の歩き方 最小限の力で最大の効果が得られるInterBEE2011のおすすめの歩き方を、目的に合わせたコースごとに紹介する。 |
|
|
CEATEC JAPAN 2011 10月4日(火)から10月8日(土)まで幕張メッセにて開催される最先端IT・エレクトロニクス総合展 "CEATEC JAPAN 2011"をプロの視点からレポートする。 |
|
|
Movie Maker's GIG in Europe オランダ・アムステルダムで開催されたIBC2011レポートを中心に、新たに湧き起こって来た映像技術における次世代の新テーマなど、現場から伝わって来たその温度感をレポートする。 |
|
|
PRONEWS課題図書 2011年の夏の終わりに、あらためて「映像」に関わるものとして「映像」について考え、新解釈を探る事にした。 |
|
|
SIGGRAPH2011 CGの祭典「SIGGRAPH」が8月7日から11日の5日間、カナダ・バンクーバーで開催された。受賞作品を映像と共に紹介する。 |
|
|
Stereoscopic 3D 第4章 1年ぶりの3D特集。この間に3Dを取り巻く状況はどのように変化しただろうか?押さえておくべき3Dの基礎を考えつつ、2011年の3Dを再考してみる。 |
|
|
Movie Maker's GIG in Hollywood セッション(GIG)感覚で映画が創れる時代の潮流をハリウッドではどう捉えているのか?CineGearExpoの情報もお伝えしつつ、次世代のプロ映像制作者像を追い求める。 |
|
|
Master Mind Camera 2011 今必要な理想のカメラを追求しつつ、カメラを使う人と機能から紐解いていく。 |
|
|
NAB2011 スペシャルレポート 4月11日から米ラスベガスにて開催された世界最大の放送機器展「2011 NAB Show(NAB2011)」。毎年恒例のレポート特集を現地よりお届け。 |
|
|
USTREAM最終案内+ 奇しくも、今回の震災でのライブメディアが活躍する事になった。3.11以後USTREAMをはじめとするライブメディア/ソーシャルメディアのあり方を今一度取り上げてみたい。 |
|
ファイルベース新時代 ファイルベースの進化は、VTRの進歩とともに現在に繋がってくる。1950年代に開発されたVTRを起点にその流れを簡単にさかのぼってみよう。 |
|
|
Into the Lens 『CP+』における取材を通じて、2011年のプロ映像界におけるレンズの世界最新事情や表現者たちの最新機材での挑戦を追う。 |
|
|
CES 2011レポート 世界最大級の家電見本市CES2011の現場から、PRONEWSならではの切り口でレポートをお届け。 |
|
|
PRONEWS AWARD 2010 2010年を振り返りつつ、2011年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。 |
|
|
Inter BEE 2010スペシャルレポート 千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2010のレポート記事や動画を掲載。 |
|
|
Inter BEE 2010の歩き方 目的に合わせたInterBEE2010の歩き方を紹介する。 |
|
|
映像品質検証 -VQC- デジタル映像全盛の今、問われる映像品質検証の現状とは? |
|
|
DSMC/DSLR 2010 #2 現場感覚におけるDSLRの現状の捉えられ方を取材してみた。 |
|
|
Stereoscopic 3D 第3章 ステレオスコピック3Dの具体的な制作方法を考えていく。 |
|
|
Ustream最終案内 Ustreamの世界の可能性を実際に現場で活躍する人々から探ってみた。 |
|
|
Digital Cinematography 2010 Cine Gear EXPOの様子などから、これからのハリウッド映像制作の方向性を紹介する。 |
|
|
Stereoscopic 3D 第2章 関心が高まっているステレオスコピック3Dコンテンツの制作について整理していく。 |
|
|
DSMC・DSLR 2010 CP+のレポートを中心に、2010年のDSMC/DSLRの動向について考察していく。 |
|
|
ファイルベース収録カメラ最新案内 ファイルベース収録カメラを選択するための基準や基礎知識等を、レビューを交えて考察する。 |
|
|
Transcode ファイルベース・ワークフローの普及と共によく目にするようになったトランスコードについて整理する。 |
|
|
映像新時代2010 2010年の映像制作の潮流を様々な方面から予想していく。 |
|
|
稲田出のトレンド100選 InterBEE2009で見た2010年注目100アイテムを紹介。 |
|
|
PRONEWS AWARD 2009 2009年を振り返りつつ、2010年へ向けて各分野の商品・サービスを絞り込み総括する。 |
|
|
Inter BEE 2009スペシャルレポート 千葉幕張メッセにて開催されたInterBEE2009のレポート記事やブース動画を掲載。 |
|
|
Inter BEE 2009の歩き方 目的に合わせたInterBEE2009の歩き方を紹介する。 |
|
|
最新映像制作ワークフロー VFX 2009 最新映像制作ワークフローの中から、制作効率を改善していくヒントを探す。 |
|
|
オンボードライト特集 Light House 新時代を予感させるLEDを中心にオンボードライトを解剖する。 |
|
|
立体視映像特集 Stereoscopic 3D 再び脚光を浴び始めているステレオスコピック3D制作に焦点を当てる。 |
|
|
REDワークフロー特集 RED flow Now RED ONEの最新ワークフローを考える。 |
|
|
4Kデジタルシネマ特集 4K Ready! RED ONEの登場で一気に注目されつつある4K映像とは? | |
|
デジタルサイネージ特集デジタルサイネージ2009 急速な広がりを見せるサイネージメディアを紹介する。 |
|
|
ワークフローの鍵を握るMXF MXFファイルを活用する現場を取材し、制作ワークフロー全体に広がるMXFを紹介する。 |
|
|
フルデジタル制作移行、その課題と展望 フルデジタル制作環境に向けて乗り越えなければならない課題と、その先の可能性を紹介する。 |
|
|
2008年総括:これからの映像業界 2008年の売れ筋を見ながら、人気機材の動向を振り返ってみる。 |
|
|
次世代収録環境へのアプローチ 2008年のカメラ環境を踏まえ、次世代環境に必要なものを考える。 |
展示会レポート
- CP+2012
- CES 2012
- Inter BEE 2011
- CEATEC JAPAN 2011
- IBC2011
- SIGGRAPH2011
- デジタルサイネージジャパン2011
- IMC TOKYO 2011
- Cine Gear EXPO 2011
- NAB2011
- CES 2011
- Inter BEE 2010
- CEATEC JAPAN 2010
- IBC2010
- CEDEC2010
- SIGGRAPH2010
- ケーブルテレビショー2010
- IMC TOKYO 2010
- デジタルサイネージジャパン2010
- Cine Gear EXPO 2010
- NAB2010
- Inter BEE 2009
- CEATEC JAPAN 2009
- CEDEC2009
- SIGGRAPH2009
- ケーブルテレビショー2009
- デジタルサイネージジャパン2009
- IMC TOKYO 2009
- Cine Gear EXPO 2009
- NAB2009
- Inter BEE 2008
- CEATEC JAPAN 2008
- SIGGRAPH2008
- ケーブルテレビショー2008
- IMC TOKYO 2008
- NAB2008
- PIE2008
- Inter BEE 2007
- CEATEC JAPAN 2007
- BroadcastAsia2007
- ケーブルテレビショー2007
- NAB 2007
- Inter BEE 2006
- CEATEC JAPAN 2006
- SIGGRAPH2006
- NAB2006
