ナブブラリVol.02 小寺信良編

にぎわう会場、予想以上の人の多さに期待

石川幸宏(デジタルシネマ&DSLR関連担当)
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2011 NABShowでは、主にデジタルシネマ関係と、HDSLR関係の製品を主軸にNAB自体も俯瞰で見えるような視点で見ていこうと思う。今回会場に入ってまず思った事はとにかく初日の朝一番(9時台)にしては人が多いということ。そして、このところのトップバナー企業(展示会会場外壁に大きい広告を出している会社)が、やはり製品的にも魅力ある面白いものを出しているという点だ。彼らが特徴的なのは現行製品に対するユーザーの意見をほぼ1年以内に何かしらの形で反映し、たとえ実発売は先だとしてもその要望を捉えた次期商品を発表して、ユーザーの心をしっかりと掴んでいることだろう。

また発表からさらにリサーチしつつ実製品発売に向かうというのも、最近では良くある手法だと言える。これらの製品群が持つようにコンパクトで取り回しが良く、さらに安価で入手もしやすいという傾向も強まっている。そしてさらに特徴的な性能ということにも着目したい。

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ブラックマジックデザインからは今回多くの新製品が登場してきた。どれも魅力ある製品だが、イチオシなのはカラーグレイディング/カラーコレクションソフトウエア『DaVinci Resolve』の体験版として機能を制限した『DaVinci Resolve Lite』の登場だ。会場にも表示や展示なども無く、あくまでカラコレを普及させる体験版だが機能が尋常ではない。あくまでカラーコレクションの普及を図るためのものだとされる。

同時に発表された最新バージョン8をベースにして開発されたとのこと。プロジェクトはSDとHDに限定されるが、機能もノイズリダクションや3Dなど4つの項目以外には統べて同じだ。もともとこの企業はソフトのバージョンアップでお金を取ったことはないが、この体験版ももちろん無償ダウンロードすれば使うことが出来る。

1日目を終わって感じたのは、今回至る所で見かけたGoProを始めとする、ホビー性というか、使い手の好み/コンテンツの嗜好性を刺激するような製品が受け入れられて来ている。

ドヤ顔に納得!ブラックマジックが繰り出す商品群

小寺信良(ポスプロ関連担当)

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1Uのスイッチャーを発表するドヤ顔のCEO、グラント・ペティ氏

会期初日となる今日は、午前中にBlack Magic Designのプレスカンファレンスが開催された。今回のNABで出展された新製品があまりにも大量にあった関係で、午前中がこの1社の取材でつぶれるという結果になってしまった。しかし収穫は多い。特にポストプロダクションを含む後処理をやっているプロは、今年リリースされる製品群は是非注目していただきたい。

昨年Black MagicはEchoLabというスイッチャーメーカーを買収した。その成果として、プロダクションスイッチャー3製品がBlack Magic名義でリリースされた。特徴的なのは、どれも本体が1U~3Uサイズの超薄型にもかかわらず、その中にシグナルプロセッシング機能まで全部はいっているという凝縮具合だ。価格を抑えるためにハードウェアのコントロールパネルを別売とし、スイッチャー本体の価格を大幅に抑えた。

まず低価格スイッチャーとして、HDMIとHD-SDI混在で6系統がスイッチングできる「ATEM Television Studio」。H.264のハードウェアエンコーダまで内蔵して、価格はなんと995ドル。約10万円である。

スイッチャーとしての機能はそれほど多くはないが、HDMIがスイッチングできるというのは、今まさに求められているソリューションである。H.264のエンコーダまで付いて、USB端子からストリームが出せるということで、現在Ustreamerの間で「神機」の誉れ高いRoland VR-5の立ち位置を脅かす存在となり得る。

もっともVR-5はオーディオミキサーまでがハードウェアとして一体になっているので、そのあたりで規模や操作性で棲み分けができるかもしれないが、価格がなんといってもVR-5の1/4である。まさに価格破壊が起こっている。実際のコントロールはEtherケーブルで接続したMacもしくはWindowsから行なう。ハードウェアのコントロールパネルを省略することで、価格を大幅に抑えることができたというわけだ。

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ATEM 1 M/E Production Swicherの本体

もう一つATEM 1 M/E Production Swicherは、本体2Uサイズで、HD-SDI、HDMI、アナログコンポーネントの合計8入力スイッチャー。4キーヤー、2DSKを備え、DVE機能も内蔵する。こちらはH.264エンコーダは搭載しない、純粋なスイッチャーである。

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コンパネだけで本体の2倍の価格

こちらもハードウェアのコントロールパネルを省略し、価格は2495ドル。ハードウェアのコントロールパネルは別売で、価格は4995ドルとなっている。コンパネが本体の2倍するということで、最近はいかにシグナルプロセッシングが低価格にできるかということが逆に証明された格好だ。

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本体たったこれだけでHDの2M/Eスイッチャーを発表してドヤ顔

これのさらに上位モデルとして、ATEM 2 M/E Production Swicherも発表された。こちらも基本仕様は1 M/Eモデルと同じで、本体3Uサイズの16入力。

出力はHD-SDI、HDMI、アナログコンポーネント、USB3.0のほか、AUX出力を6系統備える。8月に発売予定で、価格は4995ドル。日本円にすれば約50万円程度である。1年ぐらいがんばってお金を貯めれば、HDの2MEスイッチャーが買える時代となったわけで、かつてSDフルデジタルの部屋でオンライン編集をやっていた筆者からすれば、なんかもういろいろおかしい。

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2M/E用のコンパネ。ちょっと設計にクセがある作りが逆に新鮮

2 M/E用のコントロールパネルは14,995ドルと、こちらは結構なお値段である。DaVinciと同じように、コントローラが付くと高いよー、という新しい価値観が生まれつつあるのかもしれない。

はじめての映像系イベントNABに参加して…

岡英史(ファイルベース関連担当)

昨日は何もかもが初めての事ばかりで、自分の立ち位置すら解らない状態。最もブース自体に入れるわけではないのでカンファレンスを二つこなして、簡単に動画を繋ぐだけだったのがもの凄く時間が掛かった。第一の理由はとにかくインフラが悪いこと。日本からレンタルの海外仕様のWiFiを借りていったがそれでも全く速度が出ない。いつもはHD画質でUPする動画も100MB以下に納めるべく四苦八苦したおかげで本日は寝不足。

とは言え本当の意味での初日は良い刺激になった。今回のFantastic4としてのミッションは「ファイルベースカメラ」コレを中心に予定では取材を組み立てていたが…。流石に8万人規模の集まるイベント会場で早々予定通りに出来るわけが無く大手映像メーカーは全て軽く見る程度で終了してしまった。

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そんな中で気になったのはJVCの3Dカメラ。説明員がいたわけでは無いので詳細は解らないが、おそらく民生機であるTG-1に上部ハンドルとキャノン入力が付いた物で中々格好いい。本当はJVCの秘蔵であるファルコンブリッドを使用した4Kカメラも期待していたのだが…。

次に目を引いたのがCanonブースに置いてあったPLレンズ。性能価格は未知数だがF3や他の大判センサーカメラに合わせるPLレンズとして確実に選択肢の一部になるのでは?その他のカメラメーカー強大すぎるブースでもあるのは明日以降じっくりとと言うのが本音。その代わり今日は日本から数少ない精鋭で出品している企業に出向いてみた。

ピコハウスは、全作のイージー3Dを更に強化アップをされており、かなり細かい部分まで手が入りその完成度は高まっているがやはり簡単速くのモットーも生かされていた。

プロ機材ドットコムは、グローバルでの呼称はANETなので最初ブースを密卦難かったがいつもの見慣れた容姿の接客担当者を見つけブースに寄るが相変わらずの活気で、特に在るLEDライトはコストパフォーマンスは最高だ。

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その他長屋系(小さいハンドメイド系のグループが集まった場所)とにかく痒い所に手が届く物が多いが、NABだとそのスケールもでかい!その中でリスペクトしたい物はRCカーをベースにしたカメラ移動装置。RCの中でも悪路を専門に走る為に造られた物なので、そのベースにカメラをマウントすれば当に(動物目線)が簡単に得られるはずだ。しかし何でも大きい作りの国だが中継車の大きさには驚きを通り過ぎてあきれかえってしまった位。当にビックコンボイだ。

と言うことでまだまだ一杯在るが1日目言うことで今日はこのへんで

漢は、なぜガジェットが大好きなのか?

猪蔵(モンドガジェット関連担当)

展示会1日目である。ようやく小粒でもぴりりと辛いガジェットを掘り起こす時がやってきた。しかし大きなメーカ様との予定されているスケジュールをこなしているとあれ!っという間に1日目が終了。 大きな主要メーカーを回りつつも、こぼれた時間で会場の狭いブースが集合するゾーンに足を運ぶ事に余念がない。やはり足を使って隈無くお宝を掘り出して行かなければならない。それはなぜか?

「長屋にお宝あり!」小さなブースが密集したところにNABの神が宿っているのだ。生き馬の目を抜いてやろうと一攫千金を目指して出展している鼻息の荒い輩も少なくない。自分の自信作を熱く売ろうとする情熱に人は絆される訳である(ちょっとうそ)。その出会いを求めて足を向けるのかもしれない。そのToo Muchな感じは、そのゾーンに足を踏み入れば、自ずと違和感を覚えるはずだ。もちろん良い意味で。ということでこの展示会期間中は張り切っておもろい物を掘り起こして行きたい。

サンダーボルトで一撃だ!

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Thunderboltを実装しているAJA社プロトタイプPHASER

何が気になるってThunderboltである。Thunderboltは、Intel社とApple社が中心になって開発した新インターフェイスである。注目しているのは、機能以上にApple社が開発発表したところポイントだ。かつてのiMac登場時は、フロッピーディスクを切り捨て、それ以降日の目を見なくったことである。

そうAppleは、後ろを振り向かないのだ。その姿勢に共感する。おそらくThunderbolt登場以前と以後で大きく様変わりするのだ。その兆候は会場にも現れている。AJA、Blackmagic Designのプレス発表ではThunderbolt対応の製品が紹介された。このThunderbolt並列接続に加えて、直列接続のデイジーチェーンにも対応などThunderboltを扱ったガジェットが数多く出てきそうで楽しみなのである。夢が膨らむばかりである。

初日で出会ってしまった最高のガジェット!

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デンマーク生まれのV-bagである。もともと緊急医療でギブスを組成させる技術から来ているという。柔らかい素材が、真空にする事によってカチカチに固まるという仕組みになっている。もちろん空気を入れればまた柔らかい素材に。この技術を映像業界にシフトさせたのが、この商品である。機材を守るため?もちろんそれもある。一番のおすすめは、足場が不安定な部分や三脚など設置不可能な場所でカメラ位置や足場確保に役立つ優れモノである。デモでは、カチカチにしたV-bagを板にしてその上にカメラを固定させるためのV-bagを設置しポジションを決める。応用すれば、様々な撮影シーンで役に立ちそうだ。