3D映像制作ワークフローセミナーが開催される

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3D映像制作ワークフローセミナー 初級編 / 講師:映像作家 坪井昭久氏

7月22日に行われた映像作家の坪井昭久氏による「3D映像制作ワークフローセミナー 初級編」(主催:システムファイブ)では、ソニーの二眼式一体型のハンディタイプ3Dカムコーダー『HXR-NX3D1J』と、MPEG4 MVC 3Dファイルのネイティブ編集が可能なノンリニア編集ソフトVegas Proの最新バージョン10.0e(7月リリース)を使った、3D初心者向けの3D映像撮影の心得とその編集方法についての解説が行われた。

7月1日に発売された『HXR-NX3D1J』は、ソニーのAVCHD規格の業務用カメラ “NXCAM”シリーズのラインナップとして発表された3Dカムコーダーだが、コンパクトな筐体ながら民生用カメラとは異なるプロ仕様の面が多い。民生機版である『HDR-TD10』の1080/60iに加えて1080/50i、24p記録が可能で、内蔵メモリーも96GBでタイムコード記録もできる。

さらにリニアPCM音声記録に対応、カメラハンドルにもなるXLRマイクアダプターが装着されている。また左右連動したズーム機構や手ぶれ補正、3.5型の裸眼3D液晶パネルを装備、HDMI1.4aに対応したHDMI出力端子を装備し、フレーム・パッキング/サイド・バイ・サイドを任意選択可能など、業務用途にも充分最適化された仕様を持つカメラとして注目されている。

このカメラの最も特徴的な部分は収録フォーマットだろう。これは通常3Dで撮影した場合、カメラのデータは左右の各データが2ファイル存在するが、これを1クリップ1ファイルとして扱うMVC形式(Multiview Video Coding…AVC/H.264の拡張規格)として収録できること。これは複数の視点の映像をまとめて符号化し、各視点間の相関を利用するので圧縮効率が良いことなどがメリットだ。現行カメラ機種ではソニーの民生用3Dカムコーダー『HDR-TD10』と日本ビクターの『GS-TD1』、そして今後発売予定の業務用バージョンである『GY-HMZ1U』がこのMVC形式での収録可能なカメラとなっている。

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Vegas Pro 10.0eでStereoscopic 3Dを制作する

様々なファイル形式やオーディオ面に非常に高いパフォーマンスを発揮するNLEとして好評なWindowsベースの映像編集ソフトVegas Pro 10.0eは、いち早くこのMVCフォーマットに対応し、さらに3Dブルーレイディスク作成も可能な機能が追加された最新バージョン。GPU活用によりAVCHDレンダリングが高速化されるなど、主に3D編集機能を強化した製品へと仕上がっている。

3D実践撮影の重要性

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このセミナーの中では、実際に『HXR-NX3D1J』で撮影された素材を元に、このカメラの3D映像の特徴や、撮影のシチュエーションによって映像がどのように見えるかなどの検証が行われた。『HXR-NX3D1』は2眼レンズ間の基線長が31mmとなっているため、最短でも800mmまで接近しても破綻することなく3D映像を撮影できるので、比較的コンバージェンスポイントの感覚を見つけやすい設計になっている。

セミナー内容で興味深かったのは、坪井氏が撮影した手本となる3D映像とは別に、3D撮影に不慣れなスタッフが『HXR-NX3D1J』を使って、街の風景をそのまま3D撮影した映像を視聴し、単純にこれまでのビデオ的に撮影してしまうと、映像がどのように破綻してしまうのか?など、その領域を実際に視聴確認できたことだ。どこまで近づくと破綻するのか?どんな画なら効果的に3Dとして見えるのかなど、通常はあまり失敗例を多く観ることのないこうしたセミナーでは、こういう撮影の事例によって、3D撮影の経験値こそが3D制作上達の近道であることを改めて確認できた。

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これまでは、どんなカメラマンでもほとんど3D撮影の経験はなかった。加えて3Dリグなどの大仰なシステムを組むとなると大変な手間と苦労が必要になる。この『HXR-NX3D1J』が良いのは、単純に3D撮影というカルチャーが入手できることだ。このサイズ感と手頃な値段で3D撮影の基本となるコンバージェンスとステレオベースを直感的に確認する訓練ができる。

ステレオグラファーと呼ばれる3D撮影専門のカメラマンは、この2つのポイントを感覚的に身につける事が重要だが、これまでは機材のハードルが高いことから、その機会すらなかなか得る事が出来なかったのが現状。しかしこうした昨今の二眼式一体型3Dカメラの登場で、その経験値を今後多くのカメラマンが入手できることが、いままでとは大きく違ってきている。


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