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気鋭のCG映像が勢揃い Computer Animation Festival (SIGGRAPH2011)

夏といえば、SIGGRAPHの季節だ。SIGGRAPHはACM主催の世界最大のコンピュータグラフィックスの学会・展示会である。今年もそのSIGGRAPH 2011が、2011年8月7日から11日の5日間、カナダ、バンクーバーで始まった。展示会などは9日より開催された。SIGGRAPHは、毎年開催地を変えることで知られるが、今年はカナダのバンクーバーでの開催となった。例年米国で開催されるSIGGRAPHは、今年は初のカナダでの開催になる。公式発表はまだだが、約2万人の参加者を集め、セッション数・参加者数とも充実した内容だ。カナダはAlias MayaやSide Effects Houdiniなど主要CGソフトの発祥の地であり、政府の税制優遇策もあり、CG/VFX産業が大変盛んである。ある意味VFXの都市ともいえるカナダで開催される事が印象的だ。今年も現地からレポートをお送りする。

SIGGRAPHはコンピュータグラフィックスの学会であったが、近年では、CG(コンピュータグラフィックス)技術のみならず、CGを活用した映像作品や、インタラクティブ技術も充実している。注目されるのは、ARをはじめとするインタラクティブ技術だ。新興技術を紹介するE-Tech展示では日本勢が活躍している。アート作品、製品の展示会も充実している。映像作品はComputer Animation Festivalの枠組みで、数多くの応募作品と良質の作品が会期中に上映され、参加者を魅了する。

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今年は良質の短編作品のシアター上映「Electronic Theater」、ゲームやWebグラフィックス等のリアルタイム映像デモ作品上映「Real-Time Live!」、テレビCMや映画の特殊効果を含め映像作品の上映「Festival Screenings」が行われた。また今年もProduction Sessionsと呼ばれる、映像制作プロダクションによる主に映画におけるCG/VFXメイキングの発表が行われた。今年の全体的な流行は、プロシージャル(アルゴリズムによって自動的に必要なデータを生成する)や、データドリブン(想像や理論ではなく、多くの実測データからアルゴリズムや法則を導きだす)アプローチだ。メイキングで取り上げられた主だった映像はCars2、Rio、カンフーパンダ2であった。CAF (Computer Animation Festival) の今年の受賞者作は以下のとおりだ。

BEST IN SHOW AWARD:最優秀賞

  • タイトル:The Fantastic Flying Books of Mr. Morris Lessmore
  • 制作:William Joyce and Brandon Oldenburg
  • 元Pixarの社員William Joyceが率いるMoonbot Studiosが制作した作品。映像のみならずiPadの絵本アプリとしても展開している。
  • http://morrislessmore.com/

JURY AWARD:審査員特別賞

  • タイトル:Paths of Hate
  • 制作:Damian Nenow
  • 2人の戦闘機パイロットが死闘を繰り広げるCGアニメーション作品。ダイナミックな飛行シーンが印象的な作品。
  • http://www.pathsofhate.com/

BEST STUDENT PROJECT PRIZE:学生奨励賞

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  • タイトル:Flamingo Pride
  • 制作:Tomer Eshed
  • フラミンゴが水辺に集まる事象をクラブでのDJイベントにもじった映像。今風の風刺のきいた作品。何百羽という群衆シミュレーションが圧巻である。Tomer Eshed氏は数年前に “Our wonderful nature” という作品で受賞している。

Our wonderful nature

上記3つの作品に限らず、どの映像作品も映像表現に限らず物語そのものに広がりをもち、小気味よいジョークを効かせた作品が多かった。映像機材やツールも学生や個人でもハイエンドのものが安価に使えるような環境が整い、大規模プロダクション、小規模スタジオ、個人アーティスト、学生作品といった境い目は曖昧になってきている。カテゴリこそ分かれているが、純粋に作品の質で評価されるようになってきているのが近年の傾向である。

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また、毎晩数十本の短編作品を大規模シアターでスクリーニングするElectronic Theaterの最後の作品としてDisney/Pixarの新作短編、La Lunaが公開された。その柔らかで暖かみのある映像と、心優しいストーリー、最後の小気味よいオチがあいまって、拍手喝采を浴びていた。良質の小説を読んだ後のような読後感のようなものが、La Lunaを見た後に得ることができた。La Lunaは今後公開されるPixar映画の前座や、iTunes Storeでの販売が予定されている。

(公式のものではありません)
[SIGGRAPH2011] Vol.02

WRITER PROFILE

安藤幸央

安藤幸央

無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPHをはじめ、 国内外の映像系イベントを独自の視点で紹介します。