Digital Cinema撮影最新トレンド

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カメラ周辺の状況は4月のNABとほぼ同じだが、やはり大きく目立ったのは、昨年発表されたキヤノンのCINEMA EOS SYSTEM「C300」の普及だ。NAB2012同様に、すでにCienGearExpo会場の随所でC300が見かけられ、会場での機材展示の個体数ではRED EPIC、ARRI ALEXAを追い抜く勢いだが、実際にはドキュメンタリー系の撮影で使用されていることが多いようで、米国ではレンタル使用よりも個人所有が上回っているという。

またTVドラマやフィーチャーフィルム(劇場映画)でもC300が使われ始めているようだが、B、Cカメとしての使用が主流だそうで、こちらでは相変わらずARRI ALEXAとRED EPICの人気は高い。ただDSLRムービーの人気も依然根強いのだが、ここにきてCanon Logを含むワイドダイナミックレンジの魅力などC300のポテンシャルが、やはり映画制作者の心を捉えているのではないだろうかと思われる。

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またNABで登場したC500も会場に一部展示。こちらは開発途上だが、C500に接続されるcodex、アストロデザイン、計測技術研究所、S.two、convergent design、そしてAJAなどの各レコーダーメーカーも一斉に出展しており、2日目のパラマウントシアターで行われたキヤノンのイベントでは、4Kデモ作品の上映が行われ、映画制作者の期待値も高そうだ。

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さらにHS=ハイスピードカメラの世界でも日本から新製品がお目見えした。CineGearExpo初出展となる老舗の放送機器専門メーカー朋栄(FOR-A)は、NAB2012後に発表した4Kフル解像度の高速度撮影カメラ『FT-ONE』を映画撮影用ハイスピードカメラとして初展示。フル4K(4096×2160)解像度で秒間1000コマ、最大8.5秒の高速度撮影が可能で、RAWデータとして本体内収録可能。もともと産業用として高速度カメラを製造していた同社だが、「FT-ONE」は初の映画コンテンツ向けに本格的に商品開発をしていく第一弾の製品。

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一昨年に発表され、ジェイムズ・キャメロン監督も導入実績のあるHDサイズの小型ハイスピードカメラ「VFC-7000」のレスポンスも良かったようで、今後ハイスピードカメラ分野で映画業界への進出を目指しているとのこと。今回のCineGearExpoではこの「FT-ONE」だけの展示に絞って来たのも、その意気込みを感じさせる。23番ステージ内に設けられた小ぶりの4Kシアター(定員8名!)で、この「FT-ONE」のファーストカットとなる4Kのスローの実撮映像が上映されていた。また展示機材はまだモックアップだが、撮影ではPLマウントによりシュナイダーとフジノンのレンズを使用して撮影されているという。発売時期は未定だが年内に発売予定で開発が進められている。詳細なワークフロー等はまだ不明。なお「FT-ONE」とフル4Kの実撮映像は、近日国内でも見られる機会があるようなので紹介しておく。

FOR-A Post NAB 2012

(※招待制)

日時:6月28、29日 
場所:東京・恵比寿 株式会社 朋栄 本社
※4K上映はシアター形式で上映となるため、事前要予約
「FT-ONE」に興味があるの方は朋栄のホームページの お問い合わせ (その他) から『FT-ONE見学希望』と記載の上、申し込み可能。

モーションコントロールの進化形

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Kessler Craneからこの春に登場した、最大で256の動作制御が可能なマルチモーションコントロールシステム『Kessler FUSION』。 NAB2012でも話題となり近日リリースとなるこのシステムは、 従来の3軸構成(パン/チルト/ズーム)といったこれまでのカメラコントロールシステム、例えば同社のオラクルシステム等とは全く異なる、次世代のフルデジタル・カメラモーションコントロールシステムだ。パン/チルト/ズームといった基本の動きに加えてアイリス、シャッターなどのカメラ本体制御、ドリー、スライダー、クレーン、ターンテーブルなどの筐体駆動制御系コントロールなどほとんどのカメラ動作のコントロールが可能だという。

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またKessler crane社のスライダー、クレーン等であればどれでも互換性もあるようだ。注目すべきはFUSIONソフトウエアで、HTML5/Windows上で稼働し、ネットを介してKessler FUSIONアプリによってiPad,iPhoneでの制御可能、秀逸なUIでPCやモバイルでバイスでのコントロールが簡単であること、さらにAfter Effectsでアニメーションにキーフレームを打つ感覚と同じでコントロール可能なようだ。モーターは”フルデジタリーエンコーデッドモーター”と呼ばれるデジタルモーターを使用しているため軌道の再現性は正確で、さらにデイジーチェーン可能な設計で100台までのモーターを繋いでコントロールすることが可能だという。

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また”ブレイン”と呼ばれる基本の制御ユニットはポリカーボネート製の堅牢性も高い筐体にLEDバックライトでの信号表記もあり、屋外や夜間の使用などにも有効。入出力もSDスロット、USB、イーサネットの端子も付属し、さらにWiFiでコントロールも可能。またカメラ側に装着されるモーターにはカメラ制御のin/out ポートも用意されている。近日中にフェーズ2と呼ばれるここまでのフルバージョンがリリース予定で、今年12月までにはフェーズ3として、クレーンやフルサイズドリー、またアナログのジョイスティックコントローラーなども登場の予定だ。価格は基本キットとなる2台のモーター、ブレイン、FUSIONソフトウエアで6000ドル未満の予定。

txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.01 [Digital Cinema Bülow] Vol.03