新技術が生む新しい映像の可能性

昨年から設定された、映像制作プロフェッショナル以外でも使える、新たな映像クリエーション分野へ向けた製品と、ジャンルを超えたクリエイティブに影響を与えたニューテクノロジーを焦点を当てたプロスーマ・ネクストソリューション部門。プロスーマに関しては近年、映像制作が専業ではないがSNSなどと映像コンテンツを併用して、様々なPRやコミュニケーション、宣伝に利用をしている層が大きく拡大しており、ここではその層へ向けての製品分野に着目。こうした傾向は数年前からあったが、特にここ1年のプロスーマ層の定着とその進化には驚かされる。すでにこの層のユーザーの中には、プロフェッショナル以上に製品操作リテラシー(使いこなす能力)を持ち合わせている方も多く、プロとの区別がないほどのスキルを持つユーザーも多く存在する状況でもある。ジャンルや製品も多岐に渡るので、ここでは一応、プロ目線で製品選出を行ってはいるが、コンスーマ向け製品でも現在では充分にプロコンテンツ制作のニーズに耐えうる製品もあり、その中でもこれは!と思わせる製品にも着眼した。

一世を風靡したキヤノンのデジタル一眼カメラEOSシリーズは、動画の現場では依然としてその地位を保持しているが、今年初頭にようやく発売された名機 5D Mark IIの後継機種「EOS 5D Mark III」は、待望されていたにも関わらず、期待の動画機能もさほど大きな革新的技術が搭載されなかったため実際の反響も少なかった。年末になって5D Mark IIの実質的な後継機となる「EOS 6D」が発表。暗部撮影の強さと低価格もあってか、むしろこちらの反響の方が大きいようだが、EOS C100の登場によってメーカー側もムービーはCINEMA EOS SYSTEMへ比重が移行していることもあり、かつてのDSLRムービー=EOS MOVIEとしての威勢も薄らいだ印象だ。同じくDSLRムービーを旗頭にするニコンは、今年世界の映像系展示会に大きなブースを次々と構え始めており、D4、D800、そしてD600といった動画撮影を意識したDSLR機を次々と投入、映像業界への今後の進展へその動きが非常に興味深い。

小型カメラ分野ではGoProに続けとばかり、今年はJVCケンウッド、ソニーなど大手ビデオメーカーからもエクストリームカメラ(?)が発売されているが、秋口のGoPro3が4K対応(12fpsだが…)ということもあり、依然としてGoProの秀逸なマーケティング戦略が一枚上手という印象が強い。カメラ関係ではコンシューマ製品の中でも面白い製品が登場した年でもある。

カメラ以外では、市場ニーズとユーザーの意向を反映したコンバーターや特機などの周辺機器にも多くの新製品があった。スイッチャー類ではローランドからHDMI専用の小型スイッチャーV-40HDが登場するなど、市場からのニーズに応えた製品が多かった。

PRONEWS AWARD 2012 プロスーマ・ネクストソリューション部門ノミネート製品

  • Canon EOS 6D
  • Roland V-40HD
  • SONY HDR-CX720V/PJ760V(HXR-NX30J)
  • GoPro HERO 3
  • Apple Retina Display

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2012 プロスーマ・ネクストソリューション部門受賞製品発表

プロスーマ部門
ゴールド賞
HDR-CX720V/PJ760V(HXR-NX30J)

SONY

05_sony_HDR-CX720V.jpg

ソニーのハンディカムシリーズの最上位機種『HDR-CX720V』とプロジェクター機能付きの『HDR-PJ760V』はともに”空間光学手ぶれ補正”なるメカニズムを搭載。これはカメラ筐体内のレンズとセンサー部分をまるごとフローティングにして、丁度ステディカムのようなスタビライザーを内蔵したのと同じ状態で撮影でき、しかもテレ端時でも揺れが極端に抑えられる等、まさに目から鱗の優れワザ機能だ。通常のコンスーマ向けビデオカメラではあるが、何のオプション機材を付けずに手ぶれを極端に補正出来るという点では、プロスーマ層にとってはこの上ない製品である。その技術発想と手頃な価格も含めて本年度のゴールド賞に認定した。

プロスーマ部門
シルバー賞
Retina Display

Apple

05_mac_RetinaDisplay.jpg

今夏のMacBook Pro Retinaの発表以降、皆が口々に出すキーワードが『Retina』だった。画面解像度の高さとその表面素材であるゴリラガラス(強度コーティングされた傷のつきにくいガラス素材)の採用、従来比の4倍のコントラストなど、全ての映像クリエイターが恩恵を受けるテクノロジーが登場した。iPhone4に最初に搭載されたRetina ディスプレイは、その後、iPhone4S、5とiPadに搭載。PCとしては初めて今夏発売の新しいMacBook Pro 15インチに搭載(その後、13インチバージョンも秋に発売)。その後はMacユーザー以外にもRetinaディスプレイの高解像度を口にされる事も多く、映像機器部門の2012年の流行語大賞とも言うべき事象がその関心度の高さを物語っている。その後、EVFなど様々なモニターパネルにも(違法ではあるが!)一部Retinaの文字が踊るようになった。その解像感、再現力も含めて、今後デスクトップ環境でのより鮮明なモニタリングが要求されるこの時代において、まさにクリエイターの網膜(=Retina)と成り得るこのテクノロジーを、ネクストソリューション部門として賞讃したい。

総括

本年度のAWARDを決定する際に、お馴染みのPRONEWSライター陣に事前のノミネート製品アンケートを行ったのだが、同部門ほど製品候補がバラけた部門はない。分野もユーザー層も広いので無理もないが、それは逆に立場が違えばそれなりに良い製品が多岐に渡って増えてきたことの裏返しでもある。

多くのプロスーマユーザーが製品に求めているのは、プロフェッショナルでしか持ち得ないテクニックをどう補ってくれるのか?という点だ。そうした操作リテラシーを考慮した製品作りが、実際のユーザーニーズとどのレベルで合致するのか?現在において製品評価が最も問われる部分でもある。

もう一つは話題性。多くのプロフェッショナルが選ぶ製品であることはもちろんのこと、今やプロスーマ(もしくはハイアマチュア)目線で多く話題に上がる製品は、必ず次代のテクノロジーを牽引している。そしてそこには従来のマーケティングとは異なる手法が存在する。ニッチなジャンルのファン心理に向けた深い訴求力が、やがて他のジャンルのクリエイティブにも大きな影響を与えるという、いわゆる『好きこそ物の上手なれ』から生まれる伝染効果だ。GoProに代表される、スキミング層(マーケティング論における、製品信奉者による市場牽引普及層)へのピンポイントフォーカスPRは、プロ製品と民生機器の境界が無くなりつつある現状において、ハイエンドな映像制作機器にとっても無視できない市場傾向となってきた。


Vol.04 [PRONEWS AWARD 2012] Vol.06