数多く見られる映像業界に関連する参考出品や技術デモ

CEATECの魅力といえば、いち早く反響を聞くための参考出品や技術デモの展示が多数みられることがある。映像業界は4Kや8Kの高解像度化にどのように対応して、コンテンツの視聴環境はどのように変わっていくのか、といったこともCEATECの会場から具体的に見えてくるのだ。そこで、CEATECの会場で公開された映像業界に関連する参考出品や技術デモをまとめて紹介しよう。

NHK/JEITAブースでテレビの進化を体感

■スーパーハイビジョンを体験
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85インチの液晶ディスプレイでスーパーハイビジョンを楽しめるようになっていた

NHK/JEITAブースの一番の注目は、2箇所で行われていたNHKが中心となって研究開発を進めているスーパーハイビジョンの展示だ。1つは85インチの液晶ディスプレイを使ったデモで、家庭の視聴環境を再現したイメージでして展示が行われていた。去年のNHK/JEITAブースでもリビングイメージで放送デモが行われていたが、今年は三次元立体音響を再生する枠型のスピーカーを使ったり、スポーツや水中映像などの放送番組に近いコンテンツを使って、より家庭で番組を楽しむイメージが再現されていた。

CEATEC13_04_02.jpg 147インチスクリーンと22.2マルチチャンネル立体音響でスーパーハイビジョンを楽しめるコーナー。ブースはいつも立ち見の人も多く、混在していた

もう1つの体験コーナーは、147インチの大画面にスーパーハイビジョンの特長である22.2chの音響システムを使ってまさにその場にいるような臨場感で再生が行われていた。こちらのデモではオリンピック、カーニバル、サッカーなどが上映されていていたほか、女性アイドルグループが歌う映像も一人ひとりの表情が鮮明で圧巻だった。

■9月2日にスタートしたNHK Hybridcast
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画面の下に表示されているのがHybridcastのホーム画面

9月2日にサービスを開始した放送と通信の連携による新しいテレビサービス「NHK Hybridcast」の紹介と、そのHybridcastの将来のサービスのイメージについて紹介が行われていた。NHK Hybridcastは、NHK総合のみでスタートしているサービスだ。サービスを体験するには、受信対応機種とインターネット接続が必要だ。

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画面の下に表示されているのがスクロールニュース。放送を見ながら常にニュースチェックができて、気になるニュースがあれば詳細を確認することができる

東芝のレグザ Z8Xシリーズ、Z7シリーズ、J7シリーズが対応中で、パナソニックから10月に発売するスマートビエラ「TH-L65WT600」が対応予定だ。実際の操作は、NHK総合を選択している状態でDボタンを押すと、画面の下にHybridcastのホーム画面が表示される。「NHKの最新ニュース」や今放送されている「番組情報」、「番組表」、「スポーツ」、「気象情報」などが表示される。気象情報は、郵便番号を設定することで該当の地域を表示できるようになっている。「スクロールニュース」は、最新のニュースをスクロールで出してくれる。決定を選ぶと、大きな画面で確認することができる。ランキングを選べば、もっとも閲覧されているニュースを順番で表示してくれる。

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住まいの地域の今日の天気や週間天気、台風情報などの気象情報を表示することも可能

■次世代のNHK Hybridcastはこうなる
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Hybridcast対応の『おかあさんといっしょ』のデモ。視聴者も一緒にタブレットを使って楽しめる

次世代のHybridcastのイメージも展示されていた。将来のHybridcastは、タブレットを使って番組に参加できるような感覚になれるのが特徴だ。実際に展示されていたのは、教育番組のNHKの子供向け番組『おかあさんといっしょ』で、タブレットを使ってお絵かきをして楽しめたり、タブレットでタンバリンやピアノを演奏することができるといもの。

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Hybridcastで番組に吹き出しを追加できるようになる。タブレットで言語を選ぶことが可能

もう1つは教育番組の英会話の番組で、実際の番組は吹き出しはないが、Hybridcastを使うことによって吹き出しを出すことが可能になり、吹き出しの内容は単語はインターネットを経由で表示させるというものだ。通常の放送では単語は1つしか送れないが、インターネットとタブレットを使うことによって英語だけでなく、スペイン語や中国語、ハングルなど、視聴者の要望に応じたいろんな言語をタブレットで切り替えて対応できるようになっていた。Hybridcastはインターネットと放送を同期させる技術も入っているので、今後はクイズ番組を生放送で行って視聴者とやり取りするようなことも考えているそうだ。

■次世代放送のスケジュールを仕切る「次世代放送推進フォーラム」
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ブースでは次世代放送推進フォーラムの事業概要が紹介されていた。2013年に4K/8Kテストベッド構築・検討を行い、2014年に関心を持つ視聴者が4Kを体験できる環境を整備し、2016年に関心を持つ視聴者が8Kを体験できる環境を整備。2020年に関心を持つ視聴者が4K/8Kの放送を視聴可能な環境整備をする予定を紹介

NHK/JEITAブースの中で、4K/8K、スマートテレビなど次世代放送サービスに関する実証・試行的な放送を行っている「次世代放送推進フォーラム」が、2014年、2016年、2020年に向けて4Kの放送、試験放送から商用サービス、8Kの商用サービスに向かって「こんなコンソーシアムで進めていきます」というアピールを行っていた。気になる4Kの放送だが、来年の今ぐらいには放送時間や番組のラインナップは未定ではあるもののというなんらかの形でスカパー!の124と128度の衛星回線を使ってフォーラム全体の責任として行う予定にしているという。そこから先は、スカパー!や各放送局がそれぞれの商用サービスとしてその1〜2年後ぐらいに始まり、8Kの放送は2016年に試験放送を初めて、それから1〜2年後に商用サービスをNHKやほかの放送局がはじめる感じだと紹介していた。

未来のディスプレイが一斉に登場

■シャープのMEMSディスプレイ
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MEMSディスプレイの原理。シャッター構造により明るいディスプレイを実現というのが特徴だ

シャープのブースでは、IGZO技術の新しい用途提案として、次世代MEMSディスプレイが展示されていた。ブースには7インチで800×1280ピクセル、約220ppiのモデルが展示されていた。MEMSディスプレイのポイントは「液晶ディスプレイとは違う技術」とのことだ。そうしたことから、色鮮やかで省電力、外光下でも見やすいという特徴を実現できているとのことだ。

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展示されていた7インチの実機

■特殊なスクリーンを使った「シースループロジェクション」
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大型タイプのシースループロジェクションディスプレイ

パイオニアのブースでは、特殊なスクリーンを使った「シースループロジェクション」が参考出品されていた。スクリーンに投影される映像と背景が融合して、背景を透かして見ることができる新しいタイプの透明ディスプレイだ。原理は、スクリーンの奥に四角い窓があり、そこにプロジェクターが配置されている。ガラスのように見えるところがスクリーンになっていて、いわゆるリアプロジェクションと同じ構造になっている。

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小型タイプのシースループロジェクションディスプレイも展示されていた

ポイントはスクリーンが特殊で、スクリーンを上手に使うことによって、明るい映像を見せつつ、向こうの絵も見えるということを実現しているところだ。今回はコンセプトの展示で、実際にはショーケースやウィンドウディスプレイなどを想定しているとのことだ。

■シャープのミラータイプのディスプレイ
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ミラー型のディスプレイにシャープのロゴが映し出されているところ

シャープブースの隅にミラータイプのディスプレイが展示されていた。60インチの高透過ミラータイプのサイネージディスプレイを4枚使ったものだが、つなぎ目は感じられなかった。なにも表示されていないとただの鏡にみえるが、その鏡の中からロゴやグラフィックが映し出されるといった感じのディスプレイだ。

■三菱電機がリアプロジェクション方式車載ディスプレイを展示
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展示されていた車載ディスプレイの全景、さまざまな曲面、形状に映像表示できるというのがポイントだ

三菱電機のブースで、リアプロジェクション方式車載ディスプレイが展示されていた。一般の車のインパネ部の液晶ディスプレイはフラットな感じが強いが、展示されていた車載ディスプレイは曲面形状に映像表示ができて認識性が高いというのが特徴だ。確かにディスプレイの真ん中とか曲率がきつくなっているのに、見えづらいようなことは感じない。曲率がきついところは樹脂でてきていて、凹面であれば投射レンズを工夫したり、歪んだりとかしたら電気的に補正をするという形で実現しているとのことだ。

ドコモがウェアラブル端末や次世代移動通信を紹介

■メガネ型のウェアラブル端末
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「手ぶらでムービー」のウェアラブル端末

ドコモのブースで注目はウェアラブル端末の「インテリジェントグラス」だ。ブースには体験するための行列ができていて、「待ち時間 60分」といった掲示が行われるほど注目を集めていた。ウェラブル端末は4つの提案が行われていて、1つ目は「手ぶらでムービー」だ。移動中でも手に持たなくても長時間、動画を楽しむことができるというものだ。

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端末から見える映像の様子。中央にコンテンツが表示されている

2つ目は「見るだけインフォ」だ。メガネを向けただけでクラウドから関連情報を引き出すことができるというものだ。例えば、ビジネスシーンで過去に会ったことがあるのに相手の名前などを思い出せないときなど、顔を認識して個人を特定し、関連データを引き出すことができる。このほかにも、外国語のメニューなどを日本語で確認できるなどといった使い方も可能になっているという。

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「見るだけインフォ」のウェアラブル端末

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端末から見える映像の様子。顔を認識して、個人を登録した情報がでてきたところ。名前や所属、あらかじめ登録してあれば一言メモなど確認することができる

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なんでもインターフェイスのウェアラブル端末

3つ目は身の回りのものや空間をユーザーインターフェイスにできる「なんでもインターフェイス」だ。普通のノートなのに端末を通して見るとユーザーインターフェイスにすることができるというもので、ノート上で動画を再生するというデモを紹介していた。身の回りのものをタブレットやノートPCの代わりにできることで、重い電子機器を持ちあるく必要がなくなることをアピールしていた。

CEATEC13_04_23.jpg なんでもない普通のノートがインテリジェントグラスを通すと、ディスプレイのように見えるようになる CEATEC13_04_24.jpg

空間インタフェースのウェアラブル端末

4つ目は「空間インタフェース」だ。仮想のアイコンやキャラクターをあたかも現実の物体のような感覚で操作することができるというものだ。デモでは、実際には目の前に存在していないはずのキノコ型のマスコットキャラクター「ドコモダケ」が端末から見える世界では存在していて、手を伸ばすと本物のように触ることができるようになっていた。左右に動かしたり、指の上を転がしたりするこもできる。

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空間インタフェースを使うことによって、まるで本物のキャラクターを触っているように操作が可能だ

■4Kの動画サービスもスムーズに閲覧できるドコモ次世代移動通信「5G」
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ドコモLTE Xiは10月10日以降に発売予定の一部の端末から下り最大150Mbpsになる予定だ

ドコモブースでは、将来の無線アクセス「次世代移動通信5G」についの紹介も行われた。ドコモLTE Xiは現在、下り最大112.5Mbpsの速度を実現していて、10月10日以降に発売予定の一部の端末から下り最大150Mbpsになる予定だ。そして、2015年に導入を予定している無線通信規格「LTE-Advanced」は、トラフィックの多い場所であってもさらに安定した大容量データ通信が可能とななる予定と紹介した。しかし、今後の問題は通信トラフィックで、2010年から1015年の5年で24倍、さらに今後は1000倍以上になると予想されるという。

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しかし、今後トラフィック量は1000倍以上になる見通しだという

そこでドコモでは次世代移動通信5Gの研究開発に取り組んでいる。5Gは何が違うのか?というと、現在のLTEや2015年度導入予定のLTE-Advancedよりもさらに高速、大容量を目指した通信方式で、現在使用されていない高い周波数帯を使うことで、高速、大容量通信を実現することを想定している。ただ、高い周波数帯の電波ほど、より遠くまで届きにくい性質がある。そこで、5Gでは1つの基地局がカバーするエリアを狭くしたスモールセルを複数配置することを想定しているという。

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次世代移動通信5Gは現在使用されていない3GHz帯以上の高周波数帯を使用する

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次世代移動通信5Gでのスモールセルのエリア範囲のイメージ。1基地曲あたり100アンテナ以上で制御する

視覚化したシミュレーションの結果も紹介も行っていた。LTEで人が密集するようなエリアで4Kのような高解像度動画サービスを閲覧した場合は、リアルタイム再生は困難であるという。一方、次世代移動通信5Gで4Kのような高解像度の動画サービスを閲覧することを想定した場合、スムーズに閲覧することが可能になる予定であることを紹介した。

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「LTE(3GPP)」を使った場合のシミュレーション。背景の色がユーザースループットを表していて青になっている。右下の「UHD(4K)」が4K動画コンテンツを再生しようとしたイメージ。再生はできない

CEATEC13_04_31.jpg 5Gを使った場合のシミュレーション。背景の色が赤になり、高速であることをし手している。右下の「UHD(4K)」が再生できるというイメージになっている

動画を高速にスマートフォンに転送するTransferJet

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年を重ねるごとに商品が充実してきていたTransferJetブース

近接無線転送技術の「TransferJet」の展示も行われていた。TransferJetの特徴は、近距離無線通信だが非常に高速であるところで、大きなファイルを短時間で転送することが可能だ。例えば、結婚式でいっぱい写真を撮った場合に、その場で渡すということができるようになるという使い方などがあることなどを紹介した。

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サンワサプライから10月発売予定のマイクロUSBモデル「ADR-TJMUBK」と同じく10月発売予定の「ADR-TJAUBK」などが展示されていた

ブースの注目は、TransferJetの機能をもったUSBタイプのアダプタの紹介だ。TransferJetは今まで携帯電話になかなか搭載できなかったが、これからは外付けではあるもののAndroid機に搭載することで、TransferJetの通信機能が使えるようになる予定だ。例えばブースの正面では、世界遺産の動画を転送するデモが行われていたが、TransferJetのアダプタを使って約36MBで2分30秒の動画を約5秒でスマートフォンに転送できることを実演していた。

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アダプタをロゴマークにかざすと映像ファイルの転送がスタート

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約5秒で転送が完了。映像を楽しむことができるようになった

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デジタルカメラをリーダーの上に置くだけで撮った写真がホームサーバーにバックアップされる

USBアダプタの登場によって今後期待されるのはTransferJetのいろいろなインフラの広がりだ。ブースではいろいろな使い方を紹介していた。1つが、ホームネットワークの入り口にTransferJetを使った例だ。例えば、ワイヤレスチャージャーとNFCを搭載したリーダーにTransferJetの機能を搭載したデジタルカメラを置けば、写真のバックアップを自動的に行ってくれる。

CEATEC13_04_37.jpg デジタルカメラにはTransferJet対応のSDメモリカードを搭載していた

今まではデジタルカメラからメモリカードを抜いてパソコンを立ち上げて、メモリカードをリーダーにセットする必要があったが、パソコンを立ち上げる必要もなく置くだけでバックアップが可能になったのだ。デモで使われていたデジタルカメラには、TransferJet対応のSDメモリカードを追加した状態で行われていた。TransferJet対応のSDメモリカードの発売は2014年上半期を予定しているとのことだ。スマートフォンも置くだけでバックアップと充電が可能だ。

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デジタルKIOSKダウンロードサービスのデモ

また、TransferJetを使ったデジタルキオスクのデモも行われていた。アニメを買いたいと思ったら、端末にスマートフォンを置いて「購入します」というボタンを押したら、スマートフォンのNFCが起動し、TransferJetで実際にダウンロードが始まるというものだ。

映像やインターフェイス関連の先進技術を紹介する富士通

■映像にスマートフォンをかざすだけでWebページに飛ぶ技術
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ブースで生放送しているモニタに向けて専用アプリを起動してスマートフォンをかざす

富士通のブースでは、映像にスマートフォンをかざすだけでWebページに飛ぶことができるというデモが行われていたいた。従来はテレビ番組の中で「続きはWebで」と言われても、検索をしたりするのは面倒でなかなかアクセスする気持ちになれなかった。しかし、富士通のこの技術を使えば、映像にスマートフォンをかざすだけで、指定したWebに飛べることができるのだ。

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2〜3秒後にはクーポンが表示された

デモでは実際にブースを走る模型が生放送されていた。この技術は、生放送でも信号を埋め込むことも可能だ。スマートフォンのカメラアプリを立ち上げて、モニタに向かって四角い枠をQRコードを読むような感覚で2〜3秒かざすと、クーポンが表示された。もちろん、なにを表示させるかは映像制作者側のほうでいろいろ決めることが可能で、旅行番組だったら観光地のサイトを表示させてみたりとか、抽選の応募フォームを表示させてみたりとか、いろいろ活用できるだろう。

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左が可能前の映像。右が加工後の映像。見比べてもわからない。この映像の左半分にスマートフォンをかざしてもなにも起こらないが、右半分の映像だけにスマートフォンをかざすと指定のWebに飛ぶことができた

この技術の仕組みだが、画面全体に砂嵐みたいな光の変化を透かしとして埋め込むことによって実現している。画面全体の色を部分部分で明るくなったり暗くなったりちらちら変化させ続けている。厳密には、画面全体的にチラチラしているのだが、人間の目ではわからないといっていい。画像の劣化や色の変化はほとんどないというのがこの技術の特徴になっている。もちろん、テレビだけではなくてプロジェクターやパソコンで表示されたものでも読み込むことは可能とのことだ。

映像の最新技術を公開するゾーン「超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム」

「超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム」(URCF)は、毎年CEATECで立体映像や多視点映像、五感・多感覚コンテンツ、テレワーク技術などを使った3D映像アプリケーションやコンテンツを展示して活動を紹介している。その中から注目の展示をいくつか紹介しよう。

■360度どこからでも立体に見える3Dディスプレイ
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Holo-Tableの全景。 下側にあるプロジェクターから投影する構造になっている

3Dragonsは、360度どこからでも立体的に見えるディスプレイ「Holo-Table」を展示していた。裸眼の状態で正面から見ると正面の画像、裏から覗くと裏の画像が見える。ディスプレイの真下から360度の画像をプロジェクターのデータを投影して実現しているとのことだ。

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いろいろな角度からディスプレイを除くと、その角度に応じて頭部の断面図を見ることができた

■錯覚を利用して知覚する形状を変化させるデモ
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ステージにはシンプルな円柱が用意されている

東京大学の廣瀬・谷川研究室は、「Magic Pot」と呼ばれる視覚に変化を与えることによって錯覚を起こして触覚を変えるという研究の展示が行われていた。この展示は手品を体験しているような感じだ。ステージにはただのシンプルな円柱があり、視点と円柱の間にiPadで歪んだ物体を提示する。iPadの歪んだ物体を見ながらシンプルな円柱を触ると、まっすぐなはずの円柱が歪んだ物体を触っているように感じるというデモだ。シンプルならがびっくりするようなデモだ。

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iPadを通して歪んだ円柱の輪郭の通りに触ると、シンプルな円柱が本当に歪んだ円柱のように感じる。とても不思議な体験ができるデモだ

なぜこのようなことが起きるかというと、人間の感覚は視覚というのがかなり強い割合を占めていて、どうしてもほかの感覚が視覚に引っ張られてしまう。これを感覚間相互作用といって、iPodからみえる歪んだ円柱を見て視覚が変化することによって「こういうのをさわっているんだ」という脳が錯覚を起こして触覚も勘違いしてしまう。それを体験できるデモとのことだ。

■デプスカメラを利用した自由視の映像生成システム
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福井大学のブースに展示されていたデプスカメラとカラーカメラ。左のカメラで奥行き情報を取得して、右のカメラで色をつけるといった感じだ

慶應義塾大学は「自由視点映像のための3次元モデリング生成システム」、福井大学は「3次元映像End-to-End通信・放送システム」というテーマを展示していた。

CEATEC13_04_48.jpg デプスカメラから取得された奥行き情報

両ブースともデプスカメラを利用した自由視視点の映像生成システムを展示していたので一緒に紹介しよう。ここで紹介していた映像生成システムは、デプスカメラで対象の3次元情報を獲得して、もう1つ普通のカラーカメラを用いてデプスカメラの結果にマッピングするというものだ。ポイントはASC社のデプスカメラを使用していることだ。長所は非常に長い距離が測れて屋外まで使えるというところで、欠点は解像度は128×128しかないところだという。

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デプスで撮れた情報の点に対してカラーの色をマッピングした状態のテストの映像

今後はサッカーなどのスポーツシーンを4台ぐらいのデプスカメラをフィールドの四隅に置いて撮り、一般の方々が撮っているカラー映像をネットワーク経由で集めてくる。それらのカラー映像を3次元情報に貼り付けることによって、サッカーフィールドの自分の好きな視点から試合が見られるように映像を実現する予定とのことだ。


Vol.03 [CEATEC JAPAN 2013] Vol.01