求められるCP+の重要性

毎年この時期に開催される、カメラと写真映像の情報発信イベント「CP+」が、今年も横浜・みなとみらい地区のパシフィコ横浜にて開催された。CP+は、以前の日本カメラショー(フォトエキスポ)、2005年〜2009年にカメラ・写真関係の総合展示会へと転じて開催されていたフォトイメージングエキスポが進展したもので、2010年からは、このパシフィコ横浜に会場を移して日本最大級のカメラ・映像の展示会として開催されている。

今年のCP+2014は、あいにくの天候不順が開催実施に大きく影響し、開催3日目の15日(土)は関東一帯を襲った記録的な豪雪と、それによる交通機関の混乱で前代未聞の開催中止となるなど不遇な開催になってしまった。しかし来場者数は、初日に11,750名、2日目も降雪の中、8.792名、開催中止の3日目開けの最終日は晴天にも恵まれ、なんと21,661名もの来場者が訪れ、3日間で累計42,203名の入場登録者を数え、相変わらず熱いカメラファン注目のイベントであることを裏付けている。

別項の会場レポート記事でも示されているように、すでに一般市場では動画と静止画プロダクツの明確な垣根は無くなり、また業務用と民生用も一部では混在している昨今の映像機器状況にあって、CP+は秋のInterBEEと並び、このPRONEWSでも国内のイベントニュースとして取り上げる必然性の高いイベントの一つになっている。

注目の4Kデジタル一眼登場

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映像制作者から見た今回のCP+は、やはり「4K」というキーワードは外せない。多くの観客とともに初日から多くの映像業界関係者も訪れていたのはパナソニックブース。注目はもちろんデジタル一眼レフカメラ、GH3とデザインやボディサイズはほぼそのままに4K(4096×2160/24p、3860×2160/30p)動画が撮影可能な、パナソニックDMC-GH4だ。発売は今春ということで、まだ参考出展の段階だが、おそらく4月のNAB開催時期には明確なアナウンスがされるという。このカメラ、いわゆるデジタル一眼レフカメラとしての民生機「DMC-GH4」に、SDI出力やXLR入力対応可能なインターフェースユニット「AG-YAGH」をセットにしたシステム製品として、同社の業務用向け製品イニシャルである「AG」を配して、業務用販路では「AG-GH4U」としても販売する。要は民生と業務のハイブリットな製品としても注目を集めそうだ。もちろん一般量販店でもオーダー等でAG-YAGHの販売も検討しているという。

この販売形式の背景には同社の社内事情も大きく影響しているようだが、民生と業務の垣根がほとんど無くなってきたこのレンジの製品訴求としては、これからの新しいメーカーのあり方の一つのスタイルを具現化したと言えるだろう。NABではおそらくこの「AG-GH4U」とともに、ハイエンドでも待望のVARICAM 4Kカメラも正式発表されるとのことで、今年のパナソニックの動きには要注目だ。

プロフォトグラファー向けエリアでも映像に重点

CP+の最も中心的な出展メーカーであるキヤノン。すでに国内に数千人を抱える同社のプロフェッショナル・フォトグラファーに向けての専用サービス、CPS(Canon Professional Services/キヤノンプロフェッショナルサービス)は、キヤノン製品を使用して写真撮影を生業とする個人のプロフェッショナル・フォトグラファーの活動を支援するための会員制のサービス・サポート制度。国内のCPS専用窓口(銀座・梅田)や主要イベントのサービスデポなどにおいて、カメラ機材の点検・清掃や修理受付などを受けられるサービスだが、このCP+会場内でもこのCPS会員専用のラウンジが設けられていた。残念ながら会員のみの入場制限があり、一般ユーザーは入場ができないが、ここでもいくつかの変化が見られた。

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「FLAME FRAME」を4K業務用モニターDP-V3010で上映していた

今回は、ちょうど1年前にEOS-1D Cで4K撮影されたムービーとスチルのコラボ作品「FLAME FRAME」(監督・撮影:貫井勇志 氏)が、同社新製品の4K業務用モニター「DP-V3010」で上映、またそこから切り出された4Kスチル画像のパネル展示が行われた。ここでは本会場ブースで一部の展示だった、CINEMA EOS SYSTEMもEFシネマレンズとともにハンズオンコーナーが設置されるなど、映像制作者向けの展示コーナーが設けられ、プロムービーユーザーへの力の入れようを示していた。

この2月下旬からファームアップ開始(有料:55,000円/1台)となる、EOS C100のデュアルピクセルCMOSAF搭載機による最新のデモ映像も公開。「デュアルピクセルCMOSAF」は、同社のデジタル一眼レフカメラ「EOS 70D」(2013年8月発売)に初めて採用された、撮像と位相差AFの機能を兼ね備えた構造のCMOSセンサーを用いた最新AF技術で、EFレンズで画面中央の被写体に自動で素早くピントを合わせ続けられるコンティニュアスなAF機能。さらにコントラストAF信号を補助的に使用し、不要なボケの発生を抑えた安定感の高いAFを実現している。また、AFロック機能の追加であらかじめピントを任意の距離に固定する「置きピン撮影」や、ピント合わせ後の撮影範囲や構図の変更などが可能になった。この機能追加で、ワンタッチで画面中央の被写体に自動でピント合わせができる「ワンショットAF」が、ファームウエア更新前と比べ約2倍のスピードになるという。これらの機能は、104機種(2013年11月現在)のEFレンズに対応している。

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一般にCPS会員は、キヤノン製品の購入者であるとともに、写真集出版や写真展開催、さらに著名なアーティスト活動をしているフォトグラファーが対象であり、その会員制サービス・サポート制度だが、こうした新たな動画機能面での新たな取り組みは同社の動画ユーザー増加への裏付けとともに、新たな方向性も示しており、今後はCPSのムービーユーザーへの拡大なども期待したいところだ。

日本製品に求められる特異性の中の逸品

その他CP+2014の展示製品については別項の記事を参照頂きたいが、このところの傾向として日本製品の今後のあり方に、ある方向性が期待されていると考えられる。「日本の“ガラパゴス化”とそこから脱却」が叫ばれて久しいが、実は世界で受け入れられ、グローバル世界で日本が受け入れられているものの大半が、その“ガラパゴス”製品だったりする。

最近なってユネスコの世界文化遺産に登録された和食しかり、オタク文化しかり、昨今は海外ブロガーが多数輩出するまでに至って居る日本のラーメン文化しかりだ。こうした傾向の中で、日本メーカーは常に世界市場を見て、ワールドワイドの統計値を基準に、常にマーケティングターゲットをその目線で追い続けて来たが、その結果は、他のアジア諸国との競争力と市場への反応スピードにこのところ苛まれているという事実。これはすでに企業としても先の見える展開であることは明確なはずである。

要は日本文化や日本製品に期待されているのは、特異性の中の逸品を生み出す独創性であり、そしてそれを安定供給できる信頼性なのである。もちろん現状でもそうしたポイントを見定めて製品開発を行っている企業も少なくないが、この業界の製品プロダクツにおいても、今後そんな予感を感じさせる製品がCP+の中でもいくつか見る事ができた。

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SIGMA dp Quattro

例えば、シグマのdp Quattro。新開発のFoveon X3ダイレクトイメージセンサー(ジェネレーションネーム“Quattro”)を搭載した高画質コンパクトデジタルカメラシリーズ「SIGMA dp」は、これまでdpシリーズが培ってきた製品コンセプトを昇華し、筐体デザインとプロダクトコンセプトにおいても高い独創性と品質が期待できる製品だ。Foveon X3センサーが捉えるその独特の質感描写はそのままに、より精彩に、よりリッチに、イメージの再現にどこまでも応えうる懐の深い画像を提供。センサー、エンジン、レンズ、筐体などあらゆる要素をこの観点から徹底的に見直し、一から開発しなおしたという。

撮り手のことを常に最優先に考えた、同社の哲学である「作品づくりのためのカメラ」としての方向性をまさに先鋭化させたこの製品は、まさに日本のモノ作りの伝統的な心意気を受け継ぐ物として、今後の展開に大いに期待を寄せるところだ。できれば動画機能面でもこうした発想でモノ作りを考えるメーカーが来年は多数現れる事を期待したい。


Vol.04 [CP+2014:新映像創世記] Vol.01