いよいよ実働期に突入した、4K制作。その仕様はまだ明快な回答がない中で、実際の実働状況はここ2年の間で明らかに変化してきている。今回の特集をまとめるにあたり、実際に4K撮影を行い、さらにはワークフローとして4K制作実績を持つ様々なジャンルの方にお集まり頂き、4Kの現状と4Kの今後、そして実体験を通じて考える「TRUE 4K」とは何か?それぞれの立場での考えなどを語って頂いた。

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出席者のプロフィール(写真左から)

  • 石坂拓郎氏(撮影監督)
    米国LA在住の撮影監督。岩井俊二監督の右腕として活躍した名カメラマン、故 篠田昇氏の遺作となった「世界の中心で、愛をさけぶ」でフォーカスマンを担当。その後、国内の映画作品,CMなど様々な方面で活躍。キヤノンEOS C500のフル4Kワークフローで撮影・制作されたミュージックビデオ「Galaxy’s Skirt/Emi Meyer」の撮影監督/4Kワークフロースーパーバイザーを担当した。
  • 井上清氏(ビデオフォーシーズンズ 代表)
    業務用ビデオ製品の企画開発に長年携わり、現在はキャンピングカーで美しい日本の四季を撮り歩くビデオフォトグラファー。RED SCARLET-Xで4K映像素材を撮影、BD/DVDを制作・販売している。
  • 田中誠士氏(株式会社フルフィル 代表取締役/エグゼクティブプロデューサー、システムエンジニア)
    株式会社フルフィルは、通販、サイエンス、医療、テクノロジー系の企業、官公庁から広報、ブランディング業務などを受託しており、その一環として2008年から映像制作を独学で開始。主に、企業VP、インフォマーシャルTVCM、通販番組、サイエンス映像などを手がけ、自ら監督も行う。
  • 松永勉氏(未来シネマ 代表)
    過去にIMAGICA在籍中、ロサンゼルスに駐在し、当時テクニカル・ディレクターとして、IMAXなどの4Kを超える大型映像制作に数多く携わっている。キヤノンEOS C500のフル4Kワークフローで撮影・制作されたミュージックビデオ「Galaxy’s Skirt/Emi Meyer」の監督。
――フォーマットの混在
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ビデオフォーシーズンズ 井上清氏

井上氏:私はメーカーで長年業務用HDカメラの商品企画を担当して来ましたが、現在の仕事では4KカメラとしてRED SCARLETを使用しています。これは僕がこれまで見て来た国産メーカーのクリアな画質とは全く異なる、これまで見たことのない映像でした。また最近、DSLRの4Kカメラ、キヤノンEOS-1D Cを試す機会もあったのですが、これも全く違う方向性の画です。REDは4K本来の解像感という意味でクッキリパッキリした4Kの解像度の見本のような映像を見せるという意味ではちょっと厳しいのかもしれませんが、実に雰囲気のある画質です。同じ4Kといっても様々な画質の4Kが存在しているのが現状ですね。

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撮影監督 石坂拓郎氏

石坂氏:映画の世界では、現状として完パケで4Kまでできるという作品がまずないですよね。やはりそこが問題です。いま様々な4K画像や高解像度のHD画像が乱立していて、4Kの解像感という意味ではHDの凄くキレイな画と4K画像の差が、パッと見ではわかりづらいと感じています。これから4K映像に何をもとめていくのか?ということが問題です。

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未来シネマ 松永勉氏

松永氏:90年代後半ハリウッドで、IMAXなどの大型映像の仕事をしていて、その時に65mmのフィルムを4Kにデジタイズして作業をしていました。当時、5.5Kというサイズまで出来たのですが、さすがに当時のマシンではデータ量が大きすぎて処理が追いつかず、4K10bitの非圧縮データを使っていました。今、デジタル4Kのフォーマットが色々と出て来たのですが、そのほとんどが圧縮された4Kで、実際にベイヤーの4Kセンサーではフルに色情報がなく、4KのセンサーでようやくHD/2Kがまともにフルカラーで生成できると思うので、本当に4K解像度を出そうとすれば、6K、8Kといったセンサーが必要になってくると思います。単に4Kといっても様々な4Kが存在しているわけで、8Kセンサーから切り出された10bit非圧縮の4Kもあれば、様々な圧縮方式で作られた「本当に4Kといって良いのか?」と疑問符がつくような4Kもあって、それを無理に4Kとして一緒に扱う意味があるのかどうかは迷いますね。個人的には4Kに行く前に、もっとビットレートを上げるとか圧縮を少なくするとか、色を増やす、もしくは4KセンサーからハイクオリティーのHDを10bitで圧縮なく出力したほうが、制作的にも楽ですし、意味があるのではないか?と感じています。

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株式会社フルフィル 田中誠士氏

田中氏:私は主に企業VPやCM、官公庁の様々な案内ビデオなどを手がけています。実際に納品はHDですが、4Kで撮影する機会も増えています。クライアントから実際にそういった要望もあります。4Kになるととにかくレンズの善し悪しが確実に分かるし映像に写ってきますね。僕らが作っている映像は芸術作品ではありませんが、そういう映像が見えて来るとそれでもこだわりたくなります。

――4Kソリューションの問題点

井上氏:色情報に関しては確かに4Kで撮って2Kにした方が良いと思いますが、解像感という点においては、昔HDで撮ってSDにしたときよりも、遥かに4Kで撮ってHDに落とすことのほうが、影響が大きいことです。HD→SDの時はちょっとキレイかなぐらいに感じていたと思うのですが、4K→HDは圧倒的な解像感が出ます。その理由はメーカーの担当者に聞いても判然としませんでしたが、結果から言えば断然いいですね。

石坂氏:4Kが撮影できるカメラは、ポテンシャルはありますけど、データの取り出し方によっては出来上がりが全く違う物になってしまうので困りますよね。自宅でカラーコレクションをやっていると毎回感じることですが、例えば暗部しか使っていないような画の場合、撮影時に暗部の色表現などを厳密に行っても、それがDCIからREC.709に変更されたとたんに、データが無くなってしまうとリッチな画だったものが、単に暗い映像になってしまうわけです。DCIの中でカラコレするのとREC.709の中でカラコレするのとでは、大きく結果が違ってくるわけで、僕ら制作者にとっては、これからは解像度よりも再現力というものを上げて行ってもらうことの方が、遥かに重要なことです。

松永氏:いま4Kカメラを採用している大半が、4Kで完パケにすることはほとんど無く、キレイなHDをつくるために4Kカメラを使用していて、それはオーバーサンプリングで撮ってリサイズしたほうが画像はキレイなわけです。できるならばカメラ内で4Kをディベイヤーして、情報を間引くこと無く、現状ポスプロでやっていることと同じクオリティでHD/2Kで仕上げるカメラが出来ることが理想的なのではないか?と思いますね。

田中氏:RAWは確かに色情報などの再現性には適していますが、当社ではPMW-F55で撮影してもRAWは殆んど使いません。やはり後処理の問題で、RAWですと現像処理時間にいきなり3〜4倍の実時間が掛かってしまうわけで、通常業務ですとまだそこは実用的ではないです。

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――テレビにおける4K

井上氏:テレビにおいて、特に日本ではこれまでの放送の延長線上で4Kを考えている節があって、すべてを4Kに移行するという考え方、例えばバラエティも報道も何でも一緒に4Kと言ってしまっているのは、SDからHDに移行したことに比べると、それは明らかに違うことのように思います。本当に良質なコンテンツであれば4Kで見たいと思う人は多いでしょう。海外でもハイエンドコンスーマー層の人たちでもそういう点でこだわる人は多いと思います。

松永氏:その点は音楽と同じで、ものすごく良い音で音楽を聴きたいハイエンドなオーディオファン層のように、キレイな世界遺産などの映像をホームシアター設備で4K、もしくはそれ以上で見たいという人はもちろんいるでしょう。でも、それを万人に押し付けようとするのは違うと思います。

石坂氏:僕自身も自宅のテレビの解像度とか色とかはほとんど気にしませんから(笑)。真っ暗にして映画見始めたら、奥さんにすぐ電気付けられるでしょうね(笑)。結局4Kの理想的なテレビがあっても、家庭にそれをちゃんと見られる環境がある人ってほとんどいないのではないでしょうか?あとシャープのテレビのように、単に色情報を加えるだけでも見え方が変わると言った方法も出て来ていて、さらに良い映像を映すという点においては、単に解像度を上げて行くという方向性だけではないかもしれません。

井上氏:サッカーの試合でゴールからゴールまでを撮っておいて、後々HDで切り出す場合、そのぐらいのサイズですと、やはり4Kでは足らないでしょう。スポーツではクロップする場合など、8Kの使い道はそういうところに有るかもしれませんね。

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――4K撮影にまつわるあれこれ…

松永氏:最近海外のドキュメンタリー番組などは、おそらくRED EPIC等で撮っていると思いますが、仕上げがHDの場合、4.5Kや5Kで撮っておいて、後で寄りの画を切り出しで使っているのをよく目にします。こうした使い方も4Kの使い方として増えていくのではないでしょうか?

井上氏:いまの4Kカメラではフォーカスが難しいですね。そうなると普通に4Kを撮るにはオートフォーカスしかないんですね。4Kカメラは果たして表現するカメラなのか、記録するカメラなのか?その辺も議論が分かれる所でしょう。例えばスチルの人は昔から4K以上のサイズで撮って来たわけで、これまでのHDですとなかなか満足出来なかったものが、4Kだとスチルの人やハイエンドアマチュアの方も画面に映して満足出来るわけです。これからそういうニーズも出てくるかもしれません。

松永氏:4Kで撮るべきコンテンツを4Kで撮るのはいいけれど、そうでない物もすべて4Kってことになるとちょっと厄介ですね。もともといま推進しようとしているTVの4Kなどは、視聴者の要望から出て来たものではなく、国の政策もあって出て来たものだから、そこが噛み合わないのは仕方ないのかもしれませんね。

田中氏:まず4Kはタレントさんが嫌がりますよね。肌の調子とか産毛とかまで全て映ってしまうので、ワークフローもそうですが照明、メイク、衣装、舞台セットなど問題はどんどん波状的に広がっていきます。CMでは仕上げがHDでもほぼ4K収録になっていますが、テレビドラマではまた事情が違います。カメラは最新のカメラを使っているものの、そこからHD-SDIでHDCAMのテープデッキに収録している現場がかなり多いようで、これは制作時間と設備の問題ですね。テレビの問題はまずはHDCAMからの脱却でしょう。せっかく4Kで撮れてもまだなかなかフル4Kというところまでは時間がかかりそうです。

石坂氏:TV局の問題は設備投資のタイミングなんですよね。どこで切り替えるのか?彼らは機材がそこにあるから使わなければならないので、機材は償却しない限り次に行けないですしね。でも進化は急速なのでなかなか追いつけない。でも先進のキー局のスタジオとかでは撮った素材をすぐ編集室へ送って編集できるようなサーバーシステムとかは構築されています。海外の有識者の話では、今後5年以内に通信革命が起きたら、ロケ現場から撮った瞬間にすべてクラウドに上げるようなことはすでに想定されているようです。

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――最後に…4Kの展望

井上氏:まずはハイエンドコンスーマーや業務用に4Kが浸透していけば良いと思いますし、特にそこに関心がありますね。放送は果たして4Kが必要なコンテンツがどれほどあるのかも疑問が多いですし、システム的に色々と難しい問題があるので、4Kコンテンツはむしろ業務用というマーケットの方が具体的ニーズとしても多くなるのではないでしょうか?そのときの最大の問題点としては、4Kのメディアが無いという点です。受け渡しにしても上映にしても、4Kで撮って編集したけれど、持ち運べるメディアがない。これさえ出来れば小さいマーケットでも4Kが爆発する可能性があると思います。あとは街頭のサイネージ等も4Kのものが増えてくるのではないでしょうか?4Kカメラもどんどん安くなって来るので、このマーケットはさらに有望になって来るのでは?と感じています。

石坂氏:映画の4Kで言えば、まず4Kで撮った素材を4Kで見る、という環境が必要ですね。そして表現的に4Kのシャープネスとかをどうするのか?ということ。4Kで撮ったものを4Kで見ていない状況なわけで、まずそこの環境を整えてから、元々の解像度がある4K映像が(映画として)一般にどう見られるかを考慮して、僕らはそこにどういう味付けをできるのか?ということを考えて行かねばないと思います。人間は高い解像度にあっという間に慣れてしまうので、すべては4Kに進んでいくでしょう。そうしたときに今ある様々な4K映像からちゃんとした表現ができることが必要かと思います。

松永氏:僕自身4Kは要らなくてもいいかなと思っていますが…(笑)。でも実際に4Kカメラも必要だと思うし、高い解像度だから見たいと思えるネイチャー番組など4Kが必要なコンテンツはあると思います。それはどんどん進めていけばいい。問題はこれがホントに普及するかという点においては、コンピュータ、ITと通信の進化のスピード次第なんですね。いまの4Kをちゃんと処理するには最低でも僕は500Mbpsというスピードは必要だと思っていて、これが家でも外でも快適に運用出来る環境ができれば4Kを普通に扱えると思いますが、それまでは特定の人のものでしょう。あとメーカーの人に考えてもらいたいのはそこに行くまでの間で、いくら4K!4K!といっても、扱えないものは仕方ないわけですから、それまでは4Kのセンサーを積んだカメラからもっと上質な2Kを生み出せるカメラも出して欲しいし、またダイナミックレンジ、階調など、解像度以外の着目すべき部分もまだ多いので、そこにも選択が持てるような、実用的で表現力を高めるカメラを増やして行ってもらいたいと思います。それが次の時代を繋ぐと思っています。

田中氏:我々が専門としている、企業が映像を活用するCMや企業VPの世界でも、キレイな映像を欲しがっていることは間違いないです。すでに昨年2月にある企業の社長から「もう4Kって撮れるんだよね?」という問い合わせがありました。例え現状ではHDでしか見られない環境でも4Kで撮って欲しいという要望はすでにあるわけで、その理由は自社製品をきれいに撮って欲しいと考えるのは、メーカーの社長なら誰でも当たり前に思っていることです。メディアはDVDでも収録はHD撮影しているように、(メディアはどうであれ)3年後には4Kで撮るというのは当たり前になっているような気がします。4Kの魅力はやっぱり大画面視聴なので、撮っているときはそのニュアンスがわからないのですが、200インチ台のモニター施設で見たときに印象は驚くほどもの凄く変わります。こうした大画面普及においては、4Kだと家のサイズ的に日本では4Kプロジェクターが家庭等にも浸透してゆくのではないでしょうか?

txt:石川幸宏 構成:編集部


Vol.05 [TRUE 4K] Vol.07