カメラに合わせた周辺機器

カメラ周りの周辺機器は、カメラの種類が増えるに連れ様々な製品が発売されている。特にデジタル一眼により動画撮影を行うにはスチルとは異なったアプローチが必要となるため、各社からリグが製品化された。これは、三脚ネジ穴が前後バランスの中心にないため、動画撮影で必要なカウンターバランスが取りにくいとか、RAWで記録するためにはレコーダーが必要になるなど、デジタル一眼を動画撮影やシネスタイルで撮影するにはそれに適した道具立てがないと撮影が困難になってしまうからだ。

また、スチル用のレンズを使うのかシネ用のレンズを使うのか、VF用にLCDモニターを使うかなど撮影の現場は様々だ。それによって三脚に載せるのか肩載せにするか状況に応じたリグが用意されることになったわけだ。

進むワイヤレス化、周辺機器の進化

さて、いずれにしてもカメラかレコーダーで収録するわけだが、最近モニターのワイヤレス化やレンズ周りのワイヤレス化が進んでいる。カメラが小型軽量化され、ステディカムや手持ち撮影が可能となり、カメラマン以外がモニターしたり、レンズ周りの操作を行うためにワイヤレス機器が必要になったからといえる。

こうした周辺機器は以前からあったものだが、最近ではWi-Fiを利用した製品が多くなってきている。その背景にはスマホやタブレットPCなどが標準でWi-Fiを搭載しており、こうした端末を利用しようというわけだ。

一方、画像伝送を行うにはそれなりの帯域と安定した伝送を確保しなくてはならないが、アナログ波では十分な送信出力がないと難しい。電波の有効利用という観点でアナログからデジタルへ、さらにはGHz帯へと進み、伝送方法もスペクトラム拡散などの技術を取り入れることで、省電力でも安定した伝送が可能となった。

無線による画像伝送システムには、3G/4G/LTEなど携帯電話のインフラを利用したものもある。携帯電話の回線はスマホなどの普及により高速化しており、こうした回線を画像伝送に利用した製品としてはTVUPackなどがあるが、パナソニックやソニーなどからも製品化され始めた。今までも携帯電話を送信端末として利用する製品はあったが、WiMAXやEMOBILEなど異なるキャリアをシームレスに切り替え、複数のキャリアを束ねてバンド幅を稼ぐ技術のほか、その時々に変化する回線状況に合わせて変わる帯域幅に応じて圧縮率をシームレスに可変する技術など、各社独自の方法を採用しているようだ。

こうした背景もあり、ここ数年のNABでは中継車(SNG車)やマイクロ伝送関連の製品は少なくなっている。とはいえ、他力本願となるこうした通信インフラ以外に確実に帯域を必要とする基地局同士の伝送や携帯が使えないような地域などもあり、いままでとは方向性のことなる製品やシステムになってきたようだ。

完璧な(理想的)伝送のインフラはまだ当分先のことだろうが、実現すればカメラ側に記録する必要はなくなり、クラウドで収録や編集、配信も行うという方向になるだろう。すでに特定の条件を満たせばこうしたことも可能になっている。収録は伝送や配信ができない容量や帯域、フォーマットに限られてしまうのかもしれない。

4Kは最近のトレンドだが、RAWでの記録やデジタル一眼で撮影する場合はレコーダーを使うのが一般的だ。AJAやBlackmagic Design、アストロデザインはすでにカメラメーカーとなってしまったが、FFV(Fast Forward Video)やATOMOS、Codex Digitalなどレコーダーを専門にしているメーカーもカメラメーカーとなる日が近いのかもしれない。また、オーディオメーカーであるSound Devicesからビデオレコーダーが製品化されており、今後も新規参入が見込まれる。

現状のワイヤレス化はリアルタイムを指向しているが、レコーダーからワイヤレスで素材を伝送するということも考えられる。すでに編集などの後処理系がクラウドベースになりつつあり、今年あたりから制作全体のワークフローも大きく変わる節目といえるだろう。

Panasonic

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パナソニックはタフパッドとの組み合わせにより、4G/LTE、Wi-Fiを統合した通信環境を実現したクラウドベースのニュース制作システムを出展。EDLやAVC-Intra、AVC-LongG、AVC-Proxyの伝送を可能とすることで、様々なワークフローに対応

ARRI

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ARRIワイヤレスコンパクトユニットWCU-4。フォーカス、アイリス、ズームのコントロールが可能。レシーバーUMC-3/4やレンズモーターCLM-2/3/4などとの組み合わせでALEXAやARRICAMなどにセットできる。マーカーなど警告時にはLCD表示以外に振動による警告も可能となっており、操作に集中することができる

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ARRIユニバーサルモーターコントローラーUMC-4。ワイヤレスコンパクトユニットWCU-4やSXU-1、ZMU-3A、WZE-3との組み合わせが可能。ALEXA、AMIRAのほか様々なカメラに対応可能。また、超音波を利用した距離計UDM-1との組み合わせで被写界深度やフォーカストラッキングにも対応できる

Sony

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ソニーXDCAMメモリーカムコーダーPXW-X180。同梱のワイヤレスLANモジュールを使用することでワイヤレスLAN接続が可能。NFC(近距離無線通信)にも対応しており、スマホやタブレットPCから撮影前のアングル確認や録画中のモニタリング、画角設定、ホワイトバランス調整、アイリス調整などを行うことが可能。また、撮影後のファイル転送にも対応している

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ソニーワイヤレスアダプターCBK-WA100。プロキシファイル記録やファイル転送、モバイル端末でのビューイングやコントロールが可能なほか、Wi-Fi接続したスマホやタブレット端末ライブ映像のビューイングやプロキシファイルのプレビュー、ファイルの転送指示、カムコーダーのコントロールなどを行うことが可能

Switronix

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Switronixワイヤレス送受信システムREC5シリーズ。Vマウントやアントンバウアーのマウントが前後に装備されており、カメラとバッテリーの間に装着して使用することが可能。DFSに対応した5GHz帯のワイヤレスシステムで、最大約150mの距離で伝送可能

RED Digital Cinema

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RED Digital CinemaワイヤレスモータードライブシステムRED W.M.D。レンズのフォーカスやアイリス、ズームなどをコントロールすることが可能なほか、レンズ情報をR3Dメタデーターとして記録することができる

LiveU

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LiveUの無線伝送システム。左からLU40、LU500、LU400。携帯各社、WiMAX、Wi-Fiなど複数のキャリアを同時使用することで安定した伝送を実現している。PC上で動作するソフトウェアベースのLU-Liteシリーズなどもあり、こうした伝送システムの草分け的存在だ

Streambox

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Streambox 4K。ソフトウェアーエンコーダー/デコーダー。Advanced Compression Technology-Level 3コーデックを採用しており、低遅延かつ4~40Mbpsという転送レートで4096×2160の4K伝送が可能

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Streambox Avenir Mini 2。3G/4G/LTEやWi-Fiに対応した伝送システム。カメラに装着してストリーミング配信やレコーディング、アップロードが可能。約2秒で起動でき、タブレットPCやスマートフォンのWebブラウザからの設定もできる。インマルサットBGAN端末での伝送にも対応可能

Shining Technology

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Shining TechnologyはDVカメラの時代にCitiDISKというレコーダーを開発。現在はHDV対応の製品やCFメモリーカードへ記録するレコーダーなどを販売している。今回のNABではトライアックス伝送装置MCOTTやSCOTTのほかワイヤレス伝送装置SVUを出展していた

ANDRASYSTEM

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ANDRASYSTEMモーションフォーカスシステム。被写体にセンサーを仕込むことで正確なフォーカスを行うことが可能。マニュアル操作では追い切れないような動きでも正確なフォーカスを行うことが可能なほか、複数のプリセットもできるので決められた位置へワンタッチでフォーカスすることができる。モーションキャプチャーとリモートフォローフォーカスを統合したようなフォーカスシステム

LANCERLINK

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5GHz帯を使用した超小型低遅延のHD無線伝送装置LANCERLINK SKYWAVEソラリスWHD-SLR600。最大350mまで伝送可能で、日本国内向けDFSに対応している。マルチコプターなどに搭載しての画像伝送などでも安定した伝送が可能

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LANCERLINK SKYWAVE Naked WHD-NKD14。HDMI入力に対応した小型画像伝送システム。送信機は約20gで、0.1秒以下(2フレーム以下)の低遅延を実現。最大伝送距離は約30m

Teradek

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iOSアプリによりモニタリング可能な小型画像伝送システムCLiP。Wi-Fiや3G/4Gなどを利用し、最大3Mbpsの転送レートを実現。伝送距離は最大約100mで、720p/30fpsの画像伝送ができる

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Teradekは写真のServのほか、Bolt ProシリーズやT-Rax、Cube Pro、TeraViewなどのワイヤレスシステムを出展。Servは2.4/5GHz Wi-Fiによる伝送システムで、低遅延伝送が可能なほか、スマホやタブレットPCでのモニタリングも可能。カメラへの装着はアントンバウアーまたはVマウントにより直接セットできるようになっている

ATOMOS

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ATOMOS SHOGUN。12G-SDI対応の4K対応レコーダーで、1920×1200の7インチLCDを搭載しているほか、波形モニター機能やモニターキャリブレーション機能などを搭載している。記録フォーマットは、Apple ProRes 4KのほかCinemaDNGやAvid DNxHD 422 10bitに対応。1920×1080のHDなら120fpsまでのハイスピード収録が可能

Sound Devices

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Sound Devices PIX 270i。64chのMADIおよびDante audio I/Oに対応。ビデオは3G-SDIにより12bit 4:4:4に対応しており、Apple ProResやAvid DNxHDコーデックによる記録が可能。36MB/sプロキシから330MB/sのProRes 4444まで対応可能。複数台の同期運転が可能で、マルチカメラ収録やプレーアウトに対応できる



txt:稲田出 構成:編集部


Vol.03 [After Beat NAB Show 2014] Vol.05