注目のComputer Animation Festival(SIGGRAPH2014)他が開催

SIGGRAPHは世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会である。第41回となるSIGGRAPH 2014が、8月10日から14日の5日間、カナダのバンクーバーコンベンションセンターで開催された。バンクーバーでのSIGGRAPHは、2011年に開催されて以来2度目となる。会場となったカンファレンス会場のそばには、冬期オリンピックの聖火台が設置保存されている。

今年11月に開催されるSIGGRAPH ASIA 2014は中国の深圳、来年のSIGGRAPH 2015はロサンゼルス、2015年冬のSIGGRAPH ASIA 2015は日本の神戸で開催されることが発表された。日本での開催は2009年のSIGGRAPH ASIAが横浜で開催されて以来であり、パワーアップした日本ならではの構成が期待される。

それでは、SIGGRAPH 2014の様子をお届けして行こう!

テクノロジーの力で社会貢献を:キーノートスピーチ

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今年のキーノートスピートはNot Impossible LabsのElliott Kotek氏であった。毎年SIGGRAPHのキーノートは、コンピュータグラフィックス直球の話題ではなく、SIGGRAPH参加者にとって何かインスピレーションを与えたり示唆を提示するようなスピーカーが選ばれる。

過去にはコンセプトアート作家、ゲーム作家、SF作家などのキーノートが行われた。今年のElliott Kotek氏は、テクノロジーの力を借りて、数々の社会貢献のプロジェクトを推し進める団体、Not Impossible Labsの代表の一人だ。有名なプロジェクトとしては、THE EYE-WRITERという眼の動きだけで、文字や絵画が描ける特殊な眼鏡を開発し、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気にかかってしまった著名なグラフィティ作家を手助けするものだ。

さらに現在進行中のProject DANIELという南スーダンでのプロジェクトが紹介された。戦争で手を失った子供達のための義手を3Dプリンタを活用して製作するというこのプロジェクトを例に、あなたにとってのDANIELは誰ですか?誰か一人を助け、そのことをオープンにすることによって、多くの人たちを助けることにつながるのですと、参加者の皆に問いかける講演であった。

CAF (Computer Animation Festival)

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SIGGRAPHの中でも特に人気のイベントはComputer Animation Festival(CAF)だ。その中でもよりすぐりの作品を毎夜2時間にわたって上映するイベントがElectronic Theaterだ。今年はElectronic Theaterの最後に、ディズニーの最新作、短編Feast(監督はPatrick Osborne氏)が上映されるというサプライズもあった。

Electronic Theaterの上映会場では、Christie Digital社製の最新デジタルプロジェクターCP4230(4K解像度、34,000ルーメン、2100:1コントラスト)、必要に応じて1台のプロジェクタ画面を上下に分けて立体視投影する RealD-XL が用いられた。

今年は、賞の部門が新設され、多岐にわたった分野で優秀賞が表彰された。477本の作品の中から100本あまりの作品が選出された。CAFの優秀賞は、アカデミー賞にノミネートされる。全部門にわたっての最優秀賞にあたるBest in Showも、今年は単なる映像作品ではなく、ロボットとプロジェクションマッピング的映像を利用した「Box」が受賞するなど、新しい潮流が見て取れる。

今回は、まず受賞作から紹介し、次回以降の記事で、デモシーンや学生作品からも紹介しよう。

■Best in Show(最優秀賞)

作品名:Box
監督:Tarik Abdel-Gawad, Bot & Dolly

ロボットアームと、3D映像が投影されたプロジェクションマッピング、それと俳優が完璧に同期した、ライブパフォーマンスの映像だ。映画撮影などに使うミリ単位のモーションコントロール可能なロボット企業Bot & Dollyと監督以下、多彩なメンバー達によるもの。

■Jury Award(審査員賞)

作品名:Paper World
監督:Dávid Ringeisen, László Ruska

紙で作られた森、鳥、昆虫、動物達を描いた、世界自然保護基金のための広告作品。

■Best Animated Short(短編アニメーション賞)

作品名:Home Sweet Home
監督:Pierre Clenet, Alejandro Diaz, Romain Mazenet, Stéphane Paccolat

擬人化された古い古い空き家の旅を描いた作品。VimeoのShowReelより一部閲覧できる。

■Best Student Project(学生プロジェクト賞)

作品名:Wrapped
監督名:Roman Kälin, Falko Paeper, Florian Wittmann

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予想外の自然の驚異が社会と衝突する様子を描いたもの。

■Best Visual Effects(視覚効果賞)

作品名:Gravity
監督名:Directed by Alfonso Cuarón, Esperanto Filmoj.(Framestone)

邦題ゼロ・グラビティのVFXが評価されたもの。映画中の映像の80%はコンピュータで作成されたもので、映像を映し出す映像パネルに囲まれて演技した俳優との映像合成の手法や、CG宇宙服の合成手法など。

■Best Visualization & Simulation(ビジュアリゼーション&シミュレーション賞)

作品名:Kinematics
監督名:Jessica Rosenkrantz, Jesse Louis-Rosenberg(Nervous System)

3Dプリントのための柔軟な構造をシミュレートしたものの可視化映像。稼働性のモジュールによりカスタマイズした形状の剛性を考慮した上で形が生成される。

■Best Game(ゲーム部門賞)

作品名:The Crew
監督名:Maxime Luère, Dominique Boidin, Rémi Kozyra(Unit Image)

ゲーム車好きに評価の高いネット対戦型のレースゲームの映像が評価された。レース映像を共有して楽しむというシステムも評価されている。

■Best Real-Time Graphics(リアルタイムグラフィックス賞)

作品名:RYSE: Son of Rome
監督名:Chris Evans, Peter Gornstein, Martin L’Heureux(Crytek)

文字や感情に焦点を当てた、Crytek社のリアルタイムゲーム映像。映像ストーリーと、インタラクティブに操作する部分とに別れて物語を進めていくタイプのゲームだが、通常プリレンダリング済みの動画映像もリアルタイムで描画され、インタラクティブ部分と描画違いがないアプローチで作られている。

■Best Commercial Advertisement(広告部門賞)

作品名:Three, “The Pony”
監督名:Dougal Wilson, Blink Productions(MPC)

本物そっくりに描かれたCGの子馬が、ムーンウォークをする広告映像。MPC独自のツールFurtilityが子馬のたてがみを描くのに用いられている。

txt: 安藤幸央 構成:編集部


[SIGGRAPH 2014] Vol.02