4Kカメラそろい踏み

ちょっと前まではデジタルシネマの領域だった4Kだが、すでにネットやイベント、CS放送などで運用が始まっており、今年のInterBEEでも対応したカメラが多数出展されている。この分野で先鞭をつけたRed Digital Cinemaを初めとして、ソニーやパナソニック、池上通信機、日立、JVCといったカメラメーカーのほかに、アストロデザインや朋栄、ブラックマジックデザイン、AJA、GoPro、ARRI、グラスバレーなども4Kカメラを出展しており、本格的な4K時代に入ったといえよう。特に今年は4096×2160というデジタルシネマ派生のレゾリューションから3840×2160というUltra HD(UHD)に対応したカメラが多く、各社4K放送を意識したものとなっている。

また、8Kによる放送もオリンピックという舞台が用意され、総務省からもロードマップが発表されたということもあり、以前からNHK技研と共同開発していたメーカーがカメラを出展している。すでに4Kは標準化が進んでいるものの8Kはまだ規格化が進んでいない面もあることから、試作あるいはクローズドでの利用を念頭にしたカメラとなっている。これも4K同様に技術的な規格が固まり次第各社から実践投入可能なカメラが発売されるだろう。4K/8Kばかりが目についてしまうが、HD対応のカメラも新製品として出展されている。これはHD初期に導入したカメラの更新であったり、ちょっと特殊な領域のカメラが中心となっているようだが、現行のHD放送を行う上で重要な部分であり、カメラマンなどユーザーから見てもっともシビアな目線で見られる部分でもある。

実用期に入ったといえる4Kのカメラは、各社とも特徴的な製品を展開している。たとえば、満を持して発表されたパナソニックのVARICAMは、センサー部分(カメラユニット)や記録部分を分離可能とし、2/3レンズマウントのHD対応VARICAM HSとPLマウントの4K対応モデルVARICAM 35という構成が可能となっている。現状のHDから4Kへのシームレスな移行と放送からデジタルシネマへの対応を両立させたカメラシステムといえよう。またBlackmagic URSAはレンズマウントとしてPLとEF対応のモデルを発売したほか、年明けにはB4マウントモデルも発売する。センサー部分はマウントとともにユーザー自身が交換可能としており、サードパーティーの参加も可能としている。これら2社は方向性は多少異なるものの、パーツやモジュールの交換によりユーザーがカメラをカスタマイズ可能とした面で注目される。

また、一方ではグラスバレーの4KカメラLDX UHDやAJAのCIONのように既存の肩乗せタイプのカメラの使い勝手や運用性にこだわった製品が登場。さらにはスーパー35mmサイズのセンサーを採用するのがトレンドとなったデジタルシネマ系カメラに対し、より大型の6Kセンサーを搭載したARRIの65mmシネマカメラALEXA 65など、多様化が進んできたといえる。

PRONEWS AWARD 2014 カメラ部門ノミネート製品

  • ソニー XDCAMメモリーカムコーダー PXW-FS7
  • パナソニック VARICAM 35
  • ブラックマジックデザイン Blackmagic URSA
  • AJA Video Systems 4Kプロダクションカメラ CION
  • 池上通信機 HC-HD300
  • ARRI デジタルシネマカメラ ALEXA 65

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2014 カメラ部門受賞製品発表

カメラ部門
ゴールド賞
VARICAM 35

パナソニック

AWARD2014_01_panasonic_VARICAM_gold

モジュール構成のカメラとすることで、カメラ部分の交換によりHDや4Kに対応することが可能となっており、HDと4Kの使い分けやHDから4Kへのステップアップを行うことが可能。記録フォーマットもAVC-ULTRAやProRes、V-RAWなど制作の現場に適したフォーマットが選択できるようになっている。自社のコーデックにこだわることなくそれぞれの現場に適した選択が行えるようになっており、V-RAW収録に関してはCodex Digital社との提携により非圧縮4K RAWレコーダーAU-VRAW-35を開発している。

現状のHDと4Kの両立性やそれぞれの現場に適したフォーマットを選択できるといったオープンな部分は今後HDや4Kさらには8Kといったレゾリューションを扱わなくてはならない状況を考えると重要な要素となるだろう。特に4Kや8Kは本放送へはまだ時間があるもののすでに試験放送が始まっており、先行投資を余儀なくされているのが現状で、そうした中でいかに機材を効率的に無駄なく使うかが課題といえよう。こうした現状を考慮しVARICAM 35に金賞を送りたい。

カメラ部門
シルバー賞
XDCAMメモリーカムコーダーPXW-FS7

ソニー

AWARD2014_01_sony_FS7_silver

ソニーはデジタルシネカメラとしてすでにCineAlta F65があり、長年映画業界で使われてきた。その後、PMW-F55が発売され、4Kもかなり身近になったといえるが、レンズなど周辺機器を考えるとそれなりの価格帯になっていた。PXW-FS7は同社のデジタル一眼αシリーズのレンズマウントを採用することで、4Kへのハードルを一気に下げたといえる。

特にいわゆる業務用クラスのユーザーにとってレンズ込みで100万ほどの価格は魅力といえよう。性能的にもISO感度2000、14stopのダイナミックレンジをもち、スロー/クイックモーション撮影にも対応している。記録フォーマットはXAVC、MPEG HD422のほか、オプションによりProRes422やRAWにも対応可能だ。またグリップアームとショルダーパッドを新開発することで、より機動性の高い柔軟な撮影スタイルを選択することが可能となっている。また、キャッシュRECやWi-Fiリモートといった機能の搭載や拡張ユニットによるマルチカメラオペレーションへの対応も評価したい。

総括

HDによる放送も一般化し、制作ワークフローもようやく落ち着いたところで、4K8Kが将来的な放送フォーマットとして割り込んできた。地上波はともかくCSなど衛星放送系はすでに4K放送を始めていることから、4K8Kによる制作はすでに必須となりつつある。そうした現状からHDと4Kを記録系を含めてカメラとしてどうまとめているかが、今回のポイントとし、システムとしての拡張性や先進性、性能機能、コストパフォーマンスなどを考慮した。

また、デジタルシネマ系の4KとUHDの4Kへの対応やダイナミックレンジなどレゾリューション的な対応や色域なども加味して選択基準としている。 パナソニックVARICAM 35は、放送からデジタルシネマの架け橋となるカメラといえ、従来フィルムで撮影していたドラマなどの収録から放送用途の制作用カメラとして。また、カメラモジュールやRAW記録対応のレコーダーによりデジタルシネマでの活用も可能としたところが大きい。 一方ソニーのPXW-FS7は価格的にはアフォーダブルのデジタルシネマのレンジながらオプションにより様々な撮影スタイルに柔軟に対応することが可能という部分に注目した。


Vol.00 [PRONEWS AWARD 2014] Vol.02