txt:西村真里子 / 編集部  構成:編集部

世界中のスタートアップが目指す場所でもあるSXSW

SXSWはTwitterやLeap Motionがブレイクした場として世界中のスタートアップが目指す場所となっている。セッションも新しいアイディアを得たり、プロジェクトや会社をスタートするために相応しい内容が多い。その中でもグーグルの研究部門「Google X」プロジェクトディレクターのAstro Teller氏のセッションがスタートアップ企業に対しての心強いエールを送ってくれた。「失敗を恐れずに突き進むべし」。

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セッション内容は、グラフィックレコーディングされるのがSXSWセッションの特徴。当ボードはAstro氏セッションのレポートである

Google Glassや無人カープロジェクトなど、市場が驚く新しいプロジェクトを指揮するAstro氏。技術の進化スピードに負けずにプロジェクトを打ち出していくことにより技術進化と生活が結びつくと語る彼は「失敗を恐れずにチャレンジすることにより進化は加速する」という。Astro氏の言葉はチャレンジし続けるモチベーション高きスタートアップのみんなに大きな勇気を与えてくれる。立見も出るほどの満席御礼の人気セッションになる理由もうなずける。

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新しいチャレンジの場として相応しいSXSWだが、スタートアップの登竜門である「アクセラレーター」プログラムに今年は日本人初ファイナリストまで残ったSIX Inc.のLyric SpeakerがBootstrap賞を受賞した。iTunesなどから音楽を一曲単位で購入できるようになり、音楽を気軽に入手できるような世の中にはなったが、失ってしまったものもある。それは歌詞および歌詞カード。かつてのCDアルバムには歌詞カードがついており楽曲を楽しむとともに歌詞にも心動かされた体験があった。そのエモーションをデジタル時代に再現させるべく生まれたLyric Speakerは音楽フェスから始まったSXSWでも評価を得た結果がファイナリストまで残り受賞するという素晴らしい結果に結びついたのだろう。

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「アクセラレーター」プログラムでプレゼンを行うSixチーム

企業のリブランディングの場としてのSXSW

「アクセラレーター」プログラムと同様、世界中のVCやメディアに注目されるのに最適な展示会場でも日本のスタートアップブースが一番盛り上がっていたと言われるほど日本勢が元気があった。ウェアラブル、ロボット、ドローン、センサー技術をベースとしたIoT関連のユニークなプロダクトがたくさん紹介されていた日本ブースだが、筆者が注目したのはスタートアップに混ざって展示をしている大企業の存在である。

■富士通「KAMPO ME!」
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デジタルのチカラで漢方の処方を標準化し、誰でも利用しやすいようにと生み出された「KAMPO ME!」は富士通と北里大学が共同で研究しているプロジェクトである。富士通が持つセンサー技術を活用し、全身や脈拍測定を行い最適な漢方処方を施してくれるサービスだ。オーガニックやマクロビティックなどが早く健康志向が高まる米国の人にとても受けていたブースであるが、「富士通」ロゴよりもプロダクトそのものを紹介していたのが印象的だった。

■SONY「MESH project」
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昨年サンフランシスコで開催されたMaker Fairでも発表されていた電子ブロックMESHも展示されていた。MESHは各ブロックがLEDライト、モーションセンサー、マイク等の機能を持っていてユーザーの好みにあわせてブロックをつなげていくことができるのだが、SXSW展示ブースでは東京大学教授が顧問を務める電子回路技術AgICと組んで出展していた。ブロックを電子回路パネル上に移動させると自分が設定した通りの音が鳴るというデモをしていたのだが、ブース内にはSONY名を出さずにプロダクト、技術そのもので勝負していた。ものづくりに自信がある会社だからこそできる潔さである。

■DMM.makeブース
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PRONEWSではLiveWedgeで御馴染みのCerevo岩佐氏が紹介するウェアラブル スノボデバイス XON SNOW-1を筆頭に、展示会場入口すぐの大きなブースを確保していたのはDMM.makeブースである。男性向け動画ブランドで、女性からするとちょっぴり企業名をいうのが恥ずかしい、と感じた時代は過ぎ、DMMはいまやメーカー支援の時代を先導する企業へと生まれ変わっている。LEDパネル付ヘルメットがいきなり会場でウェルカムしてくれるインパクトは大きく「Wired Japan」とおもわず言いたくなってしまう。インパクトと技術力を武器に複数社が参加したDMM.makeブースは日本のものづくりを支援する企業ブースとしてSXSWで大きな存在感を示していた。

展示ブースにおいてはプロトタイプ状態で、今後のマネタイズについては詳細決められてないものもあった。だが、まずはSXSWにチャレンジし世界の声を聞いたということが大きなアドバンテージとなるだろう。今後も失敗を恐れずに大胆にチャレンジするスタートアップが増えることを筆者は大いに期待する。

txt: 西村真里子 / 編集部  構成:編集部


Vol.02 [SXSW2015] Vol.04