本格的なTVドラマ、ドキュメンタリーの現場に合わせたVARICAM LTの堅牢かつユニークな仕様

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VARICAM LTは、コンパクトな筐体の中にハイエンド向けシネマカメラであるVARICAM 35の機能を踏襲しつつも、TVドラマや本格ドキュメンタリー制作にも利用出来る多彩な新しい技術が盛り込まれているのが大きな特長だ。また、過酷な現場で威力を発揮するであろうマグネシウム合金製の堅牢なボディ設計と、ON/OFFが明確なディップスイッチ等、随所にプロの過酷な現場での操作性を意識した設計がなされている。さらにカメラ内部以上に、カメラ周辺部へのこだわりも強いデザインは発表時にも多くのユーザーからも注目されていた。ここではその魅力をVARICAM LTテクニカルトピックとしていくつか紹介しよう。

交換式レンズマウント

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最も特徴的なのはレンズマウント部分だ。業務用としてパナソニック初のEFレンズマウントがベースになっており、オプションのPLマウントアダプターを購入すれば、工場やサポートセンターへ持ち込まなくてもユーザー自らがマウント交換可能なのも、このVARICAM LTの大きな魅力となっている。オプションとなるPLレンズマウントモジュール(AU-VMPL1G/希望小売価格税抜195,000円)への実際の交換作業は、マウント部横の2点の微細な穴のビスを精密機械用のドライバーで緩めて、下部のリング部分が回転してレンズマウントが脱着可能になる。

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面白いのはレンズマウント部を外した状態で、MOSセンサー部の前に通常はブルーのIRカットフィルター(赤外線カットフィルター)が装着されているが、これをIR撮影用のフィルター(クリア)に交換すれば、昼夜逆転した、いわゆるネガフィルムのような不思議な雰囲気を持つ赤外線写真のような映像撮影が可能だという。ドキュメンタリーのネイチャーものなどで使用されれば新しい表現ができるのでないだろうか?VARICAM 35で採用されたセンサーはISO800/5000のデュアルネイティブISOにより、非常に優秀な感度特性があるが、これとIR撮影用フィルターを併用使用する事で、非常にダイナミックレンジの広いなかで、赤外線写真風のユニークなコンテンツが出来ると期待されている。またこうした撮影の際にも、豊富なレンズバリエーションを持つEFレンズ群との組み合わせは面白い。

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コントロールパネルと操作ボタン、出力端子

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カメラ付属の専用コントロールパネルもデザインは若干違うが、内容はVARICAM 35のものと同一だ。裏側のケーブル部分のみ35は脱着式だったのに対して、LTでは直づけ式になっている。

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右側面には操作系ボタンが配置されシンプルで分かりやすい設計だ。後方にはメモリーカードスロットがあり、expressP2カード、SDカードスロットがそれぞれ1枚ずつの挿入口がある。カメラ筐体右側後部には各種出力端子が装備されており、概要は写真の通り。ワイヤレスユニット(USB式)が装着出来るようになっている。そしてこのVARICAM LTはもちろん4K収録可能なカメラではあるが、3G-SDI等の4K外部出力はない。

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実際に今の4K撮影減の多くでも、実際に4Kモニターでの確認は出来ない状況は多く、オンセットのDITなどがあるような大掛かりなシネマやCM撮影以外で必要とされるケースは少ない。特にTVドラマやドキュメンタリーの現場では機動性の面でも負荷となるわけで、こうした余計な部分を削ぎ落としたことで、価格面や機動性を追求したモデルになっているのは、実際の現場を良く研究されている証拠で、非常に好感が持てるところだ。

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大口径Φ38mmの有機ELビューファインダー

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OLEDのEVFもVARICAM 35から踏襲されたもの。別売のオプション(AU-VCVF10G/希望小売価格税抜800,000円)になるが、内部構造はVARICAM 35に付けられていたものと全く同じで、光学ズームとそのために独自開発のリンク機構を採用し、ズーム時の視度変化を無くしている。VARICAM 35のものと違うのはコネクト部で、カメラ側にはVF-SDIという端子が備えられ、ここからHD-SDIの出力が得られる。つまり安価なサードパーティのEVFや小型HDモニターもここから出力を得られるようになっており、このようなサードパーティ製品使用時の場合も想定されているのはこのVARICAM LTの非常にユニークな部分だろう。

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グリップ&ショルダーマウント

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ショルダー使用した際に便利な操作用グリップモジュール(AU-VGRP1G/希望小売価格税抜185,000円)も今回新たにオプションで用意された。他社製品に比べてユニークなのはハンドル部の伸縮ができ、先端部から伝送系も伸縮を考えたカールコードで接続されていること。グリップの先端部にもアサインボタンが設けられる等、細かい配慮が施されている。ショルダーマウントモジュールも、VARICAM 35の時に発売されたAU-VSHL1G(希望小売価格税抜250,000円)も利用出来るが、グリップ使用時に便利な専用形状のAU-VSHL2G(希望小売価格税抜225,000円)が新たにラインナップされた。

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4Kコンテンツのモニタリング

4KのデータはAVC-Intraで記録されるが、一つ問題になるのは、やはりそのコンテンツの簡易的な再生環境だろう。大掛かりなポスト作業が発生しない現場ではPCやMac等であまりフォーマットの知識が無いスタッフの間でプレビュー画像を見たいという要求は、ローエンドになればなるほど高く、その仕様は簡単かつシンプルなものが求められる。ProRes→QuickTime→mp4などがもてはやされた理由はそういうこともあるだろう。TVやドキュメンタリーの現場ではなおさらである。このAVC-IntraのムービーをPC上で簡易的に見るには、P2 Viewer Plus Ver.2.3(AVC-Intra 422対応)が用意されている。Windows版/Mac版が用意されており、同社のサイトから無償ダウンロード可能だ。

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本体背面
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更に新たなVer2.3からはDPXへの変換機能が追加された。AVC-Intra 4K 444/422/LT、AVC-Intra2K 444/422、AVC-Intra444/422クリップの任意に登録したIN/OUT点の範囲内、もしくは選択したクリップ全体をDPXデータとして書き出しが可能で、ラップトップPC等での簡易カラーコレクション等へも便利な訴求だ(※AVC-Intra 2K LTとAVC-Intra LTは将来対応予定)。

txt:石川幸宏 / 編集部 構成:編集部


Vol.01 [Digital Cinema Bülow IV] Vol.03