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[SXSW2017]Vol.03 しのぎを削るビデオオンデマンド業界で、進化するNetflix

2017-03-28 掲載

txt:久喜里美(Gengo) 構成:編集部

SXSWで揃い踏みした、ビデオオンデマンドの雄たち

今回のSXSWでは、ビデオオンデマンドサービス(以下:ODTV)の各社が、それぞれ積極的に参加している姿が見られた。AmazonプライムやHuluは、自社製作のテレビシリーズをアピールするための企画を、会場であるAustinダウンタウンで積極的に行った。今回は数あるSXSWのプログラムの中でも盛況を得た、NetflixのUIを改善するために行っているA/Bテストに関するセッションを紹介したい。

Netflixのデータドリブンなデザイン

スピーカーはNetflixの現役リードプロダクトデザイナーNavin Iyengar氏

UI/UXの現場でよく使われる、A/Bテストというものがある。複数のデザインを用意し、どちらの方がより目標に向かって効果的なパフォーマンスを発揮したかを測定する、つまり人間の思い込みを排除した、結果が全てのガチンコ勝負方式のテスト方法だ。NetflixはこのA/Bテストを戦略的なレベルで使用して、ユーザーに提供する体験の改善を日々行っていることで知られる。このセッションでは、何千万人ものNetflixメンバーのA/Bテストの結果による考察が紹介された。

自分が望んでるものを知っているか?

私自身もそうだったのだが、どのODTVサービスプロバイダへ加入するかを決める時に、人々はHulu、AmazonプライムなどとNetflixを天秤にかけて、どのサービスが自分にとってベストな選択なのかを吟味する。この表はNetflixにサインアップする前に、皆が何をもっと知りたかったかの割合を示した表である。

グラフを大きく占める赤い部分は、Netflixで視聴できる作品タイトルに関する情報である。実際にサービスを利用している人はご存知だと思うが、Netflixのアカウントを持っていない状態で表示されるwebサイトでは、実際に何が視聴できるのかの情報がほぼ一切無い。

Netflixはさまざまなローカリゼーションを行っているが、この点に関してはどの国に向けても全く同じ方針を取っている。

これは現在日本で表示されるページだが、背景にうっすらと人気タイトルが見えるだけで、この画像以外の作品タイトルに関する情報は一切見つけることができない

普通であれば、どのサービスがより自分が見たいタイトルを持っているかが、加入を決める大きな一因になるだろう。実際、筆者もサービスの加入前に、作品タイトルの一覧が見られないことに憤ったことがある。Netflixがどんなタイトルを扱っているかの一覧を開示している外部のwebサイトもあるにはあるのだが、公式ではないのでもちろん最新の情報ではない。ましてや日本での提供タイトルなど見つけられるはずもない。なんて不親切な設計なんだ、作品タイトルの一覧をはっきりと見せればいいのに、と正直にいうと当時は思ったことがある。しかし、スピーカーのNavin氏によると、これはNetflixに入社してくるデザイナー誰しもが入社当時に思っていることだという。

もちろん、このような一見不親切に見える設計も、A/Bテストにおけるユーザーの行動の結果によって決定されたものだ。左のデザイン案は、現状のものと同じくホームページ下部の情報をサービスの概要紹介。つまり申し込み方法や異なるデバイスで楽しめること、料金プランについての情報に留めたもの。右のデザイン案は、会員向けのページのように、視聴できる作品のタイトルの一覧を紹介したものである。

驚くべきことに、左の案の方がはるかに高いサインアップ数を稼いだのである。作品タイトルを見せるとユーザーの興味がそちらに奪われてしまい、サービス自体の情報が伝わりにくくなってしまったのである。

科学者のようにデザインする

A/Bテストのためにランダムに何千万人もいるユーザーをピックアップし、それぞれに全く違うUIを見せてテストを行う。ストリーミング時間や継続率などの重要指標の中で仮説を立て、その仮説に基づいた複数案をトラッキングし、優った仮説同士でさらにテストを行う。このようなテストはサービスのいたるところで行われており、現在表示されるコンテンツは全てテスト結果の勝者なのである。

このような作品紹介イメージも、再生数のパフォーマンスを元に測定したA/Bテストの結果である。タイトルの検索から概要、実際の再生画面までをシームレスに繋げる、余計な要素を極力排除した、ビジュアル主体のコンセプトがテストの勝者になった。また、作品のメインビジュアルにいたるまで、どれが最良の結果を出したのかに基づいて決定されている。

人間は答えを知らない

人々はこういったものを求めている、こんなコンテンツなら人気が出る――こういった考えは人間の直感を元に作られた仮説である。CEOや製品責任者からのリクエストは、彼らの思い込みであり、それは人間が実際に行う結果とは違ったものかもしれない。ターゲットの視聴者に関して市場調査を行っても、彼らが何を欲しているか、彼ら自身は本当に知っているのだろうか?Netflixが紹介してくれたこれら事例では、映像の視聴者の思考とは離れた彼らの実際の行動を暴き出した。

アメリカでは、完全に映像コンテンツの主戦場と化したODTVの世界。オンラインで提供されるサービス上では、テレビや映画の配信環境ではなかなか実現できなかった、このような度重なるテストと結果の反映が、ユーザーの体験全体を通して行うことができるようになった。

さまざまなデータ分析に基づくアプローチで、配信サービスや映像コンテンツを製作、改善していく動きは、今後ますます加速していくだろう。一視聴者としては、自分が考えるよりも自分が望むものが提供される、なんとも至れり尽くせりな視聴環境に興味津々である。

txt:久喜里美(Gengo)  構成:編集部
Vol.02 [SXSW2017] Vol.04

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[ DATE : 2017-03-28 ]
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