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カラーからVFXまで、話題のツールを徹底紹介

NAB Show 2018でもっとも話題になった発表といえば、Blackmagic DesignのDaVinci Resolve 15が挙げられるのではないだろうか。ビジュアルエフェクトのFusionをDaVinci Resolveに統合することで、オフライン、オンライン編集、カラーコレクション、オーディオポストプロダクション、ビジュアルエフェクト機能を1本のツールで実現。ここまで幅広くカバーできるツールは今まで存在しなかったのだから、話題にならないはずがない。

改めてDaVinci Resolve 15とはどのようなソフトなのか?新しく追加されたFusionとはどのようなツールなのか?クリエイターはDaVinci Resolve 15に何を期待し、どのように活用しようとしているのか?DaVinci Resolve 15に関する最新動向をまとめてみた。

■特集:inside DaVinci 15

正式リリースは7月、8月あたりを予定

史上最大のアップデートを実現したと言われるDaVinci Resolve 15。今バージョンでも様々な機能を搭載したが、一体何が目玉なのか?Blackmagic Designのテクニカルサポートマネージャー、岡野太郎氏に話を聞いてみた。

――DaVinci Resolve 15の正式リリースのスケジュールを教えてください

4月9日にパブリックベータ1の提供を開始しまして、ほぼ2週間ごとに新バージョンをリリース中です。正式リリースは7月、8月あたりを予定しています。現在は、少しずつバグフィックスや新機能を追加して、ソフトウェアの安定化を図っている最中です。ちなみに、DaVinci Resolve 14ではパブリックベータ9まで公開しました。

Fusionを搭載したDaVinci Resolve 15

――改めて史上最大規模の映像編集ソリューションと言われていますDaVinci Resolve 15のご紹介をお願いします

DaVinci Resolveは、バージョンアップを毎年繰り返すごとに大きな変更が加わっています。一言では言い表せないソフトに生まれ変わっています。当初はカラーグレーディングのツールでしたが、2009年にBlackmagic Designが買収後、編集機能を追加しました。2017年にはFairlightと呼ばれるMAを搭載し、2018年はVFXと合成のFusionを搭載しました。編集、VFX、カラー、オーディオを1本で対応できるアプリケーションが誕生したわけです。

弊社CEOのグラント・ペティも「今回の15になって、誰も全貌が掴めないソフトになった」と言っています。弊社の中でもDaVinci Resolve 15のすべての機能を隅から隅まで説明できる人は一人もいないでしょう。世界中にもまれな巨大なソフトが誕生したと思います。おそらく100人いれば100通りのDaVinci Resolveの使い方があるのではないかと考えています。

ただしDaVinci Resolveの中で機能が統合されているとはいっても、けっして画一的なソフトを目指しているわけではありません。それぞれのページには個性があります。カラーグレーディングのページはカラリストが使いやすいようにできていますし、Editのページはエディターが作業しやすいように設計されています。重要なことは、それぞれのページが確固たる個性を保ちながらも、一つのタイムラインや一つのプロジェクトを共有していることです。そうすることでそれぞれのスペシャリストが円滑に協力し合いながら作業することもできますし、一人で様々な分野の仕事を短時間で進めることもできます。

DaVinci Resolve 15のワークフロー。編集、VFX、カラーグレーディング、MAを1本のソフトで実現できる

――すべての映像制作ツールが1本にまとまることによって、どのようなメリットがありますか

これまでは、DaVinci Resolveと他の編集ソフトを併用して、ラウンドトリップと呼ばれるワークフローを実現するのが一般的でしたが、エフェクトがついてこなかったりタイムコードがずれるなど、トラブルに悩まされることがありました。しかし最近では、レンダリングやコンフォームの手間を省きたいという理由で、DaVinci Resolveの編集機能を使うという方が増えています。

数年前までのEditページは機能が不足していまいしたが、DaVinci Resolve 15では他の編集ソフトに勝るとも劣らない、エディターが必要とするツールを搭載しています。多くのお客様からのフィードバックをいただくことにより、ようやくですが痒いところに手の届く編集ソフトに成長しました。

DaVinci Resolve 15は、RAWフォーマットを含む様々なファイルフォーマットに対応しております。DaVinci Resolveのカラーページを使いたいけれども時間をかけたくないという場合や、編集作業に時間をかけたくないという方は、DaVinci Resolve 15のエディターとカラーのページの併用をお勧めします。

DaVinci Resolve 12.5の頃のワークフロー。他の編集ソフトを使う場合は、コンフォームやレンダリングなどに手間がかかる

DaVinci Resolve 15を使ったワークフロー。1本のソフト内で完結できるので、コンフォームやレンダリングの悩みを最小限に抑えることができる

ビジュアルエフェクトやモーショングラフィックツールのFusionをDaVinci Resolveに搭載

――DaVinci Resolve 15に新しく取り込まれたFusionとはどのようなツールですか

Fusionとは、30年近く映画やテレビ番組などに使用されてきた歴史を持つ合成ソフトウェアであるDigitalFusionがベースになっています。DaVinci Resolve 14までは、Fusionと連携を実現するためにFusion Connectという機能を搭載していましたが、連携のためにレンダリングが必要で時間がかかり、実用に不向きだったのが実情です。しかし、DaVinci Resolve 15からはFusionを統合しまして、ページをまたぐだけで変更ができるようになりました。どのページでもタイムラインが共有されているので、プレイヘッドの位置にあるクリップをそのままFusionで見ることができます。

After Effectsのようなレイヤー構造のツールは素材をレイヤーの上に乗せて合成を行うが、Fusionの場合はノードベースのインターフェースを採用している

――Fusionには合成、ペイント、パーティクル、タイトルアニメーションなどの作業が可能な約250種類のツールが搭載されていますが、そのすべてがDaVinci Resolve 15に搭載されるのでしょうか

FusionのほぼすべてのツールがDaVinci Resolve 15に搭載されますが、ライセンスの関係で、Primatte KeyerだけはDaVinci Resolveには搭載されません。Primatte Keyerを使いたいという場合は、Fusionの単体版を導入することでお使いいただけます。また、FusionにはオリジナルのキーヤーとしてDelta Keyerが搭載されており、DaVinci Resolve 15にも搭載されています。Delta Keyerは最新のテクノロジーを使用したクロマキーで、豊富なパラメーターを搭載しており、大抵のものは抜くことが可能なプラグインです。

――DaVinci Resolve 15への統合によって、Fusionの単体パッケージはどのようになりますか

Fusionの単体パッケージは、今後も引き続き発売を継続します。Fusionは、すでにDaVinci Resolve 15に取り込まれていますが、パフォーマンスなどの細かい点でまだ改善が必要です。たとえばこれまでのFusionはApple MetalやCUDAに一切対応しておりませんでしたので、250種類のツールを一つひとつ、DaVinci ResolveのサポートしているGPUフレームワークに最適化させる必要があります。完全移行までには最大で1年はかかることが予想されています。おそらくベータが取れて正式版がリリースされた後もFusionの修正作業や最適化作業は続く予定です。

エディターやカラリストたちの要望に応える新機能や改良を100種類実現

――DaVinci Resolve 15では300種類ほどの新機能の追加や既存機能の改善が実施されましたが、その中でも何が特長となりますか?

新機能の中ではEditページやカラーページにも合わせて100種類ほどのアップデート項目が含まれます。カラーページには「LUTブラウザ」と呼ばれる新機能が搭載されました。これまでのDaVinci Resolveは、LUTを当てる際はフォルダーメニューから一つひとつ選択して確認が必要でした。DaVinci Resolve 15ではLUTブラウザが搭載され、さまざまなLUTを一度に比較しながらすばやく実行可能になりました。

最大16画面同時にいろんなLUTを適用した結果を比較することが可能

――EditページはDaVinci Resolve 15でどのように改善されましたか?

DaVinci Resolveではこれまで「テロップが弱い」と言われてきましたが、Fusionのテキスト用ツール「Text+」がEditページで使用可能になりました。何重にも縁をつける日本人好みのテロップや、日本語の縦書きもできるようになりました。

また「Fusion Titles」というアニメーションつきのテキストプリセットを新たに搭載しました。中の文字や色、タイミングなどを変えられるテンプレートが30種類ぐらい用意されています。テンプレートは新たに自分で作成して、いつでも取り出せる状態にすることもできます。

Fairlightに関しては、FairlightFXと呼ばれる標準搭載のエフェクトが無償版にも搭載されるようになりました。これまでもVSTプラグインやAUエフェクトには対応していましたが、ユーザーがプラグインを用意してインストールしないと使えませんでした。DaVinci Resolve 15からは、14種類のFairlightFXが最初から搭載されていまして、これらのプラグインは無償版でも使うことができます。

その中には、ノイズを除去したり人の声だけを抽出したりすることができる「Noise Reduction」、大きな空間の中での反響を再現できる「Reverb」、電源環境などに依存するハムノイズを消す「De-Hummer」、クリップごとにハイパスフィルター、EQ、コンプレッサーを適用できる「Vocal Channel」などが含まれます。どれも市販の有償プラグインに負けず劣らずパワフルですのでぜひ一度試してください。

――DaVinci Resolveの無償版と税別33,980円のStudio版の違いを教えてください

Studio版はアクティベーションライセンスで、フルにDaVinci Resolveの機能を2台のPCで使うことができます。現場ではラップトップやMacBook、自宅ではWindowsの高速なPCを使った場合や、一人で2台のPCを使う方も多いために、2台分のラインセンスを提供しています。

また、Studio版にはResolveFXと呼ばれる50種類の機能を搭載したエフェクトツールセットや優秀なノイズリダクションが搭載されています。他のソフトウェアではプラグインを単体で購入する方も多いと思いますが、Studio版のResolveFXは単体で販売されているプラグインに匹敵する機能を持っいます。

そのため、ResolveFXの機能を使いたいために、Studio版を購入する方もいらっしゃいます。たとえば新しく追加されたResolveFXとして、フリッカー除去のための「Deflicker」という機能があります。カメラの設定を間違えたり、照明がおかしくてフリッカーに悩まされる場合に、フリッカーの除去ができます。

――最後に他社と比較した際の優位性なども含めてご紹介をお願いします

DaVinci Resolveは約200種類にもおよぶ充実したコーデックへの対応も特長としています。DaVinci Resolve 15では、新たにCanon RAWとPanasonic VARICAM RAWに対応しました。特にCanon RAW Lightはご要望の高かったコーデックです。また、Netflix用のIMFパッケージでの書き出しや、映画祭に出展する際に必須のDCPにもネイティブ対応しました。

DaVinci Resolve 15は過去最大のアップデートで、史上最大規模のアプリケーションに進化しました。アプリケーションが巨大になったために、「レスポンスが悪いのでは」と思われる方もいらっしゃるようです。しかしDaVinci Resolve 15は、全体的な再生パフォーマンスやレスポンスも改善されており、一世代前のPCや最小限のスペックのラップトップでも動作は可能です。DaVinci Resolve 15は無償でダウンロードできますので、まだ試したことのない人はこの機会にぜひお試しいただければと思います。

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[inside DaVinci 15] Vol.02