txt・構成:Tom INOKAWA / 編集部

SXSWとは、そもそも何なのか?

SXSW2019(The South by Southwest:サウス・バイ・サウスウエスト)が今年も3月8日より2週間にわたり開催された。SXSWは、テキサス州オースティンで開催されるイベントである。「Interactive」「Film」「Music」と3つのカテゴリーを中心に1000を超えるセッションや展示会から構成されている。メイン会場はオースティン・コンベンションセンターだが、年々規模は拡大し周辺のホテルや公共施設も会場となり、市街のホテルや店舗を巻き込んでの開催で、関係ない市民でも参加してしまう街を挙げての一大イベントとなっている。

コンベンションセンターを中心に街中の施設が会場に早変わり

元々は、オースティンで活躍するとある音楽マネージャーの呼びかけで始まったこのイベントは、1986年に地元の音楽関係者が開催したインディー音楽の見本市がその起源となり、1994年「Multimedia(Interactive)」、「Film」部門が設置された。現在のイベント形態が確立されたのは、Interactive部門が設置された1998年頃。またSXSWの由来は、映画「North by Northwest」(北北西に進路を取れ)に由来している。

名称の由来となったヒッチコック監督の映画「North by Northwest」

SXSWとは何かを形容しがたい。二度と同じ時は来ない。変わり続けるSXSW

SXSWも最近では日本においてもその知名度は知られるようになった。しかし依然として全体像が見えない知る人ぞ知るイベントであることは間違いない。日本ではテクノロジーやスタートアップ向けのイベントだと伝えられることが多い。実際に日本からの参加者の90%は、「Interactive」に関する参加者ばかりだ。しかしそれはほんの一部でしかない。断じてテックイベントではないのだ。PRONEWSの文脈で言えば、アメリカを代表する映画祭に他ならないのだが、その全貌を把握することは一概には難しい。

SXSWのカテゴリーである「Interactive」「Film」「Music」と、それを加速するようにここ数年は、さらに「Convergence(コンバージェンス)」プログラムが追加された。これによりカテゴリの垣根はなく、横断的に全てのセッションに参加可能となる。別の分野から一緒に議論して、もっと面白いことを起こそうという考えたに基づいている。ビジネスカンファレンスでありながら、MusicやFilmなどのカルチャー的な文脈も取り入れたセッションやカンファレンスなどは、世界でも類を見ないイベントであり、年々成長を続けていることは言うまでもない。

SXSW参加はのほとんどは、リピーターになる。それは、毎年変化をしているからだ。SXSW主催者側は常に止まることなく、すでに数年先を見据え新分野を求めひた走っている。最近は、教育、ゲーミング、コメディなどを取り入れ、数年先を先取りするようなカテゴリが用意されており、今年はカンナビス(大麻)関連が多く取り上げられる。実際にアメリカ市場で多くのカンナビス企業が株式公開しており、特にビジネスカンファレンスに注目が集まっていた。

歴史あるパラマウントシアターを中心にFilm部門は開催された

編集部的に言える事はSXSWとはやはりいくつかのアメリカを代表する映画祭の一つなのである。昨年はFilm部門25周年記念ほど派手さは見受けられなかったが、今年は9日間で、9箇所14スクリーンで世界103カ国から応募された8496作品から234作品がスクリーニングされた。小粒でぴりりと辛い珠玉の名作がスクリーニングされた。今年は残念なことに、日本からのエントリーはなく、唯一ミュージックビデオで「This is America」が上映されたのみである。

街中に乗り捨て可能なキックボード。実証実験で多くの人が使用していた

余談になるが、今年の会場内移動方法にも表れていた。シェアライドのUber、Lyftが提供するキックボードが大々的に使用されいたのも印象的だった。これまで市内に点在した会場は徒歩で往来していたが、タイムスケジュールの関係で参加できないものもが激減。大幅にパラダイムシフトが起こった。実際に体験実証できるのがSXSWダイナミズムかもしれない。

多様性と毎年変容続けるこのプラットフォームにその答えがある。ここ数年新しい映像の形を求めてSXSWに参加しているが、今年ほど多様性に満ちた年はなかった。これは一見後ろ向きの意見に見えるがそうではない。まさにこれが最先端ということである。今回もPRONEWSではこの多様性を取り上げていこうと思う。

txt・構成:編集部


[SXSW2019] Vol.02