一過性から定番化へ、様々な3D制作ワークフローが登場

InterBEE中日である。初日比べ明らかに人の数も増えたようだ。会場を巡って浮かび上がる今年のテーマは、正直一つには絞りきれない。今年は、新領域のカメラやIPTVも並列で注目を浴びている。昨年であれば3D一色だったが、これは3Dに関して定着したということなのだろうか?

十数年周期といわれる3D映像ブームだが、今回は3Dによる放送やBlu-rayディスクが3Dに対応するなど今までのはやりものの3Dとは若干様相が異なっているように思う。すでに3Dを撮影するためのリグなども各社から出揃い、ワークフローも確立しつつある。昨年までの客寄せパンダ的な3Dから、ごく当たり前の制作フローとして定着した感がある。あとは、マーケットが成熟し、定番化することである。

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3D撮影を簡単に行えるパナソニックの一体型二眼式カメラレコーダーAG-3DA1

そうは言っても重要になるのが、2台のカメラのセッティングや光軸合わせのほか、特性のそろった2本のレンズやカメラ、撮影時の同期など一般のビデオ制作に比べると越えなくてはならないハードルは高い。こうしたハードルを一気に解決し、先鞭をつけたのがパナソニックのAG-3DA1だ。今年はソニーも同様なコンセプトに基づくカメラを参考出品している。

3D制作に欠かせないリグの進化

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NHKメディアテクノロジーは長年の3D制作経験から開発したリグを販売。価格はカメラなしのシステムで約1500万

リグは大小様々な製品が各社から発売されているが、搭載できるカメラや輻輳角などの調節機構など、各社とも工夫が凝らされている。そんななかNHKメディアテクノロジーが長年の3D制作経験を生かし独自に開発したリグの販売を行っている。撮影や編集、上映など一貫したワークフローもすでに確立しており、単に機器販売だけにとどまらないサービスも提供できる体制になっている。

2台のカメラからの信号は通常2つの独立したビデオ信号として出力され、記録されるが、これらを3Dの画像としてモニタリングする場合は、対応したモニターが必要になる。すでにHDMI入力を装備した3D対応のビデオモニターが民生用を始めとして販売されているが、こうしたモニターを利用するためにはHD-SDIなど2台のカメラからの出力を3Dに対応したHDMI信号に変換しなくてはならない。こうした用途としてAJAからはHi5-3Dがエフエーシステムエンジニアリングからは3D LR Composerが発売になった。もちろんいずれも撮影時のモニタリングだけでなく、編集時におけるモニタリングでも使用可能だ。

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光軸調節機能や画角調節ガイド、スキャンリバース機能など3Dアシスト機能を搭載したキヤノンXF100/105

撮影用のリグには、大きく分けてハーフミラー方式とカメラを並列に設置する方式があるが、ハーフミラー方式の場合はミラーで反射した映像を撮影するカメラの信号を反転する必要がある。映像の反転は後処理でも可能だが、撮影時の確認などで片方のカメラの映像を反転する必要があるが、AJAのHi5-3Dはこうした反転機能も装備している。

3D撮影を行う場合2台のカメラの光軸を合わせる必要があるが、キヤノンのXF105には手振れ補正機能を利用した光軸調節機能が搭載されており、リグなども含めてもアフォーダブルな3D撮影環境を構築することができるだろう。

2Dから3Dへ生まれ変わるコンバーター

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リアルタイム2Dto3Dコンバーター機能を搭載した3DイメージプロセッサビクターIF-2D3D1

また、2Dの映像を3Dに変換するコンバーターもビクターやソニーが発表しており、3Dコンテンツの制作はかなり身近になったという印象だ。3D制作のワークフローも多様性を持ち、価格も手ごろになり、日進月歩で進化を続けている。この3Dという分野がどうなるのかはまだ分からない。しかし今回のInterBEEで確実に定番化する手ごたえを感じた。