映画監督ジェームズ・キャメロン氏と3D収録技術のイノベーターであるヴィンス・ペース氏は、昨年のNABで3Dプロダクション「 Cameron | Pace Group (CPG)」共同設立を発表した。あれから1年、今年は4月16日に開催されたスーパーセッションにて、3Dコンテンツ制作からどのように収益を発生させられるか、自分たちのスタジオをモデルとした実績と、スポーツ中継に特化した2D/3Dを同時に収録することができる5Dソリューションを発表した。

2Dと3Dを統合したシングルデバイス5Dを提案

CPGではこれまでに200以上のスポーツ系のプロダクションに関わったという。そして、彼らが手掛けたハリウッド映画の映画興行収入はトータルで80億ドルにもなった。過去に3D放送や番組を制作しようと思うと、通常の製作費のほか、3D製作のバジェットが別途のしかかるため、特別なイベント以外はかなりハードル高いものとなっていた。

中継用シングルリグに2D/3D用カメラを実装。2D/3Dカメラを上下にマウントも可能

CPGが今回新しく提唱するのは、2Dと3Dを統合したシングルデバイス、1台のリグに2D/3Dギアを実装した「Shadow D」システムをシングルオペレータが行うという、5Dソリューションだ。キャメロン氏曰く、自分が名づけたものではないという”2D+3D = 5D”ソリューションでは、今まで3D収録用に撮影監督からすべて別途に揃えていたリソースとシステムを省くことでコスト対効果が得られる。あとはいかに3D収録にクオリティを与えられるかのセンスとテクニックに集中できるわけだ。

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5Dソリューションは「ShadowCaster」中継車と共に既にフィールドで採用されている。ESPN Winter X Gamesでは、35台のShadow Dリグを現場に設置して収録したという、CPGにとって最大のプロジェクトとなった。ESPN 3DはCPGを専属プロダクションとして契約している。引き続き、夏のSummer X Gamesでも5Dシステムで中継が行われるという。

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新しく公開されたショルダー型5Dカメラシステム

5Dソリューションは特にテレビ放送に向けられており、いわば「トラジション・アプローチ」といったところだ。CPG曰く、ライブスポーツ放送向けで映画製作としては勧めないとしている。事実「Hugo(ヒューゴ)」では、CPGの3Dリグのみで収録されている。

もし自分がプロデュースしていたならば、アバターのときと同じく3Dカメラシステムで収録し、2Dに変換したと思う。

(キャメロン氏)

映画撮影用SHADOW EPICギアには、外部接続I/Oなどの独自STACKERモジュールも実装

セッションでは聞きなれない「Zero Delta(ゼロ・ゼルタ)」というタームが多く会話に出てきた。これは既存の2Dワークフローを損なわずに3Dを、追加コストを発生せずに取り入れるというマーケティング要素を含むという。ヴィンス氏は、これが真の可能性であり、3D産業を確立させるために不可欠、という。ゼロ・デルタは、資金とワークフロー両方にインパクトするもの。プロデューサー、ディレクターやカメラマンのビジネスを変えるつもりはなく、それはゼロ・デルタには当てはまらない。ゼロ・デルタは、既存のプロダクションのメソッドに影響を与えるものでもなく、コスト負担を与えるものでもない。

3D is the future, and a big part of that future is in broadcast(3Dは未来であり、その大部分は放送の世界にかかってくる)。3D、そして今は5Dがテレビの世界で現実に起こってきている。

と、キャメロン氏は続けた。

CPGのブースでは、映画収録用のシステムとライブ放送収録用のシステムを並べ、またモバイル5Dモバイルユニット「Shadowcaster」が2台駐車し、中のシステムを見学することができた。

(山下香欧)