Txt:今間俊博(首都大学東京)

今年はお馴染みロサンジェルスで開催!

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開催時は旗などで装飾されてきた会場のLACC。
今年は、そういった装飾が何も無く、外観だけではSIGGRAPHをやっている雰囲気が何も無い

7月25日から29日までSIGGRAPH2010のためにLAに来た。SIGGRAPHは数年毎にLACC(ロスアンゼルス コンベンションセンター)を会場にしているため、SIGGRAPHにとってのLAはホームグラウンドのような物である。たとえ他のアウェーな都市を開催地にして集客が悪くとも、ひとたびLAに戻ればハリウッドを擁する事もあり、大入り満員で必ず黒字を叩き出してくれたものだった。

しかし今年のLAは寒かった。いろんな意味で…。酷暑の日本から来た我々には、過ごし易さを超えて長袖で過ごさなくてはならない位に…。その肌寒さは、SIGGRAPH2010会場のLACCにも現れていて、例年使っている部屋数の見た目2/3程度しか使わないコンパクトな大会となった。人出の方も、昨年のNew Orleans大会の参加者総数1万人台という、とんでもない少数記録と比較すれば多いと思うが、それでも前回のLA大会よりも寂しい感じがした。

CG学会は衰退期?

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昨年度とほぼ同じチャプターミーティングに参加したメンバー

筆者は、シーグラフ東京(正式名は、TOKYO ACM SIGGPARH)というSIGGRAPHのローカルチャプターに所属している。毎年SIGGRAPHでは、チャプターのメンバーが集まって、今後の運営についてミーティングを行うのが恒例である。今年も本大会開幕前日の24日にチャプターのミーティングが行われた。

そこで気が付いた事がある。ここ数年の、ミーティング参加メンバーの顔ぶれが固定している事である。SIGGRAPHは学会である。学会の執行メンバーは、毎年少しずつ新しい血が入り若返って行くのが理想的である。SIGGRAPHの下部組織であるチャプターにも同じ事が言える。そう言えば、筆者がこのミーティングに参加し始めた10年前には、毎年フレッシュな若い学生が新規に参加して、新鮮な雰囲気を醸し出していた。それが今は大分失われている。確かに、毎年会うメンバーが同じなのは気が楽で良いのだが、毎年徐々に歳をとった顔を見ているのはどうなのだろう。そう言えば我がシーグラフ東京も、執行メンバーがここ数年同じままである。

コンピュータグラフィックスを扱っている他の学会の話を聞いても、最近会員が増えない、むしろ減少傾向であるという話を良く聞くようになった。日本に関して言えば、CGのソフトを使っている人口は、最近むしろ増えているのにである。

ある友人曰く、CGのソフトは先人たちがガンバッテ、様々な機能をすでにインプリメンテ-ションしてしまっている。またSIGGRAPHなどで新しく発表された研究も、短期間に市販ソフトに搭載されてしまう。だから、CGのプログラミングなんて知らなくて良く、研究としてのCGは一部の先進的な研究者だけが行えば良いのだそうだ。もしそれが本当だとしたら、本当にそれで良いのだろうか?

Electronic Theaterの楽しめないプログラム

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Electronic Teatorの会場HALL B隣にもっと大きなHALL Aがあるが満席での盛り上がりをねらったのか…

昨晩は、Electronic Theaterの初日であった。一般的に言えば、SIGGRAPHの開催地が西海岸の場合にはエンターティンメント性の高い楽しい作品が選ばれ、東海岸の場合にはより主張が強い個性的な作品が選ばれる傾向にある。これはSIGGRAPHにおいては、開催地のメンバーが運営メンバーとなるため、毎年その作品傾向が変化するためである。

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シュールな作品が多かった今年のElectronic Teator作品の1つ「Klik!」
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もうちょっと演出を変えればおもしろかった作品
「Cours Toujours」
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ソフトをバージュンアップする度に機能が増えメニューが複雑になってゆく作品「Upgtrades」

今年は西海岸のLA開催。さぞかし面白可笑しい作品が多いかと期待して行ったのだが、ちょっと当てがはずれた。何だかとてもシュールでエキセントリックな作品が多く選ばれており、何だかエンターティンメントとしては、楽しみ切れない雰囲気であった。友人曰く、昔のSIGGRAPHのようだ。

ここ数年の参加者の落ち込みを受けて、SIGGRAPHのコミッティはSIGGRAPH全体の構成について、いろいろと手を加えている。それはElectronic Theaterも例外では無い。前回のLA大会の際には、7000人収容のNokiaシアターにおいて、いつ行ってもElectronic Theaterが見られ、観客が投票するアワードを設けた。(この方法は、とても評判が悪かった)。今回は立体3D作品を2つ加え、Real-Dの上映出来るシアターでのElectronic Theaterであったが、上映プログラムの選考基準も、随分と手を加えたようである。

内容については、個人の好みの問題もあるので、今年のElectronic Theaterが全くダメとは思わないが、筆者に関して言えば途中で寝てしまった。作品内容については、来年のバンクーバー大会での更なる変化に期待したい所である。