Computer Animation Festivalの新潮流リアルタイムCG

CG(コンピュータグラフィックス) とインタラクティブ技術の学会・展示会である SIGGRAPH では、CG を駆使した映像作品を集めた CAF (Computer Animation Festival) も注目のイベントだ。昨年度からの傾向としては、”LIVE REAL-TIME DEMOS” と呼ばれるリアルタイムCG部門が充実した。リアルタイム部門では、家庭用ゲーム機がその場で描く緻密な映像や、グラフィックスボードメーカーが最新機能を駆使して描くサイエンティフィックビジュアライゼーションなどが上映される。録画映像ではなく、会場のその場でゲーム機等を実際に操作して観客に見せているのが特徴だ。ゲーム映像からは God of War III (SONY), Blur (Bizarre Creations) のプレイ画面が上映された。

LIVE REAL-TIME DEMOS、リアルタイムCGのデモンストレーションが興味深いので2つほどあげておこう。

●Proland(INRIA / Eric Bruneton)

●Supersonic Sled (NVIDIA / Mark Swain)

CG業界を兼任する広告プロダクションの活躍

また、これも昨年からの傾向であるが、CAF では米国のみならず、イギリスの広告プロダクションの活躍が著しい。旧来、ハリウッド映画の VFX で占められていた映像作品群の中に、TVCM やミュージックビデオでの新鮮な映像が数多く取り込まれている。これも、SIGGRAPH が多様性を受け入れる土壌があるからであろう。上映作品の中には CMやミュージックビデオなどでお馴染みのThe Mill、Framestore、Motion Theory、Psyopの名前が連なる。

数多くの CAF 上映作品の中でも、なぜか親しみを感じる作品のいくつかは、 日本からの出品作品であった。数は少ないながらも日本初の映像の活躍も目立った。もちろん、米国のCGプロダクションでハリウッド映画製作に携わる日本人CGアーティストも数多い。さらに今年の CAF の特徴のひとつとして、CHINESE STUDENT ANIMATION 部門が設けられていた。

●Suiren / 金原朋哉 氏 (WOW)

白を基調としたミルクのような液体をCGで描いた静かな中にも不思議な浮遊感を持った作品。WOWidの作品群のひとつ。

●HANABEAM (HIFANA の MV) / W+K TOKYO LAB , ポリゴンピクチュアズ

ハリウッドCGを見慣れた観客には衝撃を与えた映像であった。普通のアニメでも無い、観たことの無い映像が展開され、上映会場の拍手喝采を浴びていた。

●The Light of Life / 柴田大平 氏 (WOW:自主制作)

機械の種子が育ち、マシン生命が育つ様子を美しい音楽とともに描いた作品。 詩的で圧倒的な美しさに、上映会場では長い拍手が止まらなかった。

●Pissenlit / 宮島勉 氏+中間耕平 氏 (WOW)

連続性や、自己複製をテーマとした液体とも金属ともとれる独特の質感を持った映像。

上記の他にも「Grained Time Vol. 1 / 五島一浩 氏」がメディア芸術祭からの招待作品として上映された。

2011年のSIGGRAPHは、バンクーバー(カナダ)で開催!

TVCMからハリウッド映画、科学技術映像に至るまで、広い分野におけるコンピュータグラフィックス映像の最新技術や、映像の流行を知ることに出来るComputer Animation Festival, 次回の SIGGRAPH 2011 は、8月7日から11日、カナダ、バンクーバーで開催される。国策のおかげもあり、カナダでは CG産業がとても盛んである。現在は変わっているらしいがCG黎明期の1990年代、CG関連企業の全従業員のうち、半分の人数分の給料は国が負担してくれたとの噂も聞く。現在主流の CGソフト、Autodesk Maya, Softimage, Side Effects Houdini と、主立ったCGソフトウェアはもとをたどると、カナダが発祥の地であり、現在もカナダは重要な研究開発の拠点となっている。来年の SIGGRAPH は CGに関する企業に勢いのある、カナダでの開催に期待が膨らむ。