DVJ BUZZ TVは、これまでのイベントの開催スタイルから趣向を変えて、プロの制作現場を覗くというテーマで、ポストプロダクション見学会と称して9月15日に第6回目を開催した。見る機会の少ない、大手ポストプロダクションの施設内を見学してみようという試みだ。今回ご協力頂いたのは東京・目黒にある『イメージスタジオ109』。CM関係の制作に多く使われており、スチル広告写真撮影にもよく使用される撮影スタジオも有しているのが特徴だ。今回のイベント開催の背景として、最近CM制作等で大きな話題のデジタル一眼カメラによるムービー撮影の本格導入がある。

キヤノンEOS 5D markⅡがもたらす新しいワークフローの波

業界内の注目を集めているデジタル一眼カメラでの動画撮影。各カメラメーカーからも動画対応の新製品が続々と発表されているが、このブームの火付け役となった、キヤノンEOS 5D markⅡに他ならない。35mmフルサイズCMOSセンサーによる高画質と強力なバックフォーカス、つまり被写界深度(dof)が美しく得られることで、この30万円台というクラスのカメラ(ビデオを含む)では得られなかった品位の高い画質が得られることから、プロ市場でもその導入が昨年末ごろから一気に高まっている。

また、これまで35mmフィルムを使用していたCMカメラマンからも高い評価を得ており、テレシネすれば35mmフィルムとほぼ同等の画質が得られるといった検証結果も多く、ここに来てデジタル一眼ムービーでの映像制作の流れは一気に加速している状況だ。そんな中で、その制作フローを推進する意欲的なポストプロダクションが、イメージスタジオ109だ。デジタル一眼ムービーの本格的な制作フローを構築し、アップルFinal Cut Proを使用した、オフライン編集室の貸出しなども含めて、これまでになかったユーザー層の獲得を目指している。

▲イメージスタジオ109でのデジタル一眼ムービーのワークフローを詳細に解説

市場変革に際して新たな進路を探るポストプロダクション

 

今回の来場者の顔ぶれは実に興味深い。個人の映像クリエイターやカメラマンはもとより、スチル系のカメラマン、Web制作に携わる方、レタッチなどスチル画像系のグラフィッカーと呼ばれる方、デザイナー、そしてメーカー系の方など、これまでポストプロダクションとは縁の遠かった方々が多くご来場されたことも、新たな市場に向けて、ポスプロの新たな方向性を予感させるものだ。

▲Final Cut Proの編集室ではスタジオ撮影された5D markⅡのデータをすぐに編集できるデモが行われた

現在不況のあおりを受けて、ポストプロダクション自身も、現在非常に厳しい状況に立たされている。TVCMの激減により実際の映像制作本数は明らかに少なくなっており、さらに制作費削減は必須のため、ポスト作業に回る予算は当然ながら縮小されている。

REDなども新たな制作フローとして、特に長尺もの(映画、ドラマ)などでは使用頻度が上がっているが、ワークフロー全体を見渡すと、非常に使いづらい面もまだまだ多いのは否めない。また5D markⅡはキヤノンという日本を代表するカメラメーカーの製品であることも、市場で信頼性の上でも浸透しやすいのは確かだ。

低予算ワークフローに対応するポストプロダクション・セカンドライン

改めて痛感したのは、デスクトップビデオを実践している個人やSOHOなどのクリエイター環境とは、一見大きく異なって見えるポストプロダクションだが、実際に中を覗いてみて、さほど技術的に大きな差はないということだ。ただ周辺機材の充実やクライアント向けのプレビュー施設・機材が充実しており、さらに制作に集中出来る環境(これが一番重要か!)があることなどは、別の意味で『プロっぽい』施設が充実しているといえるだろう。これまでのポストプロダクションとしての存在価値であり、いわば威厳や安心といったものにつながっていたように思う。

ではすべて個人所有のデスクトップビデオに移ってしまうのか?いや、こうした予算低減化のなかでポストプロダクションの出来る事はまだまだあると思う。現にこのデジタル一眼ムービーを基軸とした、新たなワークフローをいち早く取り入れたイメージスタジオ109もスチル撮影のノウハウを推進して行くことをこの夏から発表している。この新たなワークフローラインの提案こそが、今後のポストプロダクションのあり方の大きなヒントであることは言うまでもない。

例えて言うなら、高級ファッションブランドのセカンドラインのようなもので、メインストリームの製品は良い物だが、高額で万人がなかなか手を出しにくい。そこで誰でも気軽に購入できる、セカンドラインを作って、汎用普及させる、もしくは実際の稼ぎの主軸に置く。まさしく今後のポストプロダクションもセカンドラインの充実が求められているのではないだろうか?

一般市場経済の中では、いままさに『ボリュームゾーン』という言葉が注目されているが、映像制作もまさに今後の中心は、この業界における『ボリュームゾーン』をどう狙っていくかだと思われる。

特別展示された5DmarkⅡ用の撮影周辺のサポート機材

ジャイロシステムは、ヘリや車等の移動撮影に便利だ(アナミ海外)

Zacuto+クロジールマットボックス+業務用モニターの組み合わせ(銀一)

redrockmicro社のアダプターはすでにスタンダード(ライトアップ)

次回DVJ BUZZ TVは10月初旬に開催予定。

http://www.dvjbuzz.tv(近日正式オープン)

WRITER PROFILE

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。