オートデスク(東京都中央区)は、2009年11月18~20日に千葉市・幕張メッセで開催されたInter BEE 2009でテクノロジー・プレビューを行い、開発中のエディトリアル・フィニッシングソフトウェアAutodesk Smoke 2010 For Mac OS Xを公開した。オートデスクはこれまで、コンポジット製品のCombustionでMac版/Windows版を提供しているが、それ以外は一貫してLinuxベースのシステムを提供してきた。今回開発しているSmoke 2010 For Mac OS Xが、フィニッシング製品では初のMac対応となる。

SmokeはLinuxベースの製品で、CM、番組、ミュージックビデオなどの制作に使用され、タイムラインベースながらInferno、Flame、Flintといったビジュアルエフェクト製品と連携できるエフェクト機能を持ち、短尺/長尺にかかわらず利用できるツールだ。今回プレビューを行ったSmoke 2010 For Mac OS Xは、グラフィックスカードに依存する一部機能を除き、Linux版のほぼ全ての機能が搭載となる。さらに、Mac版独自機能としてFinal Cut Studioで使用される制作用のProResコーデックのネイティブ利用が可能になる。

Autodesk Canadaでテクニカル・プロダクト・マネジャーを務めるMarcus Schioler(マーカス・シオラー)氏に、Autodesk Smoke 2010 For Mac OS Xの開発経緯を聞いた。

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──今回、Smoke 2010 For Mac OS Xを開発することになった背景には、どんなことがあったのですか。

シオラー氏「ここ1年半ぐらいの期間を使って、北米の小規模プロダクションで活動している人たちとディスカッションしてきたが、現在の低迷する景気のなかで、クオリティを保ちながら映像制作をしていくことが困難になってきていた。作品数は維持しているものの、競争が激しくなり、小規模プロダクションが安く請け負って数をこなす方向になっている。そのため、ワークフローを効率化するのはもちろん、コストパフォーマンスの高いソリューションが求められるようになっていた。こうした制作方法では、作品のクオリティは決して良いものと言えなくなってしまっているが、当社のシステムを利用しているユーザーがクオリティの高い仕事をしようとしても、他の安価で請け負う小規模プロダクションに仕事を奪われるケースも出てきていた。当社は、制作費全体を下げるソリューションとして、NAB ShowでInfernoやFlameと連携できるコンパニオンソフトウェアFlareを発表したが、今回はオールインワンで使用できるエディティングアプリケーションとして、Smoke 2010 For Mac OS Xを開発することにした」

──リーマンショック以降の北米制作市場も厳しくなっているのですか。

シオラー氏「その通りだ。ポストプロダクションは、複雑な仕事をハイクオリティで仕上げたり、軽い仕事を多数受けて早くこなすことによって利益を上げてきた。そのため、ハイエンドなポストプロダクションにおいては、InfernoやFlameを使ってワークフローを確立してもらってきた。しかし、今回のディスカッションで、ワークフローを構築しやすいMacベースで制作している小規模プロダクションがかなり多くあり、そうしたプロダクションのなかには、予算規模やワークフローの制約からLunuxベースのInfernoやFlame、Smokeといった製品を導入しにくいケースもあることが分かってきた」

──CombustionではMac版とWindows版を提供しているが、SmokeをMac版を選択した訳は。

シオラー氏「オートデスクユーザーがMacベースの制作環境を使っていることも多く、Final Cut Proで編集している人も数多くいたという事実がある。Macベースの環境を持つアーティストはとてもクリエイティブであるのに、これまではパワフルなフィニッシングツールが存在しなかった。そこで、Smoke For Mac OS Xでクオリティの高い作品を制作してもらおうと考えたんだ。Final Cut Proでオフライン編集をしてもらい、Smoke For Mac OS Xでエフェクト追加やフィニッシングをしてもらうという流れだ」

──Final Cut Studioは制作用コーデックにProResコーデックを採用しているが、そうした制作用素材の取り扱いはどうなるのか。

シオラー氏「Linux版とは異なり、Smoke For Mac OS XではProResコーデックの素材もネイティブで扱えるようになっている。Final Cut Proのプロジェクトについても、EDL、AAF、Final Cut Pro XMLの各形式でインポートし、タイムラインに再現することが可能になっている。ProResコーデックと言えば、興味深いことがある。ProRes 4444など新しいProResコーデックが追加されてから、問い合わせが急速に増えてきており、AVC-Intraに対するものよりも多いくらいだ。市場の興味はProResに移ってきているみたいだね」

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Inter BEE 2009で世界初公開となったSmoke 2010 For Mac OS Xのテクニカルプレビューは、ブースから立ち見の来場者が溢れるほど関心を集めた。


──Smoke For Mac OS XとLinux製品との連携はどうなるのですか。

シオラー氏「Smoke For Mac OS Xは、小規模プロダクション向けに開発しており、スタンドアロンで使用することを想定している。Inferno、Flame、Flint、Flare、SmokeといったLinux製品はインフィニバンドを活用して連携する製品であり、Mac製品との連携はあまり現実的ではないと思う。つまり、Smoke For Mac OS Xは、Linux製品のように連携して使用するのではなく、Mac環境でフィニッシングまで完結できる製品として考えているんだ」

──SmokeとSmoke For Mac OS XとLinuxの機能面の差はあるのですか。

シオラー氏「まず、インタフェースに差はない。Mac版とは言っても、Mac OS Xのメニューバー表示もなく、見た目はLinus版と全く変わらない。機能面では、Smoke For Mac OS Xには、グラフィックスカードの機能を使用してレンダリングをすることなくさまざまなフォーマットに合わせてマスタリングをする『リアルタイムデリバラブル』機能が付いていない。これ以外の差はない」

──Smokeはタイムラインエディティング、レイヤーベースのコンポジティングのアプリケーションですが、Mac環境にはノードベースでフィニッシングできるコンポジティングアプリケーションもない。そこに向けた取り組みはあるのですか?

シオラー氏「現時点では何とも言えない。確かにSmokeはレイヤーベースだが、クリップヒストリー機能を使用して、作業を保存してからエフェクトをモデファイしてやることで、ノードベースに近い使い方ができるだろう」

──Macユーザーに向けて、Smoke For Mac OS Xの登場をアピールすると。

シオラー氏「カラーコレクション、シェイプ、カラーワーパーなどポストプロダクションのハイエンドな制作で使用されてきた実績のあるSmokeのMac OS X版の登場により、Mac環境でよりクリエイティビティを発揮できるようになる。Mac OS Xの64bit環境に対応し、キーイングやペイント、トラッキング、3Dテキスト、3D合成までも含んで、2,492,000円で投入する。期待して欲しい」

WRITER PROFILE

秋山謙一

映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。