満を持してキヤノンからファイルベース収録のカメラがリリースされる。これまでも民生機はAVCHDフォーマットのカメラを発売しているキヤノンだが、業務用機はテープを採用したモデルのみであった。業務用機はランニングコストや信頼性など運用面を考えるとテープという選択もうなずけるが、メモリーのコストが下がりすでに各社とも業務用の小型ビデオカメラの記録媒体にメモリーを採用し、編集環境などもかなり整ってきた。XF300/305はこうした背景から満を持して発売になったカメラと言えるだろう。

機能・特徴など

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CFメモリーカードを2枚装着可能だが、同時記録には対応していない

業務用小型ビデオカメラにメモリー記録を採用したメーカーとしては後発ということもあり、XF300/305の記録フォーマットはAVCHDやHDVではなく、XDCAM HD422などで採用されているものと同等なMPEG2 422P@HLをファイルフォーマットとして採用しているほか、MXFにも対応している。

AVCHDやHDV と422P@HLで大きく異なる点はMPEG4由来のフォーマットかMPEG2かという点と420か422という点の2つである。422に関してはキヤノンでも特徴として大きく取り上げており、色の解像度の優位性を謳っているが、422P@HLという点も見逃せない特徴と言えるだろう。このフォーマットを採用しているのは、ソニーのXDCAM HD422や池上通信機のGFCAMシリーズとなっており、放送用のENGカメラで採用されているフォーマットである。

記録系がいくら優れていても撮像系がプアーではあまり意味がない。XF300/305では、それに見合うレンズを新たに開発しXF300/305に搭載している。422という色解像度に優れたフォーマットの特徴をフルに引き出すために色収差を徹底的に低減したほか、解像度も中心1000本周辺でも800本となっている。解像度1000本という値はHDのカメラでは民生機でも当たり前のようになっているが、民生機のなかにはレンズスルーでの解像度ではなかったり、業務用機でも周辺での解像度までスペックに記載されていないことが多い。そういった意味でもXF300/305に搭載されているレンズには期待がもてる。

高画質化のキーデバイスとしてDIGIC DV Ⅲを採用しているが、DIGIC DV Ⅲの機能についてはある程度公表されているものの性能を推し量る情報がなく、このデバイスがどのように画質に寄与しているかは不明である。DIGIC DV Ⅲも含めXF300/305についてDIGIC DV Ⅲは、動画特有のノイズの低減、多画素化したフルHD CMOSセンサーへの対応、顔優先AFや顔追尾など人物撮影に適した制御(フェイスキャッチテクノロジー)、演算処理の高速化といった機能や性能に貢献しているという。

ちなみにXL H1S/XL H1A 、XH G1/XH A1まではDIGIC DV Ⅱで、DIGIC DV Ⅲの搭載はXF300/305が最初となる。

外観・操作性

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LCDモニターの位置やトランスポートなどの各操作スイッチ類の位置も変わった
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円形のダイアルは廃止され、デザイン的な特徴だけになった
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スライド式の電源スイッチはCAMERA・OFF・MEDIAを切り替えるようになっている
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LCDモニターには各種情報表示が表示され、4型の小型モニターとしては視認性もよい

XL H1S、XL H1AなどのXLシリーズからXH G1SなどのXHシリーズになり、一見した外観は大きく変わった。XF300/305は、XHシリーズに近い外観だが胴回りが若干太くなった印象だ。LCDモニターの位置も本体上部から取ってのマイク下に変更になっているほか、電源スイッチやメニュー操作、トランスポートなどの各操作スイッチも様変わりしている。良くも悪くも一般的な小型ビデオカメラの操作系になったと言えるだろう。なお、ユーザーが30項目の中からアサイン可能なボタンが13個あり、かなり細かくカスタマイズすることができる。

 

実際に手にとってみると、約3kgという質量は片手で撮影を続けるにはそれなりの体力が必要で、ソニーのPMW-EX1に近い印象を受けた。小型ビデオカメラといってもこのクラスのカメラは両手で構えて撮影するか、何らかのカメラサポートシステムを使うようにしたい。

電源はデザイン的にも特徴的な液晶表示部分の円形ダイアルからスライドスイッチに変更になった。従来液晶表示部分にあった円形のダイアルは廃止されてしまった。好みの問題だが、あれはあれで使い易かったのでちょっと残念な気がする。スライド式の電源スイッチはCAMERA・OFF・MEDIAを切り替えるようになっているが、OFFにする場合かなり意識しないと真ん中のOFFを通り越してしまうことがあった。

 

LCDモニターは視認性も良く輝度も解像度も4型の小型モニターとしては申し分ない。情報表示も記録フォーマットや色温度、F値、感度など必要な項目が表示されるようになっている。さらに、波形モニターやベクトルスコープ表示を行うことができるので、レベルの確認や色の偏りなどをチェックすることが可能だ。ただ、4型モニターの片隅に表示されるので、これで正確なチェックを行うのは無理があるだろう。

 

ピントはHDになりSDよりかなり神経を使うところだ。ピントが合うとエッジが強調されるピーキング機能のほか、ピントの状態を波形で表示するEdgeモニター機能が搭載されている。Edgeモニター機能は、LCD画面下部に波形が表示され、ピントが合った部分は波形の山が細かく高く表示されるという仕組みである。画面内には3箇所の注目エリアが設定されているが、このエリアは任意に設定することはできない。なお、波形モニター、ベクトルスコープ、Edgeモニター表示は切り替え式で全て同時に表示できるようにはなっていない。

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波形モニター

ベクトルスコープ表示

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Edgeモニター機能。ピントが合っていない状態

Edgeモニターのピントが合うと波形の山が高く表示される
   

一般に小型ビデオカメラはオートで撮影することを基本としているようで、マニュアル操作にした場合ENGカメラのような操作感が得られない物が多い。特にレンズの操作は、ピントやズームの粘りや回転角度など構造上ENGで使われているレンズのようにはいかないようだ。XF300/305は、小型ビデオカメラだがピントやズームの操作感をENGレンズに近く設計されている。適度な粘りだけでなく、無限や最至近でフォーカスリングが止まるようにもなっているので、非常に使いやすい。このあたりは、放送用ビデオレンズを手がけるキヤノンだからこそと言える部分だ。

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ピントやズームの操作感はENGレンズに近い操作フィーリングだ

ガンマやカラーマトリクスなどを設定できるカスタムピクチャー機能を搭載。設定内容はSDカードへの保存や読み出しが可能。静止画データもここに記録

ズーム・フォーカスリモートはリモート操作で行えるようになっているが、シネスタイルでの撮影も考慮してか、ズーム、フォーカス、アイリスのリングにはギアが切ってある。ENGレンズなどとはピッチなどが異なるようだが、XF300/305はAFの機構があるためレンズ鏡筒にベルトギアを装着できないための配慮だろうか。フォーカスのギアはこうした利用を考慮してが、ゴムリングタイプとなっており消耗しても比較的簡単に交換できるようだ。

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HD/SD-SDI、HDMI OUT、HD/SD COMPONENTOUT、コンポジット、GENLOCK、TIME CODEなどの入出力端子

VFのアイピースは着脱可能だが、交換オプションが用意されているわけではない

   

WRITER PROFILE

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。