フルモデルチェンジをしたiPhone 4が6月25日に発売となり、発売後3日間で170万台を達成したようだ。iPhoneが登場して3年、日本でiPhoneが3Gが発売されて2年。同じ筐体を使用しながら機能向上を果たしてきたが、今回初めて筐体も含めて一新された。HD720/30pビデオへの対応とフロントカメラが搭載されたことが機能面の大きな進化だ。

ビデオ撮影に付いては、昨年夏に発売されたiPhone 3GSでオートフォーカスへの対応とともにVGAサイズの撮影が出来るようになっていたし、秋に発売されたiPod nanoでもVGAサイズのビデオ撮影機能が搭載されていたので、目新しい機能というわけでもない。VGA 4:3からHD 16:9へと、解像度向上とアスペクト比の変更図られたと言っても、昨年1年間でデジタルカメラが相次いでフルHDムービー機能を搭載して来た現在、それほど驚くことでもないと言える。

しかし、今回のiPhone 4の登場で、取材活動スタイルは確実に変化していくはずだ。そのポイントとなる理由は、(1)VGAサイズのフロントカメラの搭載、(2)フラッシュLEDの搭載、(3)ビデオ編集ソフトウェアの充実、(4)A4チップ搭載による高速化、(5)海外ローミング定額化という5つだ。

VGAサイズのフロントカメラの搭載

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iPhone 4で初めて自分撮り用フロントカメラを搭載。VGAサイズで、iPhone 4同士のビデオ電話「FaceTime」にも使われる。自分撮りのビデオ素材が撮れるのは朗報。

これまでのiPhone 3GS、iPod nanoと言えば、動画は撮れても、決して自分が映ることのない収録デバイスだった。フロントパネルに自分撮り用のカメラは付いていなかったためだ。これまでは、自分視点で映像発信は出来ても、発信者の顔が見えるメディアではなかった。

もちろん従来機種でも先に動画をスタートさせておいて、背面のアップルマークに自分の鼻が映るような位置にカメラを構えれば、なんとか自分撮りをすることができなくはなかった。しかし、これは工夫すればというレベルで、誰もが気軽にというものではない。新iPhone 4では、ボディ両面に平面のアルミノケイ酸ガラスを採用したため、自分の姿がボディに映り込む。フロントカメラがなかったとしても、従来機種に比べて自分撮りはしやすくなった

フラッシュLEDの搭載

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メインカメラの横のフラッシュLED。直径はわずか1mmほど。こんな大きさでも、近くでは直視できないほど明るい。

メインカメラの横にフラッシュLEDを搭載したことで、より視野を明るく撮影することが可能になった。オートフォーカス付きのムービー撮影に対応しているとは言っても、携帯カメラ。レンズも撮像素子もかなり小さい。これでHD720pが撮れるというだけでも、1ピクセルあたりの受光面積はどのくらい小さなものになっているのか、想像もつかない。低照度下での撮影は苦手なシーンの1つとなってしまうことは避けられない。

今回、フラッシュライトを搭載したことにより、低照度下でもより明るく撮影することが可能になった。これは、薄暗い展示会などで取材する時は特に有効に使えそうだ。ただし、極小LED 1つで照らすことから、人物のキャッチライトにはいいかもしれないが、反射物が視界にあると不自然なスポット反射が生じてしまうことには気をつける必要がありそうだ。

ビデオ編集ソフトウェアの充実

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HD720pに対応したiOS4向けiMovieが発売となった。速報性のあるカット素材を作るためにも、携帯上で不要な部分のカットができればと考えていた。やっと実現した。展示会レポートはiPhone 4で取り組む人が増えそうな予感。

実は、単にムービーが撮れますというだけでは、取材レポートには活用できなかった。たとえ、ある会社のブースの1製品を紹介するにしても、大抵は前後に余分なのりしろがあって、そこを切らなきゃ使えないことがほとんどだった。

最近では、USTREAMやTwiVideoなどを使ってダダ漏れ的にレポートするのも違和感がなくなって来たとは言え、文字と組み合わせるための素材として使うことも考慮しながら、ムービーを会場からアップロードするなら、やはり不要なものは切り落としておきたいと考えていた。展示会ブースの製品の取材映像であれば、本来編集などと言うのはおこがましいくらいで、前後をカットさえすれば記事に埋め込める素材になることが多い。iPhone単体で、現場で前後をカットできたらと思うことは多々あった。

そうは思ってみたものの、iPhone上で使えるビデオ編集ソフトウェアでは、動作が緩慢だったり、書き出すのに手間がかかったりということが多く、十分に活用されていたわけではなかった。結局は、Mac/PCと連携して同期コピーをとって、Mac/PC上で編集作業を行うことが手軽でしかも快適だったのだ。

iPhone 4になって、ついにアップルも正式にiMovieを追加。ようやく標準のビデオ編集ソフトウェアが追加できるようになった。それも600円という価格で。実際に追加してみたが、確かに手軽さはあるのだが、最初にテーマを選ばねばならなかったり、自由度は相当制限されているようだ。テーマに無地のものがありさえすればとも思ったりもした。アップルとしての最初の1歩。今後に期待したい。

シンプルに使いたいという意味では、NexvioのReelDirectorというビデオ編集ソフトウェアもある。残念ながら、現在のバージョンではVGAサイズまでしか対応していないが、これはiOS 4環境限定のiMovieとは異なり、iPhone OS 3.0.1以降であれば動作し、iPadでも実行できる。iPhone 4で撮りつつ、母艦のMac/PCを経由して、素材をiPadに移行して作業するということも可能になりそうだ。

A4チップ搭載による高速化

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わずか小指の爪ほどの大きさしかないA4チップ。従来のiPhoneから大幅に処理速度を向上させている。この処理速度を生かして、2つのカメラを生かした次世代のライブ中継ソフトウェアが登場して来そうだ。

iPadに使用されたカスタムCPUのA4が、iPhone 4にも搭載された。筆者自身は、iPhone 3Gから2年を経てiPhone 4に機種交換したのだが、文字入力における快適さという部分だけでも相当な違いが体感できた。カメラがVGAからHD720に変更されたことを考えても、それ相応の高速化が図られているのは当然だ。実は、この高速化の恩恵を最も受けるのは、ビデオ編集ソフトウェアとライブ中継部分だろう。トランスコード作業は相当に負荷が大きいからだ。

今のところ、メインカメラとフロントカメラを切り替えながらライブ中継できるソフトウェアはまだ出て来ていないようだ。Web用と割り切れば、フロントカメラ4:3のアスペクト比を優先してメインカメラをサイドカットで使用しながら、それぞれのカメラを切り替えたり、PinPではめ込んだりできるようになると、中継スタイルも変えることができそうだ。

海外ローミング時のパケット定額化

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海外利用で初のパケット定額となる「海外パケットし放題」(7月21日提供開始)の料金体系と、2010年6月28日現在で対応を予定している国と定額対象事業者。指定業者に繋がないとパケット定額の恩恵は受けられないので注意が必要だ。

iPhone 4とは離れるが、ソフトバンクモバイルが2010年7月21日から「海外パケットし放題」を導入することを決定した。1日最大1,980円(2011年6月30日までは最大1,480円)で対応通信事業者を通じてのパケット利用に応じる。この料金は、動画利用時は対象外となり最大2,980円が適用される。

PRONEWSでは、4月にラスベガスで開催された2010 NAB Showで現地からTwitterレポートを行ったが、iPhone、Mac/PCを持ち歩いてホール内で取材しつつ、幕張メッセから海浜幕張駅以上の距離を歩いてプレスルームにたどり着き、プレスルームのWiFiを使ってツイートするというようなことをしていた。こんな体力を消耗するようなことをしていたのも、国際ローミングパケット代が上限なしに設定されているからである。「うっかりWebブラジングしていたら10万円の請求が来た」なんて声もあるほどで、とても画像を送ったり映像を流したりということはできなかった。

今回、初の「海外パケットし放題」が導入されることで、会場内のどこからでもツイートできるというわけだ。それどころか、NAB ShowやSIGGRAPH会場から、USTREAMやTwitCastingの可能性すら出てきた。孫正義氏が「皆さんが、ガンガン使うと当方かなり赤字。お手柔らかに。」「当方決死の想い。身代りパケ死か。」とツイートしていることからも分かるように、ソフトバンクモバイルにとってもかなりの英断だったはず。「海外パケットし放題」導入で、今後の海外取材活動のスタイルも大きく変わるであろうことは間違いない。

WRITER PROFILE

秋山謙一

映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。