とにかく小型で機動力抜群のEOS 5D MarkⅡ

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かばん一つに5D MarkⅡが2台と、必要なレンズ数本、フィルターやバッテリーなど全ての収納可能。、メンテナンスも楽なところが素晴らしい

デジタル一眼レフの動画撮影は想像を超えるほどの高画質と、効率的なワークフローをもたらしてくれる。多くの現場で支持される理由は、枚挙に暇がない。この連載でもその実力をたびたび紹介しているが、やはりEOS 5D MarkⅡに代表されるDSLRの一番の特徴は「とにかくコンパクトである」ということだ。

私は日本全国で撮影に出る。今までであれば現地のクルーにお願いをして機材をレンタルしたり、あるいは重いカメラを飛行機になんとか持ち込んだりしたりと大変な思いを強いられてきたが、最近はキャリーバックひとつで簡単に移動が可能だ。しかも、バッグの中には2台のEOS 5D MarkⅡが入っているだけでなく数本のレンズやフィルターなどの周辺機材が全て詰め込まれている。飛行機の持ち込みだけでなく、電車移動だって何ら問題はない。更には編集ソフトウエアが入ったノートパソコンも一緒につめて、現場で一気に素材のコピーや仮編集まで行ってしまう。信じられないほどの機動力だ。

特機も同様に小型化され簡単に使える時代に

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Steadicam Pilot全装備。ベスト、アーム、モニタつきスレッド、スタンドが全て一つに収まるように設計
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レールも組み込む可能なジブアーム、Libec JB-30。簡単にセッティング、オペレーションが可能

カメラ自体の筐体が大きくダウンサイズされたことで、もうひとつの恩恵を受けることができる。それが周辺機材も同じく「小型化」され、そして「効率化」されたことだ。例えば使用する三脚などは大きく変わった。三脚は使用するカメラの重量によって値段やサイズが変わってくる。従来のENGなどのように10kgを超えるカメラになると、やはりそれ相応のものを用意する必要があった。値段も軽く50万円を変えるようなものばかりで、サイズもかなり大きい。ハンドヘルドサイズのHDVやXDCAM-EX、AVCCAMなどでも大体2kg~3kgあるのに対して、EOS 5D MarkⅡの重さはレンズをつけたとしても1.5kg前後に収まってしまう。

もちろんフォローフォーカスなどのサポート機器を取り付ければ重くはなるものの、いわゆる「ネイキッド」の状態ではかなり軽いカメラといえる。そうなると撮影で使う三脚も一番安いもので問題はなく、更にはサイズも大部小さく効率化させることができるのだ。逆に今まで使っていたような大型・中型カメラ用三脚を使うとカメラ自体があまりにも軽いため三脚のカウンターバランスのほうが強くなってしまい使いづらく、かえって問題が生じてしまうことがある。

三脚と同じ要領で、撮影特機も効率化された。特機自体が小型化され使いやすくなったおかげで、私も今まであまり使わなかったものを最近では頻繁に使うようになった。特に良く使うのが「スタビライジングシステム」と「ジブ」である。従来の重いカメラであれば特機のオペレーターにお願いして撮影に臨まなければならなかったが、EOS 5D MarkⅡだからこそ、その使用が「自分たち」で行えるようになったのである。そのおかげで今まであまり手にできなかった新しい表現方法が演出に加わった。

最強のスタビライザー、Steadicamと5D Mk2

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後方へのショットも、ほとんどでブレは生じない。1日の練習で上達が見込めるのも、小型カメラでならでは

最近私が出会ったのはあの「Steadicam」シリーズの最軽量モデルである「Pilot」だ。スタビライジングシステムと言えば、普通は「手振れを抑えるため」の使用であるが、それ以上にSteadicamには特有の空を飛んでいるかのような浮遊感溢れる効果を狙うことができる。数多くの映画やドラマなどで使用されてきた「あの映像」をEOS 5D MarkⅡで自分の手で実現できるとなれば、飛びつきたくなる気持ちは抑えられない。もちろん今までのSteadicamは値段が高いだけでなく、オペレートするには長い練習と実践の積み重ねが必要とされる。

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最強の特機、Steadicam Pilot。この機材一台を持ち込むだけで、映像クオリティが一気に向上する。専門家でなくてもオペレーションは以外に簡単だ

ハリウッドにはSteadicamオペレーターという職業があるほどのものだ。しかし、ベストとアーム、そして液晶モニターのついたスレッドで構成されるSteadicamシリーズの最軽量モデルの「Pilot」であれば、EOS 5D MarkⅡなどの小型カメラを載せて自分で操作が可能だ。浮遊感たっぷりの映像を撮影するための最適なウエイトバランスを可能にでき、値段も格安であるだけでなくケースひとつに収まるお手軽さを実現。おそらく1日間の講習と練習の時間があれば、絵心ある人ならすぐさま作品に取り込むことができるだろう。もちろん、撮影までの設定やオペレートの方法は特殊であるために「誰もがすぐ」というわけには行かないが、レンタルをしてでも撮影にとりこむ価値のある映像をSteadicam Pilotは与えてくれる。

ちなみに撮影までの設定も簡単だ。まずはEOS 5D MarkⅡをスレッドと呼ばれる棒に取り付ける。この際にウエイトバランスを取りつつカメラの水平が保てるようにしながら、各ねじや取っ手部分の位置を調整する。大切なのはドロップタイムだ。スレッドの下部にあるモニターを持ち上げて、下に落ちるまでの時間のことだが、これを大体2秒くらいの設定にする。バランスがとれたら、ベストを体にがっちりと装着。そしてアームを取り付けて、あとはアームの先にスレッドをつければ撮影準備完了だ。慣れたひとであれば、15分程度で設定を行うことができる。アームの調整も細かく可能で、詳しい内容は割愛するが、是非とも一度はSteadicamに挑戦していただきたい。

俯瞰も立体的なワークも問題なし~ジブを活用しよう

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そしてもう一つの特機が「ジブアーム」だ。私が愛用するのがLibecのJB-30というジブだ。ジブというとクレーンの小型版という印象が強いので、どうして上下の動きのある映像を想像しがちだが、ジブは小型で小回りが効く為レールを引いたドリーショットや、水平の横に動くパンショットなどが簡単に狙える。

とにかく乗用車で運べるジブアームはセッティングも10分ともかからず、簡単で使いやすいのが特徴だ。もちろん動きをつけなくても俯瞰の映像や足元の画などを演出することも可能で、ショットによっては一人でカメラコントロールさせることもできる特機である。私の中では「クレーンの小型版」というよりかは、「三脚の進化版」という捉え方をしている。もちろん大概の撮影はリアとフロントに2名のオペレーターを配置するが、カメラが軽いためリアの錘もそれほど載せなくても問題ないためとてもコントロールがしやすい。

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フォローフォーカスをつければ、ワークしながらのフォーカスアクションも可能。立体感のある動きを演出することができる

個人的には俯瞰の映像がすぐに撮影できるところがジブアームの最大の魅力であると感じている。三脚やハンディワークでは絶対に捉えきれない角度の画角を攻めていけるところがとても実用的だ。EOS 5D MarkⅡならではのジブワークは、非常に多様な映像画演出を生み出してくれる。

これらの特機を駆使して撮影されたのがこのムービー。権利の関係で無音だがご了承いただきたい

最近思うこと

最近心から感じることは、EOS 5D MarkⅡの捉える映像の美しさに加えて、ハリウッド映画やドラマ、CMなどでしかお目にかかれなかった特機演出を簡単に現場に持ち込めるようなったことへの驚きである。もちろん特機という目線だけでなく、周辺機器や新しいワークフローなど、様々な引き出しを私たちに与えてくれるEOS 5D MarkⅡの可能性がこれからもとめどなく広がっていくのだろうと思うとワクワクしてならない。

WRITER PROFILE

江夏由洋

デジタルシネマクリエーター。8K/4Kの映像制作を多く手掛け、最先端の技術を探求。兄弟でクリエイティブカンパニー・マリモレコーズを牽引する。