第2のゴールドラッシュとなるか?レアアース、レアメタル業界の基幹会社 Molycorp

いろいろなハイテク製品の製造に不可欠な材料としていわゆる希土類元素(レアアース)、希少金属(レアメタル)の生産供給面で世界の93%を占める中国が昨年7月にその生産や出荷面で国家管理下に置くと言う政策をとった事から、結果としてその輸出総量を72%に下げる事となり、その国際価格が平均して6倍の上昇となり、品種によってはこの1年間で数十倍となる高騰を示し、さらにそれらの供給面で滞って安定購入が困難となり国際的な大きな問題点となっています。

レアアース業界のトップ会社Molycorpの本社ビル
デンバーの南東のGreenwood Villageに在るハイテクパークのDenver Technology Centerを北の端から南の端まで回遊しながら縦断しているDTC Parkwayの中途に在るMolycorp Minerals社のビルです。 Molycorp社の社名の「Moly」は多分Molybdenum(モリブデン)のことだと思われます。 コロラドのロッキー山中にはモリブデン鋼の製造に必要なモリブデンの鉱山があってモリブデンの市場価格が安くなると操業を停止し、高くなると操業再開するといった状態ですが、現在市場価格が高くなっているのでその掘削が行われています。 Molycorp社は当初モリブデンの採掘の事業でスタートしたものと思います。

ところで、過去のこのレアアース、レアメタルの生産に関する経過を見てみますと、第2次大戦以降その需要が増加するのに応じて世界のその生産量は増加の一途をたどって来ていますが、アメリカでは1965年よりコロラドのレアアースの専門会社であるMolycorp社がイニシアティブをとって、ロッキー山脈を始めとしてユタ州やアリゾナ州そしてカリフォルニア州の砂漠地帯などを中心にレアアース、レアメタルの掘削事業が始まり、1985年迄には世界需要の半分をアメリカで生産する様になりましたが、その後その掘削、精製工程で使用する水の汚染流出が環境問題として大きくなり、2002年にはアメリカ国内での生産は完全停止する事となって現在に至っています。

1985年よりその掘削や精製工程についての技術ノウハウを有するコロラドのMolycorp社を始めとするアメリカの技術は中国の鉱山業者に技術移転されて、中国でのレアアース、レアメタルの生産が開始されました。


その後中国では世界の需要の拡大に伴ってその生産が飛躍的に拡大し、全世界の生産量のレアアースでは97%、レアメタルでは93%もの占有率を占める様になって、ネオジウム、サマリウム、Dysprosiumをはじめレアアースの17種類の金属全てを世界へ供給しており現在に至っております。

コロラドは1980年代前半のゴールドラッシュ以来その鉱山技術では高いノウハウや経験を有する会社が例えば金におけるNewmont Mining社の様に世界的な規模での掘削事業を展開する様になり、レアアース、レアメタルの世界ではこのMolycorp社がそれに相当します。

Molycorp社は現在中国以外の世界で最も多量なレアアースの掘削鉱石を有している会社で、アメリカでは特に強磁力マグネットに不可欠なレアアースメタルを産業界に供給している唯一の会社となっています。

コロラド州にはそのレアアース、レアメタルのアメリカ国内での掘削が盛んになった1985年当時ではコロラド州内にはその掘削事業がロッキー山脈中の各所で行われて、その合計箇所数は規模の大小は有るもののなんと7300箇所という膨大な箇所で行われていました。

その主要な理由としては、コロラドで古くより行われて来た、金の採掘、亜鉛の採掘、石炭の掘削、オイルシェルの掘削、などの事業産物の副産物としてレアアースメタルが得られる事が分かっており、それらの鉱山採掘事業の経験を活かしてレアアースメタルの採掘、精製を目指していたからです。

ちなみに、コロラドのこうした環境から最近のコロラド州内の地質調査による有望な主要埋蔵個所に付いてリストアップしてみますと、

鉱山 個所数 多く産出する副産物
亜鉛 143 銀、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム
リチウム 1 リチウム
レアアース 2 レアアース
セレン 9 セレン
テルリウム 8 テルリウム
ペグマタイト 11 高純度シリコン

等となっています。

「まさに新たなゴールドラッシュだ!」とデンバーの地質学者のBrad Van Gosen氏は言っていますが、「特にレアメタルのチタンの埋蔵量ではコロラドはアメリカ内では最も多く、レアアースについても有望な土地柄であり、あとは試掘を行ってその成分の含有量の評価を拡大する事が必要なだけだ。」と言っています。

こうしたアメリカでのレアアースの自給を目指す動きに呼応しての最近の目立ったニュースを下記に2件紹介します。

  1. デンバーのダウンタウンに本社を置くGeovic Mining社はニューメキシコ州の南部のOtero Mesa地区の5平方マイルの土地の取得契約を行い、ここでレアアースの掘削精製事業を展開すると発表しています。 既にニューメキシコ州の鉱山鉱物資源局からの認可を得ており、連邦土地管理局への書類申請も済んでいるとしています。
  2. デンバーの南東に在るGreenwood VillageのDenver Tech Centerに本社を置くMolycorp社はアリゾナ州Tollesonに在る日本のSantoku(三徳?)社の子会社でレアアース合金やレアメタルの製造をしているSantoku America社を1750万ドルの現金で買収した、と発表しています。 これによって、Molycorp社ではレアアースメタルの原料から合金に加工するまでの一貫した工程を手中にして、顧客への付加価値の高いサービスを行える様になる、としています。
レアアースの掘削精製のGeovic Mining社の本社の
入っているビル
デンバーのダウンタウンの中心の17th Streetに面したTabor Center ビルにGeovic Mining社の本社が在ります。 同社はコバルトやニッケルを主体とする鉱山会社で、その精製技術を活かして今回ニューメキシコ州でのレアアース掘削精製の事業へ乗り出す事になっています。
Geovic Mining社の入っているTabor Centerビルの1階入り口の時計看板
Tabor Centerはデンバーのビジネスの中心を為している企業が多数集まっています。写真はTabor Centerビルの1階入り口の部分の上に据え付けられている大時計で、併せて「1200 SEVENTEENTH Street」のハウス番号表示板が付けられています。

そもそも、アメリカのMolycorp社などがアメリカ国内でのレアアース掘削事業から手を引く事になった原因としては、その精製過程で使われる水の環境汚染問題の他に中国の生産コストに全く対抗出来なくなった事があり、これらの2点についての改善がアメリカでのレアアースの自給自足を計る上での不可欠な条件となっています。

また、レアアースメタルはアメリカに於ける軍事用の目的にも重要なものである事から、アメリカ国防省ではこのレアアースメタルの戦略的な安定確保を目的とする契約をMolycorp社の様な民間の専門会社と締結したり、また、レアアースメタルを新たに事業として生産を目指す企業のスタートを促す為に、それを援助する債務ローンの保証を行うなどの政策を打ち出しています。

一方、デンバーのMolycorp社では、ネバダ州のラスベガスから南へ60マイル(96.5km)ほどのカリフォルニア州との州境にある砂漠地帯に在って、かつて1965年から1985年迄の間アメリカのレアアースメタルの主要供給鉱山として活躍した、露天掘りのMountain Pass鉱山の再整備を行って、操業再開を行うと発表しており、この事業所の再開によって現在同社が供給している年間2万トンを2倍の4万トンまで引き上げる事を準備中としています。

そして、環境汚染問題については、現在技術的なブレークスルーを計ったクリーンプロセスが提供出来る様になっており、また、製造コスト面では同社の新プロセスであればレアアースメタルの中国の平均コストが現在2.54ドル/ポンドであるのに対して半分の1.27ドル/ポンドで行う事が出来る、としています。

この様にMolycorp社では、この増産体制に併せて同社の有しているクリーンプロセスや現場で持ち歩き出来る携帯型のX線を使った鉱石の含有物質の診断装置などの先端技術を駆使して、中国のレアアースメタルの政治戦略に対抗して、アメリカ国内からの本格的な自給体制の確立を目指すと言っています。

チタンの専門メーカーTitanium Metals Corporationの
入っているビル
レア金属のチタンに特化して事業展開しているTitanium Metals Corporationの入っているビルです。 デンバーのダウンタウンのBroadwayとCalifornia Streetそして20th Streetとに挟まれた三角形の土地に建っている高層ビルで、このビルの最上階43階を同社が使用しています。
Titanium Metals Corporationの入っているビルの1階入り口
California Street側から見たTitanium Metals 社の入っているビルの1階部分です。入り口の柱に書かれている「1999」の数字は、このビルのハウス番号である「1999 Broadway」です。

【ご参考】レアアースは下記の17種類の金属元素で代表されます
レアアース名 元素番号 利用対象例
Scandium 21 スタジアムなどの夜間照明ランプ
Yttrium 39 レーザー
Lanthanum 57 電気自動車用バッテリー
Cerium 58 レンズ研磨剤
Praseodymium 59 サーチライト、航空機用部品
Neodymium 60 強力永久磁石
Promethium 61 携帯X線装置
Samarium 62 光学ガラス
Europium 63 CFLランプ(小型蛍光ランプ)
Gadolinium 64 中性子計測装置
Terbium 65 強力永久磁石
Dysprosium 66 強力永久磁石
Holmium 67 ガラス色彩調整
Erbium 68 金属合金
Thulium 69 レーザー
Ytterbium 70 ステンレス
Lutetium 71 ────

一方、レアメタルはレアアース17種を含む47種の金属元素で、その精製採取が技術的にもまた経済的にも難しいが重要な金属元素の総称でリチウムやチタニウム、高純度シリコン、セレニウムなどがそれに含まれます。

WRITER PROFILE

萩原正喜

米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。