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  7. [オタク社長の世界映像紀行]Vol.23 蘇る地方の映像制作〜京都編
Column

Vol.23 蘇る地方の映像制作〜京都編

2012-07-13 掲載

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日本式動漫基地はクロスメディアを目指す

この太秦の地に、特区を目指した太秦メディアパークが作られる

京都で行われている様々な映像振興計画の中でも、中でも注目すべきは、コンテンツ産業国際戦略総合特区だ。これは、京都の太秦に「太秦メディアパーク」として映画やアニメ関連企業を集積し、「外国人を含む、クリエイターの誘致・支援」「クロスメディアを目的とした著作物の集結と特区内での著作権利の整理」、そして太秦の特権とも言える「オープンセットの常設、共同運営支援」の3つの柱を軸に、コンテンツ制作をリードしていこうというもので、ゆくゆくはこの太秦メディアパークと、京都市内のマンガクラスター、京都リサーチパークに加え、京都府南部の国立国会図書館周辺を中心としたけいはんな学研都市をも巻き込もうという、全府的な活動を狙う、野心的なプランである。

私はこのコラムにおいて、従前より、中国の急速な映像産業の発展の背景には「動漫基地」と呼ばれる、アニメやCGに特化した国家的映像拠点が中国各地にできている事を指摘してきた。そして、日本においても、政府や自治体指導による動漫基地制度が必要である、という主張を繰り返してきた。なぜならば、アニメや映画などの映像産業は、今や国際戦略産業で有り、単にコンテンツ販売による直接的外貨獲得手段であると言うだけでは無く、映像の相手国進出の結果起こる文化的紹介効果により、いわば貿易の先駆けとして相手国に入り込んでゆくという力を持っているからである。日本でもついに、こうした主張を実現する自治体が登場してきたのは、何とも嬉しいことだ。

京都府によるこのコンテンツ産業国際戦略総合特区は、いわば、日本型の動漫基地とでも言うべきプランであるが、単に中国の動漫基地のようなアニメやデジタル映像に留まらず、ゲームなどのエンタメ分野、そして教育分野、観光分野、果ては医療分野にまで幅を広げていこう、という点が大きく異なっている。

これは、そもそもアニメやデジタル映像に使われている技術や機材が、コンピュータグラフィックスや高速なネットによる情報転送技術など、結局のところ、他のエンタメや教育、観光、そして医療にも広く使われているものであることに注目したものだ。つまり、どうせ同じコンピュータと同じソフト、同じようなカメラ、そして同じような高速ネットワーク要求があるのであれば、そうした機材や設備を多ジャンルでクロスメディア利用して投資効率を上げていこう、というのがこのコンテンツ産業国際戦略総合特区の特徴なのである。

これは、単に、インフラをクロスメディアで共用化して投資コスト能率を上げると言うだけで無く、そこで作られたコンテンツもクロスメディアで相互利用できるよう権利関係を整え、最終的には一番高い産業コスト、すなわち、人間の教育コストも能率化していこう、というのがこの特区の目玉となる。

つまり、今までの例えば「映画」「アニメ」「ゲーム」「教育コンテンツ」「観光コンテンツ」「医療映像」etc…などなど、縦割りで人材交流の無かったジャンルに京都府の用意したインフラを通じて交流を持たせることにより、それぞれのジャンル間を人材が移動できるようにして、単独ジャンルの景気動向や技術的制限に囚われない人材育成をしていき、ゆくゆくは全く新しいクロスメディア産業を興していこう、というのが目標なのだ。

どうせ、使っているコンピュータもソフトもカメラも、そして何よりも全ての根本となる映像理論も同じものなのだから、関わるジャンルに縛られてしまうのではなく、それらを総合的にこなせる人材を育成していって、多ジャンルを自在に使いこなすことによるリエゾン効果を狙おう、という野心的なプランなのである。そのために、京都府のこの特区案では、日本の自治体には珍しく、国内の企業やクリエイターの誘致だけで無く、海外の天才クリエイターも積極的に呼ぼう、という姿勢を明記してあるのだ。

こうした、どうせ同じ機材を使うんだからジャンルが異なっても同じ人間が制作すればいいだろう、とでも言いたげなクロスメディア展開というのは一見無茶苦茶なアイディアにも聞こえるが、現実を見るとそうでも無いことに気がつく。実際、例えば、私の率いるアイラ・ラボラトリにおいては、単に表看板のCG合成や映画・アニメ制作だけをやるのでは無く、依頼があれば、ゲーム制作、パチンコの企画立案制作、ネットコンテンツ制作、果ては医療機関や研究機関内部の研究映像まで作っている。そして、その根底を支えるのは、映画を中心とした映像理論で有り、その映像理論に支えられた映像制作技術だ。

弊社だけで無く、大きく古いスタジオ設備を抱えるなどしてよほど一つのジャンルにこだわらざるを得ない企業で無い限り、どこの企業でも、ことデジタル映像制作に関わる会社であれば、表看板にする本業以外の映像を作ったことはあるだろう。特にネット映像や立体視映像などは、ものは試しと、どこの会社でも一、二度は作ってみたことがあるのでは無いだろうか?また、例えば最近では、映画の監督がゲームを作ったり、ネットコーディネーターが教育番組を作成したりといった動きも存在している。実際の運用がそうなのだから、人材育成からその運用にあわせるべきというのは、非常に筋の通った話なのだ。

とはいえ、こうした試みが、まだまだ未知数なのも事実だ。同じ機材や映像理論を使っている者同士で人材交流が必要とは言っても、各ジャンル間の壁は厚い。特区で作られたコンテンツの特区内での各クロスジャンルにおけるフェアユースについても、著作権法との絡みで色々と突破しなければならない問題も多いだろう。

京都府にも予算が無限にあるわけでは無く、今のところはインキュベート施設の提供と、各種補助、セミナー、そしてコンテスト支援を中心としたありきたりともいえる産業振興が中心だ。京都の映像の歴史上やむを得ない面もあるが、先に述べた大規模セットを用いた旧態依然とした重厚長大型映像制作のこだわりも強く、せっかくのコンテストの賞金も、結局はそうしたセット撮影に投資することが前提とされてしまっているという問題もある。

しかし、ようやく日本の映像産業にもこうした自治体主導による集積効果を目的とする地域が誕生したのは素晴らしい事であると思う。この京都の動きは、硬直化してしまった日本の映像産業が変わり始めている証ではないかと思えてならないのだ。私は、この動きをしっかりと見つめ、応援してゆきたいと考えている。

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WRITER PROFILE

手塚一佳 デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2012-07-13 ]
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手塚一佳 デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。


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