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Column

Vol.24 アジア映像の都、上海!

2012-08-07 掲載

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ニッポンクオリティの制作会社と、中国クオリティの日本大企業

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弊社取引先でもある上海三聯社の金氏と張氏。同社はCG映像を得意としている。二人とも日本語は流暢で、時に金氏は、日本の博士号を持っている

このように裾野が広がれば、当然、上のレベルも跳ね上がってくる。作品だけ見ても、中国企業の作る映像は、もはや先進国のそれに若干劣る程度であり、完全に追いついてくるのも時間の問題であることが見て取れる。日本の映像製品であっても、中国外注の映像は、ちょっと前までは一目で見抜けたものであったが、今、それをエンディングテロップを見ずに見抜くことは難しいだろう。

しかし、このコラムで繰り返し書いてきたように、中国沿岸部では、デジタル映像関連の人件費が人月計算(作業スタッフを1人、丸々1ヶ月押さえた時の機材管理費など全て込みの総額計算)で35万円を超えつつある。

中国ではまだまだ技術が発展途上で制作速度も遅く、なによりもサービス残業や休日出勤は普通やらないので、大体、時間あたりで日本の1.5〜2倍の人員が必要だ。つまり、日本人換算では50万中盤〜70万円/月という高額になってきており、これは事実上日本よりも高い。報酬が日本に近づいてしまった以上、中国映画産業は、今までの安かろう悪かろうでは無く、日本の速度とクオリティを求められるようになってきている。

ここで中国が有利なのが、映像クリエイターが中国国内では非常な高給取りであり、待遇的にもエリート待遇である、という点だ。世界各国共通で、映像業界の給与は大体人月の3分の1程度なので、人月35万円ということはクリエイターの手取り月収ですでに10万円を超えている、ということである。平均年収80万円程度の上海の中でも映像クリエイターが中国の世間一般的に見てもかなりの高給取りであることが見て取れる。沿岸部の映像制作会社は、そうした高給を背景に中国全土から優秀な人間をかき集めており、それによって映像品質の向上を図っている。

代理店やキー局に制作費の大半を持って行かれて赤貧洗うがごとしの日本の映像屋とは全く雲泥の差であるが、そうした差が、日中の映像のレベルを一気に詰めてはじめている。平たく言えば、日本と異なり、中国ではちゃんと現場にお金が回っているのだ。

私の会社アイラ・ラボラトリの取引先の中国各社を見ても、博士号を持っていたり多国語を使いこなしたりなどそのメンバーは極めて優秀で、よくいえば野武士の風格漂い悪くいえばエリートの正反対の性質を持つ日本の映像クリエイターとは明らかに素性が異なっている。もちろん、エリートであれば映像が良くなると言うものでも無いが、最新機材への理解も早く、映像理論の飲み込みも早いのは、今のような機材激変の時期においては明らかな有利点だ。

このように、優秀なスタッフが日本と変わらない機材を使って制作をしているのが、今の中国映像事情である。普通に考えれば、そう遠くない未来に、日本と変わりないクオリティを出せるようになるはずだ。ただし、そうなれば、価格的にもさらに跳ね上がってくるとは思われる。その時、今のような日本から中国へという仕事の流れだけで無く、中国から日本へという仕事の流れも発生してくるのだろう。近い将来、また両国の映像事情に、大きな変化がありそうな予感がする。

日本に帰ってきて落ち目を実感

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上海でも最も古い観光地、豫園湖心亭。ここではなんと、取られたお金が返ってきた!中国は変わったのだ

中国の民度の上昇は、さらに、翌日行った観光地、豫園で思い知ることとなった。豫園中心地には、著名な茶館である「湖心亭」があるのだが、中国観光地で昔から良くありがちなことに、ここで、100元を店員にくすねられてしまった。手口は、観光地に良くあるハンドマジック。領収書を書く瞬間に胸ポケットのペンを探す振りをしてお札の一枚を放り込み、カネが足りないと請求してくるという手口だった。

これをやられてしまうと、胸に手をやった瞬間に腕を押さえられない限り、対抗する手段は無い。中国は特に外国人の暴力行為には厳しいので、喧嘩にでもなればこちらが一方的に喰らい込む羽目になりかねない。しまったと思ったが後の祭り、勝ち誇る店員を前に、素直にもう100元払うしか手は無くなってしまっていた。

しかし、今までと違ったのはここから先だ。ぶつぶつと文句を言い、警察に相談する算段を自社スタッフと相談しながら茶を飲んでいると、次第に店員の顔色が悪くなってきたのだ。見れば、周囲の店員に厳しく文句を言われて居る様子で、結局、最後には「落ちてましたよ」といってこちらに100元札を返してきた。つまり、犯罪行為を行った店員一人はともかく、店全体としてそうした犯罪行為を許容しない雰囲気になって居たのである。これには正直驚いた。

ちょっと前の中国観光地であれば、もし周囲の店員がその店員の犯罪に気づいたら「俺にも驕れよ」という流れになって、共犯になったはずだ。何しろ100元は中国ではまだまだ大金だ。しかし、明らかに今回は違っていた。他の店員のプライドが、それを許さなかったのである。

日本ですら、こうした店員仲間の不正をちゃんと叱る店は少ないだろう。そういえば、前回の大連でも、タクシーで無くしたiPhone4があっさりと帰ってきて驚いた。iPhoneなんて言ったら、大連の平均月収よりも高い代物だ。私は、今回の旅でも、極めて高い中国の民度に圧倒されてしまったのだ。

このように、圧倒されっぱなしの今回の中国上海事情であったが、ハプニングは日本に帰ってから起こった。全日空の最終便で成田空港に到着して荷物を受け取ると、私の預け入れた鞄に切り傷と思われる穴が開いていたのである。切り傷自体は中国で付いたものか、日本国内で付いたものかはわからない。幸い、傷は鞄の外だけで内張は傷ついたものの破られて居らず、中の荷物は大きく凹んだだけで無事であった。とはいえ、ここまでは海外旅行にはつきもののよくある話だ。

違ったのは、ここから先だ。傷を見つけた私は、早速、全日空の荷物破損受付所に行ったのだが、係員は鞄の内側を見ることすら無く、鞄をちらっと横目にした瞬間「傷なんて無い」と言い放ったのだ。

鞄に明らかに内張に達する穴が開いていたため、鞄を空けて内側を見せればその傷の深さは見て取れる。しかし、最初に傷が無いといった手前か、次々に仲間を呼んで、最後には3人口を揃えて「プロの目で見て穴なんて無い」と言い出したのだ。内張が剥がれるほどのあからさまな傷なので、それは無かろうと文句を言ったが、すると、保険を使えばいいとか口々に勝手なことを言い出した。

しかし、私のように旅行を頻繁にしている人間が保険を使うと、次回の保険利用時に問題が生じることがある。今回のように責任が明確な場合には、航空会社にちゃんと対応をして貰わないと困るのだ。そもそも保険を使えと言うことは、彼女らにもこの鞄の傷が見えていると言うことでは無いか。

更に文句を言っても、ぶつぶつとこちらの質問とかみ合わないことを言ったり携帯電話で電話を掛けるばかり。電話機に呟いて居る言葉を聞けば、終電が近いだの他の人は引き下がっただのと、係員の個人的な都合だ。終いには、鞄に穴が開いてないか確認をしたいから水をかける、とまで言い出した。これはたまらない。なぜなら、私の鞄は紙を積層してできていて、表面のコーティングで水を弾いている。傷に水などかけられれば水が染みこみ、鞄がダメになってしまう。そんな事もわからない素人が、自分たちはプロだと言い張ってでたらめを言っているのだ。

さすがにこれはまずいと思い「せめて工場に送ってプロの目で見て貰ってくれ」と申し出ても「工場に送ってもいいが、それはお客様の(自己)満足のためであって、自分たちこそプロだから最終的な判断は自分たちがする」と言い張るばかり。

口にする荷物破損に関する規則の数々も、規約にも約定にもどこにも書いてない口から出任せの嘘ばかりであきれ果てたが、会話を録音してある旨を告げるとそこから先は黙り込んでしまった。つまり、不正を働いている、もしくは正確なことを口にしていないという自覚は、彼女ら自身にもある、という事である。これが今の日本の現状なのだ。仲間の不正ですら見逃さなかった中国の店員の民度の高さとは、あまりといえばあまりの落差ではないか。

結局、鞄は、用心のため一度全日空と提携している修理工場に個人的に先に見せた上で、全日空に送付をして修理を頼むことにした。工場では、やはり、どう見ても穴が開いていると言うことであったが、その後、送付をした全日空からは「穴が開いてないと思うが念のために工場に送った」という不可思議な電話連絡が来た。

怪しげな回答に、用心して事前に工場に見せておかなければ、傷が無かったことにされてもみ消されてしまったのでは無いかと思えて仕方が無いのは、杞憂であろうか?それとも、本当にこのままもみ消されてしまうのだろうか?しかしなんというか、中国と比べ、あまりにも情けない話ではないか。日本はこれでいいのだろうか?

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WRITER PROFILE

手塚一佳 デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。


[ Writer : 手塚一佳 ]
[ DATE : 2012-08-07 ]
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手塚一佳 デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。


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