今年は次から次へと魅惑的なカメラがデビューし続けています。ことに動画一眼からENGタイプまで、各社揃ってラージセンサー搭載カメラの充実ぶりは、いやもう目を見張らんばかり。スペックを追いかけ、各モデルの特徴を把握するのも一苦労!という、嬉しい悲鳴の新製品ラッシュ。そんな中、巷の流行をどこ吹く風と受け流し、ひたすらに唯我独尊、一度見たら絶対に他と見紛うことなく記憶に残る斜め右上仕様のカメラあり。その名は、JVC GY-HMQ10。

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GY-HMQ10はフルHD動画(1920×1080)×4ストリームを、汎用SDカード×4枚に並列に書き込むことで4K動画(3840×2160)収録を実現するという、コロンブスの卵的な新発想カメラ。トレンドである「ラージセンサー」や「レンズ交換式」あるいは「LOG(またはLOG的)収録」といったキーワードは、とりあえず全部まとめて無視!という漢っぷり。代わりに最近ようやく “次に目指すべき荒野” として耳にする機会が増えてきた「4K収録」の垣根と敷居を、本格的な普及のかなり手前でドドーン!とまとめて運動会カメラのレベルにまで引き下げてしまうという快挙(というか暴挙?)を成し遂げた革命的な製品です。

以前、一年ほど同社製の小型業務用カムGY-HM100を所有し、使っていたことから、個人的にGY-HMシリーズには思い入れがあるボクのもとにテスト用の実機が届いたのは、6月の中旬。ちょうど梅雨入りの時期と重なってしまい、天候的にはちょっと困った展開でしたが、それから丸々1ヶ月に渡り、たっぷりと堪能させて頂きました。

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また、Nikon D4、D800のインプレッション記事を書いた時と同じように、試用後にはJVCさんへ伺って開発関係者の皆様にお話を伺う機会もいただきました。今回のVol.1では、まずは製品の全体像を把握してもらうべく、その座談会の様子をお届けします。

GY-HMQ10:気になるポイント一問一答

日時:7月24日(火)
於:JVCケンウッド本社ビル(横浜市東神奈川区)
ご協力:中原氏、熊谷氏、塚田氏

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フルHD×4ストリームをSDカード4枚に!

raitank:なんといってもまず最初に伺いたかったのが、4K動画を4枚のSDカード、しかも特に高速なものではなく、ごくごく普通のSDカードに分割収録するという、なんとも非凡なアイデアは一体どこから出てきたのか?ということなんですが(笑)。

塚田氏:現在はH.264コーデックが4Kフル解像度をサポートするところまで来ましたが、開発初期には4K解像度をサポートする圧縮コーデック規格が世の中にありませんでした。フルHDの60pという規格がようやく固まりつつあった頃のことです。ではどうしよう?ということになり、ごく自然な流れとして高ビットレートな4Kの記録ストリームを4つのフルHD60pに分割する事ができればいいんじゃないか?という発想で開発がスタートしました。これにより、SDカードを使った4K記録が可能になったわけです。

raitank:ははぁ、「自然な流れ」ですか…(笑)。

塚田氏:ええ。ただし単純に4分割しているわけではなく、収録するのは圧縮画像ですからランダムに発生する圧縮ノイズがあっても境界線がうまく繋がるよう、専用LSIをベースにした様々な技術開発が盛り込まれています。ごく稀に、MPEG圧縮が苦手なシーン、例えば激しい水しぶきが飛ぶ滝の撮影などで境目が見えることを想定して、 オプションで上下左右、境界上のデータを16ピクセル分、重ねてぼかす「エッジブレンド機能」も用意しました。ですが、よほど圧縮に負荷のかかる難しい状況でなければ、基本的にこの機能はオフのまま使っていただいて問題ないと思っています。

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raitank:そうですね。ボクも1ヵ月間「エッジブレンド」なしで使い倒しましたが、境界線が見えたテイクは一つもありませんでした。…ところで、そもそもHMQ10は誰がなにを撮るためのカメラとして開発されたんでしょうか?

塚田氏:まずは4Kということで、広範な情報を遠くから俯瞰して写す監視カメラ的な用途。あとで必要な部分にズームしても解像感を保っているような、解像感の高い映像。もちろん、お客様によって違ったニーズと要望がありますが、景色だったり、観光地の紹介などにも最適だと思っています。センサーのサイズが大きいものではありませんから、それなりの性能限界はありますが、ただ4K解像度の映像がこのサイズのカメラで撮れるということに意義があります。

熊谷氏:たとえばスポーツ中継などで、今は引きと寄りを撮るために何台もカメラを出しているところをHMQ10、1台で広角で撮って頂いて、後ほど編集時にこちらの人のアップ、あちらの人のアップ、といった具合に必要な部分を抜き出して、寄りの絵として使う、といったこともできますね。

HMQ10は4Kカメラではありますけれど、私たちは現在2Kカメラとしてのご提案もしているんです。カメラに用意された4つのHDMI端子すべてを4K TVに接続して頂きますと、高精細な4K映像をご視聴いただけます。ですが、その4本のHDMIケーブルのうち3本をはずして1本だけの接続にして頂きますと、1/4画面だけを表示する2K出力、もしくは4K全体を縮小してのフルHD出力に切り替わります。普通のHDTVでもお楽しみ頂けるんです。

WRITER PROFILE

raitank

raitank blogが業界で話題になったのも今は昔。現在は横浜・札幌・名古屋を往来する宇宙開発系技術研究所所長。