多くの人が足を止めてデモを見ていた今年のオートデスクブース

今年のInter BEEの編集合成関連ソフトで話題を集めていた展示といえば、大幅な価格改定やインターフェイスを一新したオートデスクのSmoke 2013ではないか。オートデスクブースの展示やシアターデモはSmoke 2013を中心に行われていたが、スクリーンを立ち見で観覧しようとしても混雑で見辛いほどの盛況だった。オートデスクというとテレビ番組や映画、CM業界のツールというイメージが強かったが、Smoke 2013の登場によってmオートデスク製品を使ったことがない人たちも、かなりの人数がブースで足を止めてシアターデモを見つめていたようだ。そんな今年のInter BEEで多くの人の注目を集めたSmoke 2013について、オートデスクのマーケティング担当 一ノ瀬真一郎氏に新製品の魅力について聞いてみた。

IRIXをベースにしたターンキーシステムからスタートしたSmokeの歴史

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オートデスク株式会社 マーケティング担当 一ノ瀬真一郎氏

SmokeといえばDiscreet Logic社時代の1999年に誕生した非常にハイエンドな編集と合成に対応したシステムだ。まずはSmokeの誕生した頃の様子からシステムや価格などについて聞いてみた。

一ノ瀬氏:Linux上で動作していたSmokeよりももっと以前のDiscreet Smokeの時代の話になります。その当時からビジュアルエフェクトやコンポジットはInferno、Flame、Flintという揺るぎないラインナップがありましたが、Smokeはさらにそこから編集を行いたいという方向けのシステムでした。リリース当時はシリコングラフィクスのOctaneを使ったIRIXベースのハードウエアと一緒に販売するターンキーソリューションでした。その後IRIXからLinuxへの移行などを行うこともありましたが、もっとも大きな変化は2009年のInter BEEで発表したSmoke for Macです。初めてMacのプラットフォームに対応したSmokeで、ソフトで購入することができるようになりました。価格も大きく変化してきまして、IRIXのターンキーシステムで販売していた時代はシステム価格が数千万円でしたが、2009年のSmoke for Macは2,619,750円になりました。そして今年のNABに発表された2013バージョンでは53万5,500円と大幅に値を下げてきています。

従来のパワフルなエフェクトを継承しつつ、使い慣れたビデオ編集を統合

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大きく変わったSmoke 2013のインターフェイス。特にタイムラインの部分に注目だ

次に聞いたのはSmoke 2013の特徴だ。ユーザーインターフェイスの変更やConnect FXの搭載、システム要件といったところも大幅に見直されている。特にノードベースのワークフローを実現するConnect FXは注目の存在で、レイヤーベースのAfter Effectsとどのように異なるのかも聞いてみた。

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画面左が素材を自由にコントロールすることができるノードベースのコンポジティングツール「Connect FX」だ

一ノ瀬氏:Smoke 2013の価格以外での大きな変更はユーザーインタフェースの刷新です。SmokeはInfernoやFlameのインターフェイスをずっと踏襲してきまして、ハイエンドのポスプロさんや局のエディターの方には最適でしたが、価格改定を行ってもっと広く使っていただくためには、従来のインターフェイスではちょっと使いにくいという判断になりました。特に変わったのはタイムラインの部分です。ここだけみるとFinal Cut Proに近い印象もあります。

ビジュアルエフェクトの部分に関しては従来のSmokeの特徴を色濃く残しています。最上位のFlameにはBatchと呼ばれるノードベースの効率的かつ強力な合成環境がありますが、Smoke 2013ではConnect FXと呼ばれる従来の使いやすいノードベースのビジュアルエフェクトインターフェイスをほぼそのまま搭載しています。Connect FXがレイヤーベースのソフトと違うところは、いろんな組み上げてきたエフェクトをすぐにほかの素材に適用できるところです。ノードを繋ぎ変えるだけで一瞬でてきますので、今まで作り上げてきたものをどんどんとつなぎ合わせて使い回すことができます。

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画面中央のように素材と光源を空間に配置して、シーンの明るさや雰囲気を変更できるリライティング機能

また、2013バージョンになってからシステム要件が低くなったのも特徴です。2009年に発表したSmoke for MacではハイエンドなMac Proにグラフィックカードは高性能なモデルを推奨していました。ですのでその時点ではMacBook ProやiMacで動作する雰囲気はありませんでした。しかし、Smoke 2013ではプラットフォームの敷居を大きく下げました。会場でもiMacでもデモをしていますし、最近発売されたMacBook Pro Retinaディスプレイモデルでの動作も十分できるようになっています。

3Dとの連携は特に強力

では、Premiere ProやAfter Effectsを使っているユーザーがSmokeを導入することで何が変わるのか?そのあたりを突っ込んで聞いてみた。

一ノ瀬氏:Premiere ProやAfter Effectsと比較するならば、Smokeは1本で編集も合成もできるところです。Premiere ProやAfter Effectsはダイナミックリンクで連携できるとはいえ、ソフトは入れ替わりUIも異なります。それがSmokeには1本で全部できます。われわれとしてはクリエイターの思考をできるだけ止めたくないと思っています。Smokeであればすべてが1本の中で完結できる、というのは大きなアドバンテージだと思っています。After Effectsも練れたソフトでそれがいいという方もいらっしゃいますが、ぜひノードベースのSmokeも一度体験していただきたいと思います。

あとは3Dオブジェクトとのコンポジットです。われわれはMayaや3ds Max、Softimageのような3Dのソリューションをもっていまして、SmokeはFBXファイルフォーマットを読み込むことができます。Inter BEEの初日のユーザデモンストレーションでMayaをバリバリ使っていただいているCGプロダクションのポリゴン・ピクチュアズさんに米国のテレビで放送された「Transformers Prime Season 2」のメイキングのセッションを行って頂きました。スポーツカーからロボットに変形する登場キャラの1つの「バンブルビー」をMayaで制作して、3DオブジェクトをそのままSmokeで読み込み、バンブルビーが倒れたときのエフェクトをSmokeで作ったという事例を紹介していただきました。このような使い方はSmokeならではの強みです。あとは2012バージョンから搭載されているリライティングもウリです。3D空間にライトを配置すると物体にリアルなライトが投射されたり影が落ちたりレンズエフェクトっぽい表現ができます。3D空間を生かした合成は強力ですね。

こうしていろいろな魅力的な機能を備えていますが、われわれとしては他のソフトを使うのを止めてSmokeを使っていただくという勧め方はしていません。たとえば、従来のソフトをそのまま使っていただきながらプロダクションの中に一人Smokeアーティストがいれば、いつもとはちょっと違った表現ができたりSmokeなりの処理ができるとか、そういうのがあるかなと思っています。Final Cut Proを使われている方はSmokeを追加することでフィニッシングも合成もカラコレもできるようになります。キーイングテクノロジーには非常にパワフルなMaster Keyerも搭載していますし、色関係は圧倒的だと思います。

Smoke 2013の製品版の出荷は12月中旬を予定しているが、それまでに「プレリリース版」と呼ばれる、機能に制限を設けていない体験版を米国オートデスクのWebサイト(http://usa.autodesk.com/smoke-for-mac/trial/)で配布中。12月いっぱいまで使用可能だ。また、プレリリース版の使い方を日本語で解説したWebページもオートデスクの情報サイト「AREA JAPAN」内に開設されている。興味がある人はこちらの解説動画も参照するとよいだろう。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。