世界基準の超高精細映像制作の拠点を目指して!

首都圏以外で本格的に超高精細映像にチャレンジしているのが沖縄県である。去年からこの地域連携プロジェクトは動き始め、今年で2年目となる。総務省の4K/8K(スーパーハイビジョン)ロードマップにより日本でも今後は次世代の高度な放送サービス、日本文化の輸出といった高精細な映像コンテンツの需要拡大が予想される。そんな沖縄県の映像産業の活性化と雇用創出、次世代の人材育成、沖縄県固有のオリジナル映像コンテンツの販売・輸出を目的とした地域連携プロジェクトが立ち上がった。

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アドスタッフ博報堂・琉球放送・ビデオワークス/ITカレッジ

大型映像制作の手始めに立体視(ステレオ3D)からスタート

大型映像制作と一口にいっても、2012年の段階では4K映像制作の環境整備が首都圏の映像業界でもまだまだ整っていない事もあり、沖縄県ではまず大型映像制作の手始めとして実写ステレオ3D映像制作と沖縄オリジナルコンテンツの2D3D変換作業を同時にスタートさせた。

2013TAKANO_01_01.jpg 琉球放送のマスコットキャラクター「お日さまSUNちゃん3D」撮影風景。 実写ステレオ3D撮影〜編集〜上映までのトータルした制作をオール沖縄スタッフで行われている
■ビデオワークス沖縄(連携企業)

下地氏

(チーフカメラマン)


24年度事業で「お日さまSUNちゃん3D」の制作を行った。25年度は、沖縄県在住の外国人の視点から見た沖縄の魅力を3D映像化する試みを行っている。昨年来取り組んでいる県産ホラーコンテンツの3D化以外にも沖縄には、3D化に適した素材が多々あると思うので、幅広い分野での3Dコンテンツ制作を手掛けていきたい。また、専門学校ITカレッジ沖縄の協力を得ながら取り組んでいる2D3D変換に関して言うと人材の高度化と量産体制の構築が課題となっている。オリジナル3Dコンテンツの制作と並んで、2D3D変換の事業化に向けて人材育成、量産体制の構築に取り組んでいきたい。

沖縄にある独自コンテンツを世界へ!「オキナワノコワイハナシ 3D」

夏の風物詩とまで地元の人々から呼ばれるほどの歴史がある沖縄ホラードラマ「オキナワノコワイハナシ」。県内ローカル向けに琉球放送が10年前から制作をスタートし、今では毎年お盆に放送されている。沖縄在住のディレクターにより制作された2D作品ホラードラマが36本あり、この県産のコンテンツ財産を活かす道として2D映像から3D映像へ変換する作業が行われた。コンテンツの販売先は日本だけではなく、海外へのソフト販売も視野に入れている。今までの受け身的な体制から能動的な体制作りへとシフトし始めた。

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■琉球放送株式会社(連携企業)

大城史人氏

(琉球放送株式会社)


自社のコンテンツを2次利用するというローカルテレビ局として、今まで取り組めなかった課題に取り組む事が出来た。また、7月12日から9月16日まで地元商業施設「トミトン」での「オキナワノコワイハナシ3D」の興行は、約1万1千人の方にご覧頂き、一定の成果を挙げる事が出来た。

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ショッピングモールTOMITON(トミトン)「オキナワコワイハナシ 3D」上映にて約1万1千人を動員

■学校法人フジ学園専門学校ITカレッジ沖縄(外部協力)

当校ではビデオワークス沖縄の依頼に応えるべく、映像専攻コースへ沖縄県初のステレオ3D映像も学べる授業を取り入れ、24年度、25年度「オキナワノコワイハナシ」の3D化およびオリジナル3D映像制作に取り組んできた。

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2D-3D変換のためのロト作業を学ぶ映像専攻コースの学生(ITカレッジ沖縄)

企業からの技術指導を受けながら講師、学生でチームを編成し、計4本の2D-3D化とステレオ3D用CG制作及び合成作業を行った。当校にとって学生の就職先確保は大きな課題であり、本事業に携わる事によって、県内での超高精細映像産業の拡大に寄与し、その結果として本校学生の出口の拡大に繋がれば幸いだと考える。

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「お日さまSUNちゃん3D」のステレオ3D用CG作成及びコンポジットも行った

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JVCのリアルタイム2D-3Dコンバーター(IF-2D3D1)で視差調整をする城間司氏

城間司氏

(ITカレッジ沖縄映像専攻科講師)


ステレオ3D(以後S3D)の制作は両目用にフルHD2本分のデータを同時に撮影・編集作業するため、通常のハイビジョン映像制作の2倍のデータ容量を実制作の中で扱うことになります。またデータ容量が2倍ということから単純に通常のHD映像制作の2倍の時間と労力と思われがちです。実際に視差調整・2D3D変換のロト作業など行うと分かるのですが、労力がHD制作の2倍ではなく二乗と言われているのがよく理解できました。首都圏でも通常のHDサイズの作業が現状なのに対して、我々のS3D制作の経験は価値があり今後の高精細映像制作にはアドバンテージがあると思っています。

こういった大型映像であるS3D制作の経験を積むことで、今後進むであろうHDの4倍サイズの4K制作には直ぐに対応できると考えています。またS3Dワークフローで使用した撮影機材や編集アプリケーションも専用機では無いので4K用にアップグレードさせれば今後も使用する事が出来ます。このようにPCでの映像制作が標準化されて来たお陰で地方にもチャンスがあると感じています。今後は4Kワークフローにシフトしつつ、4K3DやHDの16倍であるスーパーハイビジョン8Kにもチャレンジして行こう思っています。

沖縄スタッフへの2D3D変換及びS3D撮影の技術指導について

森俊文氏

(株式会社ビデオテック(JVCケンウッドグループ))


今回のプロジェクトにおける最大のテーマは実用性です。S3D制作における最大の問題点は、制作工数と制作コストの肥大化です。しかし、25年以上S3Dを扱ってきたビデオテックのノウハウにより「お日さまSUNちゃん」は沖縄の現地スタッフで撮り切る事が出来ました。また、「オキナワノコワイハナシ 3D」では、新規に導入した2D3D変換設備とビデオテックが持つハリウッドグレードの変換を組み合わせ、この夏の興行向けの作品を完成させました。

今後、JVCケンウッドグループとしての連携について

似鳥将俊氏

(株式会社ビデオテック)


ビデオテックでは、直接ハリウッドよりBDパッケージ等の2D3D変換の業務を受注し、既に作業を進行している実績があります。その中で戦略として沖縄を東アジア地域のポスト・プロダクションのハブ拠点とし、単に雇用を促進するだけに留まらず、文化や技術が融合する街とすべく協力を図りたいです。また今年は映像制作だけでなく琉球放送/ITカレッジ主催のハイスコンにビクターエンタ協力/JVCケンウッド賞品提供というカタチで協力させていただいた。今後もビクターエンタ/テイチクとも協力しながら、音楽においても新人発掘やフェスの開催等も視野に入れていきたい。

■株式会社アドスタッフ博報堂(連携体代表企業)

知念直氏

(当該事業担当)


地域連携プロジェクトも2年目になり、少しずつだが着実にステップを上っている。地元テレビ局のコンテンツを3D変換することにより、県産3Dコンテンツを制作する第一歩と、それによる基礎技術の習得の第一歩を実現できた。今後、沖縄側の窓口である株式会社航時者の協力も得ながらJVCケンウッドグループと更に連携を深め、4K/8Kや多視点裸眼3D等も視野に入れながら沖縄の地の利を生かしたアジア地域へのコンテンツ販売、また沖縄を超高精細映像の制作拠点化するという構想を実現していきたい。

2020年 東京オリンピックを見据えた沖縄県の超高精細映像推進に関するロードマップ
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■公益財団法人沖縄県産業振興公社

鈴木和久氏

(当該事業担当専門アドバイザー)


当社としても、地域連携プロジェクトには注目している。沖縄県からアジア圏に向けた3Dコンテンツの発信と言う側面もそうだが、「オキナワノコワイハナシ3D」の上映が県内興行で1万人を超える動員があったと言う事は大きな意味のあることで、TIFFCOM2013出展の成果にも期待したい。また、2D3D変換作業やその先の4K/8Kの超高精細映像制作の事業化に関しても、国策として今後需要が拡大していく中で、沖縄県が他の地域に先駆けて取り組んでいくことに期待したい。

TIFFCOM2013に出品!

10月2日には延べ36本の作品の中から厳選した6本をDVD化して全国発売を開始し、TIFFCOM2013でスクリーニングを行う事も決定している。残念ながら今回の発売は2D版のみだが、今後3D版の販売も検討したい。TIFFCOM出品を契機に、自社コンテンツを2D/3Dの双方を視野に入れながらアジア圏に向けた展開を図っていきたい。

WRITER PROFILE

高野光太郎

Cosaelu株式会社 代表取締役 / 映像ディレクター ミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。