映像作品における色の重要性

映像作品、特に映画やコマーシャル、プロモーションビデオといった様々な表現技法を取り入れる機会の多い作品の中で、その品質を決める重要な要素の一つとして“色”というものがある。商品の魅力を色で表現したり、作品のコンセプトやテーマを色で伝えたりと、色を駆使するという事は映像制作の中で当たり前の表現技法と言っても過言ではない。

後処理の一環として行われるカラーコレクション作業であるが、撮影の段階では色というものを意識せず撮影を進めても良いものだろうか。答えはNOである。現場で色の確認が出来ずにライティングのバランスや色の組み合わせが悪いまま撮影してしまうと、カラーコレクション作業に残念な素材を持ち込んでしまう事になる。作品の色の良し悪しは撮影現場で決まるのだ。

140630_Fujifilm_01_01.jpg

現場での色管理は、作品のクオリティUPとポスプロにおけるスムーズなワークフローにとって必須だ

IS-mini登場~画期的なカラーマネジメントツール~

140630_Fujifilm_01_02.jpg

手のひらサイズのLUTBOX「IS-mini」

富士フイルムから発売になった「IS-mini」はデジタルシネマにおけるカラーマネージメントを“最も”効率的に行える画期的な機材だ。そもそもカラーマネージメントとは?と思う人も多いかもしれない。最近のデジタルシネマの撮影は、RAWやLogといった形式で行われることが多い。特にカメラ内の収録は、センサーが捉える情報を最も効果的にデジタル化することを目的としたLogガンマが多く使われる。

140630_Fujifilm_01_03_1.jpg 140630_Fujifilm_01_03_2.jpg
HD-SDIの入出力とPCからのデータを受けるUSB。給電はUSBでも可能だ
※画像をクリックすると拡大します

このLogカーブは各社のカメラがそのセンサーに合わせて作られており、SONYであればS-Log2やS-Log3、CanonであればCanon Log、Blackmagic DesignであればBMD FILM、ARRIであればLog Cといった具合だ。Logカーブで出力された画は色補正が必要だ。極力ダイナミックレンジを広く、多くの色情報を格納するためのLogガンマの画は、一見色が薄く、コントラストの弱い、いわゆる「眠い」ものだ。放送にするには、REC.709のものに合わせなければいけないため、必ず色編集(カラーグレーディング)を施さなければならない。RAWで収録する場合であってもLogガンマで出力することが多いため、ここではLog収録を前提としてこのIS-miniの特徴を紹介したい。

140630_Fujifilm_01_graph03.jpg 富士フイルムのLogカーブプロファイル例。ARRI ALEXA, SONY PMW-F55/F3, Canon C300の測定結果。各カメラでLogカーブがどのように異なるか、どの範囲のコードバリューを使用しているか、ハイライトのダイナミックレンジがどこまで広いかなどが一目瞭然。富士フイルムではこのデータを用いて、カメラに依存しないワークフローを提供している
※画像をクリックすると拡大します
140630_Fujifilm_01_Dynamicrangechart.jpg

富士フイルムがARRIのフレームを使用して開発した、200,000:1以上のダイナミックレンジをワンショットで計測できるダイナミックレンジチャート。このチャートにより、どんなカメラのプロファイルも作成可能とのことだ

Logで撮影する必要性

Logカーブを使った撮影には多くの利点が含まれている。例えばCanonのEOS C300でCanon Logを使えば、8bitであっても10bitと同等の色情報を収めることができるのだ。また相応の色情報をもっているため、Logの画からの色作りは驚くほどの可能性を秘めている。現場で709のガンマをかけてしまうと、コンラストの強い画になるため、そこからの色いじりはかなり範囲の狭いものとなってしまうのだ。より「美しく」、より「編集範囲を広く」撮影するために、Logガンマはデジタルシネマの現場では強く支持されている。

ところがLogで撮影すると、あまりにもコントラストの薄い画で収録されるため、最終出力のイメージを共有することが難しい。撮影監督の頭の中では、色のイメージがあっても、役者やクライアント、そのほかのスタッフが最終的な色がどのようになるかを現場で確認しなければいけないことも多いはずだ。

IS-miniはそんなLogの画にLUTをかけて、リアルタイムで最終形に近い色でモニタリングできるという手のひらサイズの機材だ。いわゆるLUT BOXと言われるものなのだが、現場で必要な機能をコンパクトに凝縮した一台なのである。

140630_Fujifilm_01_04_1.jpg

IS-miniの接続の様子。ルーティングは至って簡単。現場での作品の色共有はとても大切だ

使い方はいたって「簡単」「明快」!豊富なプリセットに驚き

140630_Fujifilm_01_05.jpg IS-mini Managerのスクリーンキャプチャ。ほとんどのプリセットが用意されている。フィルムストックの数も豊富だ
※IS-mini Managerの画面は開発中のもの
※画像をクリックすると拡大します

使い方は非常に簡単だ。Logガンマの画が出力されるHD-SDIのケーブルを入力に入れると、任意に編集されたLUTがかけられてHD-SDIから出力されるという仕様だ。編集は無料で配布されているソフトウェア、IS-mini Manager(Win/Mac)で行える。このソフトウェアのすごいところは、あらゆるLogカーブからのLUTプリセットが搭載されている点だ。現行のカメラのほとんどのLogカーブを709にするだけでなく、同社が培った数々のFilmストックであるETERNAシリーズや、Kodakフィルムのデジタルエミューレーションが入っているのだ。

例えばSONY PMW-F55で収録したS-Log2の映像を数クリックで富士フイルムのフィルム調に再現することができるのだ。また色相環をつかった微調整も可能で、作品のスタイルに合った色作りを「あっという間に」行える。正直これには驚いた。編集するパソコンとIS-miniはUSB一本で繋ぐことができ、そのLUTはリアルタイムで反映させることができる。また一度IS-miniにLUTを書き込んでしまえば、現場にパソコンを持っていく必要もなく、取り回しも非常に楽に行えるという仕様だ。給電もACだけでなくUSB給電でもOKで、LogとLUTの概念さえ理解していれば、おそらく瞬時に使いこなすことができるだろう。

140630_Fujifilm_01_06.jpg 色相環における微調整も初見で行える。誰でもすぐに操作できるだろう
※画像をクリックすると拡大します

あらゆる色を一瞬に。そして「.cube」への書き出し

そして更に素晴らしいのが、現場で使用したLUTを3D LUTの形式である「.cube」で書き出せるということだ。この.cubeはBlackmagic DesignのDaVinci Resolveで使うことが可能で、ポストプロダクションにおいて現場での色再現を即座に行える。LUTを書き出せる機能を使えば、従来煩雑になりかねなかったカラーマネージメントのワークフローを非常に簡単に組み立てることができる。当然ポスプロにおいて色編集の微調整は必要だが、現場で確認されている色を編集の段階で瞬時に再現することは重要なプロセスであると言えるだろう。

140630_Fujifilm_01_07.jpg 書き出した「.cube」の3DLUTデータはDaVinci Resolveで使用可能。迅速なポストプロダクションのフローを組めるのが大きな魅力だ
※画像をクリックすると拡大します

F55とのワークフロー

それでは具体的に使用の方法を記してみたい。今回はSONY PMW-F55を使ってS-Log2のLogカーブを使ってXAVCの4Kで撮影を行った。最近は4Kのカメラを現場でも多く見かけるようになったのだが、色を見る場合は、大抵の場合HDのダウンコン映像で確認するのでも問題はない。実はIS-miniは何台も並列して使用することが可能で、4Kにも対応している。複数台IS-miniを使用する場合でも、USBを使ってIS-mini Managerで一度にコントロールすることができるのだ。

140630_Fujifilm_01_08.jpg

F55と4台のIS-miniをつなげた様子。4Kにも対応している

例えば4Kの色をモニタリングする場合などは、4本のHD-SDIを4台のIS-miniに繋いで、同じLUTを一度にあてることで4Kの映像に任意のLUTをかけたモニタリングが可能。ただしフォーカスなどのシビアな解像感を確認するのではなく、単純に色を見るだけであれば4Kの撮影であっても、HDのダウンコン映像でも十分といえるだろう。今回はF55の4K映像をHDダウンコンで出力し、S-Log2の画をIS-miniに入力した。そしてIS-miniではS-Log2からREC.709への変換をかけ、若干の色調整を施したLUTを、パソコンから入れ込み、それをHDでモニタリングするワークフローを組んだ。IS-mini Managerを使った色のLUTを決める作業は、数分で完了した。非常に操作は快適だ。

Logの画を709に合わせる色補正は割と面倒で、オペレーターやDITによってかなり差が出てしまうことも多かったが、確実に目指している画のLUTを素早く準備できるのは心強い。フィルムシミュレーションの数も豊富で、往年のフィルムストックの数々に、心を躍らせるカメラマンも多いだろう。現場で色が決まれば、その3DLUTのデータを「.cube」で書き出し。ポスプロではDaVinci Resolveですぐに使えるのだ。ちなみにLUTのデータはMacの場合、「ライブラリ>Application Support>Blackmagic Design>DaVinci Resolve>LUT」の中に入れておくと読み込みか可能になる。

140630_Fujifilm_01_09log.jpg 140630_Fujifilm_01_09lut.jpg
S-Log2で撮影した映像(写真左)、IS-miniでLUTを当てた映像(写真右)の比較。現場でここまで再現されていれば理想的だ
※画像をクリックすると拡大します

オフライン時にも使用可能

140630_Fujifilm_01_10_1.jpg

ポストプロダクションにおいても使用可能。使用範囲は非常に広い

また、撮影現場以外にも様々な使用事例が思い浮かぶ。例えば撮影素材をオフラインと呼ばれる荒編集をしている際、ノートパソコン環境においてもHD-SDIを入出力する環境さえあれば出力とモニターの間にIS-miniを組み込み、LUTがリアルタイムに当たっている状態で作業を進めることができる。さらにスタジオでのカラーコレクションの作業が出来ない場合においてもIS-miniが一台あれば好みのトーンを選びそのまま完パケてしまうことも可能だ。常にビデオモニターに最適な色表現が可能なので、この一台あればその場所がカラーコレクションルームになってしまうのである。

総括

140630_Fujifilm_01_10_2.jpg

映像にとって色と言うものは作品自体の第一印象をも決めうる重要な要素である。またデジタルシネマカメラの急速な普及に伴ってRAWデータを撮影素材として収録する機会もごく一般的になってきた。豊富な情報量のRAWデータは様々な色表現が可能ではあるが、時として混乱を招く要因にもなりかねない。

富士フイルムのIS-miniは、一つの基準にもなり得る様々な設定が予め搭載されている。細かなパラメーターの調整も無くそれらの設定を選ぶだけで作品の色表現の基準を決めることが出来る。勿論そこから微調整を行い、オリジナルの設定を作ることも可能である。

フィルムに慣れ親しんだ人がデジタルシネマカメラ撮影でお馴染みのトーンを使用したい場合や、今までにない色の質感で作品作りに挑戦したい人など、映像制作に関わる大勢の人に受け入れてもらえるのではないだろうか。富士フイルムIS-miniは今後、益々多様化が進む映像作品の色表現の一つの道しるべとなり得る一台なのかもしれない。IS-miniの最新情報はこちらより。

機材協力:ソニービジネスソリューション株式会社
txt:マリモレコーズ 黒沢寛 構成:編集部

WRITER PROFILE

編集部

PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。