制作現場では、創意工夫の連続

今回から、デジタルシネマに関するさまざまなモノやコトについて、紹介させていただくことになりました。筆者は、東宝や劇団四季などてミュージカル俳優を主軸に活動し、その後映像制作へ入りました。撮る側と撮られる側の心理の違いをきちんと説明する方法で多面性のあるストーリーの作品を制作。監督作品では、全ての撮影・編集を自身で行うようにしていました。それが高じて、色んな機材やアプリケーションに慣れ親しむこととなり、現在はその経験を活かして、劇場公開作品やオンエアドラマ、企業ビデオの撮影現場や仕上げの現場で仕事をさせて頂いています。

デジタルシネマの制作現場では、創意工夫の連続です。そうした中で触れたいろいろなものの中から、その時々で紹介したら面白そう、という話題を取り上げて、なるべく平易な内容を心がけたいと思います。しかしながらたまには、マニアックなものを取り上げるかも知れませんが…。ということで、今回のテーマはとても一般的な「リグ」。リグには興味があるけど何だか良くわからない、という方に向けた、こうだから〇〇、というお話。

撮影をより快適にしたいという欲求

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DSLRが隆盛を誇って久しい昨今。日々楽しく映像制作している多くの方々、数々うまれてくる名作たち。その作品群に触れて、自分も、と動画機能付きのカメラを手にして撮影をし始める。その圧倒的なボケ足による写真のような世界。その中を動く被写体をみて、それはもう楽しくて仕方なくなりますね。そうした勢いで撮影をしている内に、だんだんと欲求が増していきます。例えば…。

  • 日中で、動画に適したシャッタースピードで絞りを開放にしたい
    NDフィルターが欲しいですね。
  • 音声を綺麗に収録したい
    S/Nに優れた音質の良いマイク、しかも指向性の高いガンマイクが欲しくなりますね。良いものに限って、ファンタム電源48VのXLRコネクタの業務用マイクになっていきます。すると、電源供給とボリュームコントロールでミキサーが欲しくなります。
  • もっとフォーカスを自由に動かしたい
    フォローフォーカスを用意して、フォーカスを精密に動かせるようにしましょう。
  • マニュアルフォーカスが合わせづらいので、もっと楽にフォーカス合わせる方法はないか?
    ビューファーをつけて、よりハッキリとピントの山を掴めるようにしましょう。フォーカスピーキング機能があると尚良し。おまけに波形モニターが付いてたりすると、これは最高です。

などなど。自分が撮影したい画を求めると、やはりいろいろな機材が増えていくわけです。

今回ベースのカメラはGH4。ユニットもありますが、まずはあえて単体で考えます。明日短編映画を撮るぞ、といったときに欲しい装備を思いつくままに見繕ってみると、前述のものが全部欲しくなるわけですね。

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NDフィルター、マイク、ミキサー、ビューファー、フォローフォーカスいろいろと必要になります。

実際には下記の物を用意しました。

  • NDフィルター
    手間を考えてバリアブルNDを用意
  • マイク
    定番中の定番、ゼンハイザーのMKH416。受けはRycote。
  • ミキサー
    リニアPCMレコーダーZOOM H6を用意。これは本体記録も出来るけれども、ミキサーとしても結構イカす優秀な子です。
  • ビューファー
    Cineroid社のEVF4RVW。フォーカスピーキング機能、波形モニターつき。
  • フォローフォーカス
    WONDLAN社のもの。簡単にピント合わせを実現する機材。ダイアルで操作することで微妙なフォーカスワークを可能にする先人の知恵。

さて、これをカメラに装着してみましょう。

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はい、無理がありすぎですね。限られたシューマウントに頑張って色々付けてみようと思いましたが、既にバランスが悪すぎます。付けられなかったものもあります。困ったもんだ、です。それにこれでは小回りもきかず、まったく効率が悪いです。でも、キチッといこうと思ったらこれくらいは欲しくなりますよね。

リグを組んでみる

そこで、先人達はいろいろと考え、我々に「リグ」というものを授けて下さいました。まずはリグを使って組み立ててみましょう。

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うむ。すっきりですね。リグがあったら便利だということが良くわかる一枚です。

筆者自身、最初は「ごつくてとっつきづらく、ぱっと見でシネマカメラ仕様にするためのハッタリ的なもの」というイメージを持っていました。しかし、実際に使ってみるとあら不思議、便利すぎてこれなくしては生きていけない体となりました。リグとは周辺機器を取り付けやすいようにサポートロッドやサイドケージなどを付け、そこにいろいろと機材をくっつけていくカメラサポート全体の仕組み、と捉えて問題ないでしょう。

作業効率の向上の他に、カメラを衝撃から守ることにも繋がります。そして、色んな組み合わせが出来ます。自分の使いやすいように、あっちのネジを締めて、こっちにパーツを置いてみて、バランスをみて、うん使いやすい、いやいや、ちょっと前が重いかな、などと試行錯誤していく内にあっという間に時間が経ってしまいます。まず間違いなく男子はこういうのが好きです。

リグはベースマウントという部分とそれに通すサポートロッドにつけるクランプや各種アイテムなどで構成されます。サポートロッドには15mmと19mmの太さの物がありますが、今一般的に流通しているのは15mmのものです。19mmは、大型カメラや組み込む機材が大きいものであるときに使われる事が多いです。

リグを組むときにはまず六角レンチが必要ですが、日本のセンチメートルで計っているものとインチで計っているものとがあります。海外製のリグキットを購入すると、大概インチのネジ山となっていて、初めての人はレンチの購入から始めないといけないので要注意。

汎用リグ、ケージ

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リグにも二系統あります。色んなカメラに対応出来る、汎用性のあるもの。先程紹介したリグは「VOCAS」というメーカーのもの。肩乗せ型になるので、撮影時にも持ち運びにも便利です。カメラの横を通って上部にハンドルを付けている物がケージ部分ですね。この形だと、さまざまなカメラが装着可能になります。 ですが、もちろん汎用故にカメラにピッタリとは来ないので、すこし大ぶりになります。それがごつい印象になり、見た目の威圧感を与えるのですね。

専用リグ、ケージ

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はてさて「汎用型に対して専用型は?」といいますと。はい、この通り。

カメラ本体にピッタリの形状をしているので、大ぶりにならずとてもコンパクト。このGH4専用ケージはVARAVONさんのものですね。専用型はこのように実にコンパクトになるのですが、専用型は専用型、他のカメラには使えない、または使いづらい。使いたい全てのカメラにケージも買っていられないので、そのカメラとどこまでも一緒に、という思い切りですね。

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そのほか、専用型を付けたカメラに、汎用型のベースを付けて運用する、という手もあります。汎用型はパーツを分解して、必要なところだけ別のシステムに組み込めるので、非常に便利ですね。リグを購入したい、という人に筆者がおすすめするのは「最初は汎用型かな…」という感じです。

いかがですか。少し、リグへのハードルは下がったでしょうか。こんな調子で、いろいろ掘り下げていきたいと思います。ではまた次回。

WRITER PROFILE

林和哉

最新技術が好物でリアルタイムエンジンにゾッコン。Unity Technologies Japanの中の人。セミナー講師経験豊富。