現場で起こるハプニングやグルーヴをいかに収録するか?

ライブ配信の多くは=マルチカメラ収録でもある。つまりリアルタイムに完パケを作るミニテレビ局とも言える。筆者が主宰する“LiveNinja”は、「現場で起こるハプニングやグルーヴをいかにあますところなく捉え収録するか?」に特化したライブ映像収録チームの愛称だ。

忍者という名前を冠してることからわかるようにステルス性を重視している。それは威圧感のある機材ラックなどをむやみに現場に持ち込まない。映像収録に必要なスペースを最小限に抑えるが、進行などが当日までわからない状態でもあらゆるハプニングに対応できる装備を忍ばせる。つまり映像収録が最優先される映画やテレビやミュージックビデオとまったく逆の方向性で機材が組まれている。それは「現場のイベント進行を再優先し映像チームの存在感を極力なくす」ことなのだ。

そのために最小限のスタッフで軽量な機材を中心に構成する。ただし個々のスタッフは高いスキルを持った人材だけを傭兵スタイルで招集し、案件の特性に応じてチーム構成を変える。音楽もの、対談もの、セミナーものなど内容によって得意とするカメラマンやスイッチャーも変わる。

今回は12月日に3331(3331 Arts Chiyoda)で行われた「エンガジェットフェス2014」冬の現場から“LiveNinja”の現場とその成果物をレポートする。

We are “LiveNinja”

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テクニカルディレテクター、スイッチングディレクター、カメラマン、サウンドミキサー、ドキュメンタリーメイカーなどからなるLiveNinja

エンガジェットの編集部がある3331で行われる恒例のフェスも2回目となり、ライブ配信や収録の規模もグレードアップした。4会場からの同時Ustream配信と、それらを受信した4分割画面を会場内各所のデジタルサイネージに表示というもの。そこで1箇所2名でマルチカメラ収録できるチームを作り、さらに遊撃で撮影できるカメラマンを2名配置した。

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セミナー系配信の機材はATEMを中心にコンパクトにまとめられている

4つの会場にはそれぞれ特色がある。ラウンジと呼ばれる場所ではセミナーが行われるので登壇者の近くにiVIS mini Xと引きのXA25/XA10の3カメ+パソコンの4ソースをATEM TVSでスイッチング。ライブスペースではアイドルユニットや明和電機のライブが行われるのでiVIS mini XとG10を2台それぞれリモートコントロールできる雲台に乗せ、さらに引きに有人カメラを配置した4カメをWireCastでスイッチング。音声はPAアウトに会場の盛り上がりを捉えるアンビエンスマイクを追加し、配信用のミックスをMAPSで作ってもらう。

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屋上チームは忍者コスチュームで暖を取りながらスイッチング、収録、音楽出し、PAと忙しい

体育館では出演者が多いトークセッションが多いのでG10を中心とした3カメ+パソコンの4ソースをローランドV-800HDでスイッチング。屋上ではクアッドコプター選手権やウェアラブル運動会など演者のアクティブで予想不可能な動きがあるのでエルモのアクションカム3台にG10とXA25を3台加え6カメをATEM TVSでスイッチング。

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クアッドコプターのコース上に設置されたエルモのアクションカム

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ライブスペースはリモートカメラを中心としたハイテク仕様の2名チーム



映像1名、音声1名の2名で収録されたとは思えない出来の明和電機ライブのアーカイブ

これらの4班でライブ配信と収録を行い、収録機にはパナソニックAG-HMR10Aを使ってSDカードにAVCHD形式で収録した。このカードを収録が終わるごとにSDカードを編集担当者に渡し、編集ソフトでカットを抜き出し短縮編集。すべてのイベントが終わる頃には全イベントのダイジェスト動画も完成した。紅白歌合戦の最後に全出場者の数秒のクリップがつながっているアレのイメージである。

当日公開された全イベントの抜き出し編集クリップ



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イベントのサイネージとして設置されたAQUOSの裏が編集スペース

さらに今回のイベントで80インチのAQUOSを使っていることもあり、4Kネイティブで撮って出しにトライした。世界中を飛び回るドキュメンタリーフィルムメーカーをスタッフィングし、遊撃的に会場を自由に回りながら短いショットを撮影する。

装備はGH4とスライダーレール、編集用にMacBook Proで数十カット撮影しては取り込んでカットをつなぎ、撮影してはカットを追加して足りないカットを撮影しに行くというスタイルだ。4K動画はレンダリングに相当な時間を費やすので上映時間であるパーティの開始時間を逆算しながらのスリリングな撮影となった。

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スライダーレールに載せたGH4にEFレンズで4K収録



こうしてLiveNinjaは10人のスタッフで4つのイベントをマルチカメラで収録し、ダイジェスト、4K撮って出しなど含め1日で21本の動画を即日納品した。イベントの完パケに加え、短縮版を当日に納品するというフローを追加することでイベント速報や後パブに有効活用できる。

これからの課題!

ただし、新しい課題も見えてきた。映像だけのハイライトダイジェストは比較的作りやすいのだが、音声も含めたハイライトダイジェストとなるとフロー全体を見直す必要がある。特に今回のような1日4つものイベントが同時進行している場合、ダイジェスト編集担当がリアルタイムに見られる素材も限界がある。

なにかしらスイッチングを担当したスタッフがハイライトのタグを打ち込み編集者に伝えるなどの工夫が必要になる。テレビ局では当たり前に生番組の中で行っているフローだが、安価な民生機材でいかにこれをやるか?LiveNinjaの挑戦に終わりはない。それでは失礼候!ドロン!

WRITER PROFILE

ヒマナイヌ

ヒマナイヌ

頓知を駆使した創造企業