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[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.15 最新ショッピングモールのデジタルサイネージ事情

2014-12-19 掲載

川崎市の武蔵小杉に、先日11月22日にオープンしたグランツリー武蔵小杉は、セブン&アイ・ホールディングスグループの新しいショッピングモールである。最新のショッピングモールでのデジタルサイネージの利用状況をレポートしながら、今後に向けてのいくつか検討事項を挙げてみたい。

館内案内のためにインタラクティブサイネージ

ds2014_15_09457 館内案内はタッチパネル。低めの筐体に横画面を傾斜させている

まずは館内案内のデジタルサイネージ。形状は以前のような垂直縦型のものではなく、最近すっかり主流になりつつある傾斜横型である。子どもや車いすでも使いやすいように高さは低めだ。使い勝手はまあ普通。他の大部分の館内案内サイネージ同様に、やはり文字やボタン類が小さく、また情報を詰め込みすぎな感じは否めない。たぶんこうしたデザインやUI部分は、WEBと同じ感覚、あるいは同じ人が作っているのだろうが、いろいろな人が指で触るという前提に立てば、こうはならないはずだ。このあたりは銀行のATMや切符の自動販売機のようなシンプルさが求められると思う。

WEBと連携した店舗情報サイネージ

ds2014_15_09460 エレベーターホールのサイネージ

エレベーターホールなどには、館内イベントやテナント情報が表示されている。グランツリー武蔵小杉は4階建てで、エレベーターの利用が比較的多いのと、ベビーカー利用者が多いため、他の低層のショッピングモールと比較して、エレバーターホールのサイネージ的価値は結構高そうだ。

2基のエレベーターの真ん中に設置されたディスプレイは42インチだろうか、ほぼ適正サイズ。面白いのはアナログの時計と一緒にデザインされて設置してあるところだ。時計部分がもう少し目立ってもいい気はするが、時計(正確には現在時刻の表示)とサイネージはやはり相性がいい。

ds2014_15_09461_c アナログ時計とセットで設置されている

この画面は一見タッチパネルのように見えるが、そうではない。いわばタッチパネルの自動操作、自動再生である。画面上部にはショップのカテゴリーがタブで表示され、左側にはタイムラインともいうべき、次に表示される情報画面のがサムネイル的に順次スクロールされていく。

更に詳しく見ると、次の画面に移動するまでの時間が表示されているという凝りようだ。コンテンツはWEBとのCMSから自動的に引っ張ってきているのだろうと思ったら、どうやらそうではないようだ。写真、テキストがWEBとサイネージが完全一致している店舗と、そうではない店舗があるのだ。つまりWEBとサイネージが同一のCMSで100%完全自動で同期しているわけではないことがわかる。

ds2014_15_screen 同じ店舗の紹介を、グランツリー武蔵小杉のWEBで表示してみると、WEBのデータをそのまま自動的に読み込んでいるわけではないことがわかる

また各店舗の画面は写真、ロゴ、テイストで構成されており、基本的にはテンプレートにはめ込んでいるようだ。作業やシステムとしては楽だが、写真やロゴのデザインによっては、サイズ調整などもした方がいいだろう。現状ではそうなっていないため、結果的にロゴが目立たないケースも見受けられた。

こうしたWEBとデジタルサイネージの連携、あるいは連動において、システムとデザインの両面から検討する必要があるだろう。

飲食店のイーゼル型のサイネージ

各テナントが独自で導入しているサイネージは、服飾系の店舗を中心に非常に多い。そんな中で、グランツリー武蔵小杉の特色としてあげられるのは、飲食店の入り口に設置されたものが非常に目立つ。どれも微妙に敷地からはみ出ているのだが、そこはあまり厳密に規制をしていないようで、実際のまちなかのように、とても自然な感じがする。

ds2014_15_09458_b イーゼル型のデジタルサイネージは定番となりつつある

これらのほとんどは、32から40インチクラスのディスプレイが、イーゼルに取り付けられているタイプだ。飲食店では、以前のように店頭に商品サンプルが置かれることはほとんどなくなり、代わりにこういったイーゼルが置かれるケースが多い。このイーゼル型の利用にも3タイプあり、ディスプレイ利用のデジタルサイネージ、バックライトを備えたパネル、そして印刷または手書きの黒板のようなものだ。グランツリー武蔵小杉におけるこれら3タイプの設置比率は5:3:2くらいだろうか。前者2つの視認性はほとんど変わらないが、当然ながらディスプレイは動画も扱えるし、画面も切り替えられるので変化があり、目につく。しかし一方で、手書き黒板には雰囲気もある。グランツリー武蔵小杉では、これら3種類の選択は各店舗が独自の判断で行っているようで、どれか一つに統一されているわけではない。

ds2014_15_09459 こちらはバックライトを備えたパネル。動かないのでインパクトはないが変化させる必要がない場面では十分有効

飲食店を中心としたこのタイプのサイネージは、サムスンの「ハルヱとケイジ」が最初に市場を開拓し、東和メックスの「BRID」がこれを拡大発展させ、さらにNECをはじめ何社かが参入した。しかしサムスンが日本マーケットから撤退した今は、いわば空白の状態である。潜在需要も開拓余地も大きい領域だけに、各社の差別化や競争が一層進むものと思われる。コンテンツを誰がどう作るか、コンテンツの更新方法、手書き文字、価格、販売モデルあたりが競争ポイントとなるだろう。

また表示されるコンテンツに関しては、みなきちんと撮影された料理写真やビデオで、どれも美味しそうに見えるのでかえって差別化にはなっていないかもしれない。プロの手による映像だけではなく、生写真のようなリアルさもあっていいような気がした。

iPadをSTBとして利用している

ds2014_15_4459
iPadを利用しているサイネージ

グランツリー武蔵小杉には、西武・そごう武蔵小杉SHOPがテナントとして入っている。現地に行ったその日に偶然見かけたのがこの写真だ。メッセージ画面をよく見ると、このサイネージはSTBの役割としてiPadを利用しているのがわかる。接続されているディスプレイは46から50インチクラスなのだが、特に解像度が足りないということは感じない。こうしたメッセージが出てしまうのは困りモノだが、iPadを利用するメリットは確かにある。またこのメッセージが出るということは、iPadがネットワークに接続しているということなので、コンテンツ更新もネット経由で行っているのだろう。

他にも、子供が遊べるエリア「スマイルスクエア」では、大画面マルチとカメラを組み合わせてAR的なコンテンツも表示できるようだが、現地に行ったのが平日だったためだろうか、この日は動いていなかった。カメラで撮影した映像にグラフィックがリアルタイムで重なるだけでも子どもたちは素直に大喜びする。

ds2014_15_4460 ARサイネージ。この日は電源が入っていなかった

以上のように、最新のショッピングモールは技術的に目新しいものが試されているというよりは、基本的な内容のものが着実に導入されていると見ることが出来る。このように粛々と導入が拡大していくと思われるが、ハッとするようなイノベーションが最近のデジタルサイネージではあまりないのが気になる点ではある。


WRITER PROFILE

江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。


[ Writer : 江口靖二 ]
[ DATE : 2014-12-19 ]
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