目指す次世代制作ワークフローとは?

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「Avid Connect」会場より

2015 NAB SHOWの期間中、ラスベガス市内のシーザーズ・パレス・ホテルにおいて、昨年に引き続いて2回目のコミュニティ・カンファレンスイベント「Avid Connect」が開催され、1,000人を超えるプロ映像制作関係者が集まった。

Avidが掲げる次世代の制作ワークフローの根幹には、IBC 2013で初めて明かされたAvid Everywhere構想がある。顧客がメディア制作から配信、収益化までのすべてのワークフローを柔軟に選択し、セキュアな環境で合理化していくことができる共通サービス基盤となるAvid MediaCentral Platformを構築し、そのプラットフォーム上で、対応するSuite製品Artist Suite、Media Suite、Storage Suiteが互換性をとれるようにしていくというものだ。Avid Connectにおいて、Avid Everywhereは進化し続け、その機能を強化するための新製品投入とバージョンアップが行われてきている。

2015 NAB SHOWにおけるAvidの取り組みを整理しながら、現在Avidが目指す次世代制作ワークフローについて、アビッド テクノロジーのソリューションズ・スペシャリスト西岡崇行氏にお話を伺った。

小規模プロダクションに向けたISIS | 1000

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これまでのISISは大規模制作向けで、小規模ユーザーの制作では活用しにくかった。ISIS | 1000の登場で、小規模制作でもメディア共有の恩恵に与れる

これまで、放送局やポストプロダクション向けに提供されてきた共有ストレージ環境ISIS。今回新たにラインアップされる「ISIS | 1000」は、フリーランスエディター、オーディオ・ポストプロ、小規模ポストプロ向けにこれまでのISISの性能や信頼性をそのままに、より手軽に、より手頃な導入コストで共有ストレージ環境を実現できるストレージ・システムのエントリー機だ。標準で20TBのディスク容量を持ち、80TBまでの拡張が可能。50Mbps素材で144ストリームまでの安定したメディア共有ができる。2015年第3四半期に発売する予定だ。

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アビッド テクノロジー株式会社 アプリケーションスペシャリスト/ビデオプリセールス 西岡崇行氏

西岡氏:新しいISIS | 1000が目指すユーザー層は、Avid Media Composer、Pro Tools、Adobe Premiere Pro、Apple Final Cut Proを利用する10人くらいまでの小規模ユーザーです。なかでもAvidとAdobeはお互いに関係を持ちながら、お互いの製品を少しずつ改良しています。

3月には、Premiere ProがISISに対して最適化を行いました。ISISもAdobe Premiere Proに対して最適化の調整を行っています。お互いの製品を最適化することで、実はAdobe Premiere ProもAvid Media Composerと変わらないくらい快適にISISを利用できるようになっています。

ビデオ素材の共有ストレージとしてISIS | 1000を活用するのはもちろん、今後のターゲットとして重要な位置付けにあるのが、Pro Toolsユーザーだという。

西岡氏:これまではPro Toolsで素材共有するソリューションが提供できていませんでした。Avidは素材共有サーバとしてISISを提供してきたわけですが、ハイエンド向けにディスク容量もクライアント数も増やし続けるというソリューション強化を行ってきたために、以前Unity MediaNetworkを活用していたような小規模ユーザーのビデオ素材共有や、Pro Toolsのサウンド素材共有という部分の素材共有環境が抜け落ちてしまっていました。こうしたユーザーに向け再度、素材共有環境を提供するのがISIS | 1000の役目です。

小規模ユーザー向けということで性能を制限するようなことはしていないという。

西岡氏:映画制作だけでなく、今後はテレビ番組制作もしていかなければならないということは、プロダクションの大小に関わらず4K施策はしていかなければならないことを意味しています。ISIS | 1000のパワーは上位ISISと同じものを持っているので、4K素材の共有にも活用できます。1Gbpsでも、10Gbpsでもつなげます。共有出来るファイル容量は上位機種と比べれば小さくなりますが、最大80TB、実容量で64TBまで利用できます。

今後の4K制作ワークフローを構築することが重要だということであれば、クライアントが5台前後の小規模ワークグループであったとしても、ISIS | 1000を活用して素材共有環境が作れるんです。

4K入出力に対応したArtist | DNxIO

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4Kベースバンド入出力に対応するArtist | DNxIO。ハードウェアはBlackmagic Designとの協業で開発し、AvidがDNxHRコーデックのハードウェアエンコーダを追加している

Avidは2015 NAB SHOWにおいて、4Kベースバンドの入出力に対応した入出力デバイス「Artist | DNxIO」を発表した。AvidのフルHD対応 入出力デバイスNitrisの後継機種となる。Artist | DNxIOは、Blackmagic Designとの協業で開発。 Blackmagic Designの4K入出力ThunderboltデバイスであるUltraStudio 4K Extremeをベースに、Avidの4KコーデックであるDNxHRを扱えるようにハードウェアエンコーダーを入れ替えている。2015年第3四半期に発売する予定だ。

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2015 NAB SHOWのAvidブースにて。Artist | DNxIOのモックアップが置かれていた

「今後早い時期に取り組んでいかなければならない4K制作において、素材の全てがファイルであれば理想だけれども、プロ映像分野ではベースバンドを無視するわけにはいかない」と西岡氏は言う。マスターモニターへの出力やシステムカメラからの入力など、4Kベースバンドの入出力は欠かせない。

西岡氏:Artist | DNxIOの登場で「誰でも4K」という制作環境が、より手軽に構築できるようになります。個人の制作者はもちろん、地方局でも「4Kに移行するのはまだ時間がかかる」と話しているなかで、4K制作に取り組んでもらわなければ4K移行が困るという段階に来ています。これまでの4K制作ソリューションは、個人や小規模なポストプロが導入するにはシステムが大きすぎて手が出せない状況もありました。

Blackmagic Designとの協業でArtist | DNxIOを開発したことにより、4K制作を始めるための導入コストを下げることが可能になりました。ベースモデルがBlackmagic Design製品なので、シングル12G-SDIの入出力にも対応できます。

さらにBlackmagic Designが買収したeyeon SoftwareのVFX&コンポジットソフトウェアFusionとの連携が可能な、Fusion Connect plug-in for Media Composerプラグインも同梱されます。Fusionプラグインは、FusionがBlackmagic製品になる前から提供されており、Fusionのツリー構造は3D機能も充実していますから、Media Composerと連携できるのは大きな強みになるのではないでしょうか。現時点では、Fusionで扱うためにDPXファイルへの変換が必要になりますが、自動化は済んでいますので、作業開始までにちょっと時間がかかるという状況ですね。

Artist | DNxIOとBlackmagic UltraStudio 4K Extremeの大きな違いは、ハードウェアエンコーダーが対応するコーデックの違いにある。

西岡氏:Artist | DNxIOの大きな特徴は、

  1. オーディオ再生中に上書き録音するAudioパンチイン機能のサポート
  2. 4KベースバンドからDNxHRコーデックへとエンコードするハードウェアコーデックモジュールの追加

2つともUltraStudio 4K Extremeにはない機能です。UltraStudio 4K Extremeでは、DNxHRコーデックではなくProResシリーズのハードウェアエンコーダーを搭載している点が異なります。Artist | DNxIOを使用してProResコーデックを扱いたい場合は、入出力部分をArtist | DNxIOが受け持ち、コーデック変換についてはソフトウェア上で行うことになります。

Media Composerは次世代バージョン8.4で解像度フリーに

ノンリニア編集ソフトウェアMedia Composerも、ファイルベース編集ワークフローの中核として位置づけられ、Pro Toolsとの連携を強化してから、再評価する声が高まってきている。2014年12月には、ネイティブ4Kをはじめとする高解像度メディアに対応するため、Avid Resolution Independenceアーキテクチャへと移行。新たな拡張可能なメディアコーデックDNxHRを採用したことで、次世代制作ワークフローを担っていくソフトウェアへと成長した。

西岡氏:Media Composerについては、年に4回ほどのペースでバージョンアップを続けています。Avid ConnectやNAB SHOWで発表されるものは、その段階の最新版機能ということではなく、この機能が実現されることになるだろうという段階のものも含まれているのですが、年に何回かのバージョンアップしながら機能を実現していっています。Avid Connectでは、近い将来にリリース予定のバージョン8.4のベータバージョンを使用していました。

バージョン8.4の追加機能には、カスタムラスター機能、英語のクロースキャプション機能などがある。

西岡氏:カスタムラスター機能で、プロジェクトで扱う解像度を縦横とも自由に数値入力することができるようになります。DNxHRコーデックは解像度フリーのコーデックなので、カスタムラスター機能を使えば8Kのプロジェクトを作り、8Kの素材を扱い、8Kで編集し、8Kで出力することも可能です。あるいは極端に細長いアスペクトのプロジェクトを作成しても、Artist | DNxIOなどで出力するときにはダウンコンバートされてマスターモニターに表示されます。クローズキャプション機能は最初に英語をサポートし、日本語などのインターナショナル・ランゲージについては将来追加される予定です。クローズキャプションの編集機能についても将来追加予定です。

Avid Connectでは、無償版のMedia Composer | Firstについても紹介されていた。

西岡氏:Media Composer | Firstについては、まだ詳細のアナウンスはされていないのですが、無償ダウンロード体験版となります。2015 NAMM SHOW(全米音楽産業展)で発表されたPro Tools | Firstと同様の取り組みです。これからプロフェッショナルな制作に取り組んでいく次世代を担うエディターやアーティストにプロのツールを体験してもらい、制作ワークフローを知ってもらうための取り組みです。

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Avid Connectで触れられたMedia Composer | Firstについては、2015年後半の提供に向け、無償ダウンロード提供が可能になった段階で連絡をするためのページだけが設置され、具体的な機能詳細については発表されていない

Avid MediaCentral Platformを強化、教育機関向けのAvid Everywhereも提供

Avid Everywhere構想はどのように進化してきているのか。Avidは2014年、個人から企業、ポストプロダクション、放送局、教育など、さまざまな分野でプロ映像を扱う人たちが効率的に制作・配信できるようにするための制作環境を提供していくという戦略を打ち出した。

その一環として、業界の主要なリーダーやビジョンをもつ人たちと協力し合いながら問題解決にあたり、その中でAvidとの顧客関係性を高めていくことを目的とした「Avid Customer Association」を設立した。このAvid Customer Associationが主体となって、2014 NAB SHOW期間中にAvidユーザーが集う「Avid Connect」が初めて開催された。第1回のAvid Connectでは、メディア業界における新たな取り組みとして、Avid Everywhere構想のフェーズ1として、Avid MediaCentral Platformを、オープンで、拡張可能で、カスタマイズも可能な形で提供すると明かされた。

2015年の第2回Avid Connectにおいて、Avid Technologyのルイス・ヘルナンデスJr. CEOは、個人アーティストやクリエイティブチーム、世界規模のメディアエンタープライズといった顧客が、グローバル規模で協業できる環境の構築に向けて、Avid Media Central Platformも新たにソリューション強化すると話した。

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Avid Technology CEOのルイス・ヘルナンデスJr.

このAvid MediaCentral Platformにおける機能強化点として解像度を自由に扱えるようにするResolution Independenceが追加され、それに伴うソリューション強化として、今回紹介した共有ストレージISIS | 1000、ビデオ入出力製品のArtist | DNxIO、高解像度ビデオ制作に対応したMedia Composer、無償提供版のMedia Composer | Firstが含まれている。さらに、Avid Everywhere構想のマネタイズ部分を担うMarketplaceも、今回からAvid MediaCentral Platformに組み込まれた。

学生の利用者獲得に向けて、教育機関向けのAvid Everywhereも提供も開始する。学生に業界標準のAvidクリエイティブ・ツールの無償利用や、手頃な価格のサブスクリプション・ライセンスを活用できるようにするといったソリューション面からのサポートだけでなく、トレーニング、認定プログラムなどのオプションについても強化していく考えだ。

西岡氏:Pro Toolsは、まもなくMarketplaceと連携して動作するようになります。アプリケーションを抜けることなく、MarketplaceにあるApp Storeでプラグインなどを購入してインストールできたり、ライセンス管理なども行えるようになります。アプリケーションだけでなく、素材や制作をAvid MediaCentral Platformで共有化しながら、できあがった成果物についてもMarketplaceを通じてシェアしながら、お互いのコラボレーションを強化していくことを目指しています。まだビデオ関連製品での発表はされていないのですが、同じような方向性を見据えながら取り組んでいます。

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Avid MediaCentral Platformについて、第2フェーズとも言えるソリューション強化を行った

Avidは、つぎつぎと登場するファイルベース用コーデックに対応するため、各カメラメーカーに対しConnectivity ToolkitをAPIとして公開している。Avid Media Access Toolkit、Codec Toolkitが含まれ、カメラメーカーがMedia Composerで新コーデックを扱えるようにプラグイン開発できるようにしているという。全てをAvidが開発を行い、カメラメーカーも、周辺機材メーカーも、ユーザーも、ただひたすらAvidの開発発表を待つという時代は過ぎ去った。現実の制作ワークフローの課題はなにか、それをどう改善していくのか。Avid Connectを通じたAvid製品にかかわるすべての人のコラボレーションによって、新たな制作環境が生み出されていくだろう。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。