txt:岡英史 構成:編集部

ブランディングとマーケティングの重要性

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M4/3マウント+S35センサーの組み合わせはレンズを選ばない

GY-LS300CH(以下:LS300)と聞いて「あっ、JVCの4Kカメラね!」ってすぐにわかる方は相当希である。それ程までにこのカメラの認知度は低い。いや、カメラの認知度が低いのではなく、この時期に刺激的なカメラが数多くリリースされたために、記憶の中に埋もれてしまうのかも知れない。そんな事にはならないはずの素晴らしいカメラであるとここで言いたい。ブランディングとマーケティング無くしては、商品の良さは広まらないのである。

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ショルダースタイルにRIGを組む。もちろんEVFは必須だ

その仕様は、マイクロフォーサーズ(以下:M4/3)マウントを持ちながらスーパー35サイズのセンサーを持つと言う今迄のカメラには例を見なかった構成。そのままではM4/3レンズのセンサー面の方が小さいので四隅がケラれてしまうがVSM(バリアブルスキャンマッピング)と言うサークル面を変化させる事によって、様々なレンズを使うことが出来る。4K収録でM4/3・EF(含む35mmスチルレンズ)PLの3マウントは問題ない。 逆にHD収録ならM42マウントは、35mmフルサイズはもちろんのこと、Cマウントは、16mm、そしてB4レンズまでもが使用出来る(*追記修正しました)。この汎用性は他のカメラには無い物だ。ココまで特色のあるカメラが余り認知されていない事に筆者は嘆いている…。

今回、LS300の発売後に製品版をお借りして色々なロケで使い倒してみた。

Case1:NAB show 2015

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NABにて、カンファレンス収録でのLS300

毎年NABshow取材にはメーカーさんにご協力頂いてその時の最新業務用カメラをお借りしている。つまり、展示前の最新機材をNAB取材に毎回投入するために注目される。数年前にXF105とXA10が出た時は小寺氏がXA10、筆者がXF105を持って居たら会場までのモノレールの中で大騒ぎになったくらいだ。

更に三脚等はLibec USAにご協力頂いているが、今回は会期前にSONYやAutodesk、Grass Valley、Avid等様々なカンファレンスがあったので、展示会前にも三脚等を持ち込むことになった。もちろんカメラはLS300を使用。携帯性の良さが上げられる。今回はレンズをワイド寄りの標準ズーム(18-85EF-S)と望遠ズーム(70-200EF)の2本にオリンパス製のパワーズーム付きの3本をチョイス。LS300本体はハンドルも脱着できるので長玉が一番大きい荷物だったりする。ただ小型とは言えEFレンズの重量を考えるとショルダータイプにすべくRIGとVFもASSYで持ち込んだが、これらの物は全て機内持ち込みサイズのキャリーバッグ(マンフロットPL Pro-V410)に全て入ってしまうコンパクトさだ。4K収録カメラでしかもレンズ交換式だとココまでコンパクトに収納出来るカメラはない。

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下のキャリーバッグにカメラ関係一式(機内持ち込み)、上のローラーバッグに三脚等機材一式(預け入れ)、共にマンフロットPL Pro-V410 / PL LW-88

今回の動画取材は全てLS300で収録、EDIUS Pro 7で編集~書き出しのワークフローとした。流石に全ての動画を4K収録は出来なかったが、それでもH.264ベースのUltra HD 150Mbpsはこの手の取材にはうってつけだ。4:2:0 / 8bitと言うフォーマットは色情報的にやや少ないが、その分ファイル自体は無茶苦茶軽い。今回のPC環境はMacBook Pro 17インチ(Late 2011、Core i7)にWindows 7をBoot Campで走らせ、そこにEDIUSをインストールしてあるが、この内容でも中間コーデックに変換することなくネイティブの編集に入ることが出来る。

4Kで撮ってクロッピングと言う事もこのシステムなら十分にアリだ。この様な取材での即効性が求められる現場には当にLS300は収まりが良い。実は今回のNAB後にもLAにて取材があり、LS300を活用。この時は機材も完全に決まっていたのでキャリーバッグのみに全てを集約しての移動。PMW-EX1Rとの2カメ体制だったが、JVCの色味はEX系のフォーマットに非常に相性が良く現場でのホワイトバランスだけでも十分だ。この時はEX1で寄りの細々した動きを、広いLS300は4K収録しクロッピングにて画角変更を行うのをアウトプットとして使用した。

Case2:ブライダル

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1/4inchネジ穴が数カ所付いているのでアクセサリーも付けやすい

実はこの運用がLS300の性能を出すには一番良い現場だと感じた。理由としては2スロットによるバックアップ運用が出来ると言うこと。もちろん4K収録時にもそれは出来る。撮って出しで使うならNLEの処理速度優先でAVCHD運用もアリだ。しかし最新のEDIUS Pro 8を使用すれば4:2:0-8bit収録のLS300は最新のi7搭載ノートPCならストレス無くUltra HD素材を扱うことが可能だ。この組み合わせならAVCHDは必要ないとも言える。

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スライダーとの組み合わせも軽量の為中々良い。勿論、RIGを使用することで長時間の記録撮影も可能だ

しかし、Ultra HDと言うファクターは撮って出しにありがちなカメラマンの技量不足を十分にフォーロー出来る素材となる。Ultra HDから切り出してHD(ブルーレイ)なら2倍のブローアップが可能、更にブレ補正も豪快に使えるので編集で映像を助けることが十分に可能になる。またオリンパスM.ZUIKOレンズと組み合わせればAFも含めたフルオート撮影も可能で、M4/3レンズとは言えVSMの恩恵によりレンズによっては数値以上のワイドが取れる。またEFレンズを使うよりも小型化出来るので、ボディサイズも含めればMōVI 5にも載せることが可能。実売価格も踏まえればこのレンジの方には是非使って頂きたいと思う。

Case3:舞台撮影

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M4/3 75-300mmは強烈だ。SHOGUNとの組み合わせもバッチリ!但し現状では4K収録時(HDMI接続)にはトリガー信号が効かないのでRECは手動

今回はミュージカル界では名作と呼ばれる「レ・ミゼラブル」の本番にテストすることなく投入。結果的には何も問題なく収録は可能だった。今回のテーマは何処までオート機能を使えるかと言うこと。望遠レンズ、しかもこの舞台は人間の目で見ても非常に暗い為にISOはやや高めの1600~6400まで。さすがに6400まで行くとそこからクロッピングでのズームアップは厳しい感じもするが、1600なら完全に常用可能となる。つまり無理に300mm/F2.8等の高価なレンズを使わなくても仕事に支障は出ないと言うことになる。

今回の現場は有楽町の「帝国劇場」。その広さはWebサイトで見て貰えば解るはずで、この劇場のフルバックから舞台までウェストサイズまでは十分に寄れるサイズ。ここで最初からHDサイズで良いならVSMを使えば最大2倍のテレコンを使用するのと同じ意味合いなので、ちょっとアップ目が欲しい時などはこの機能を使えば問題ない。

更に今回はバックアップの意味も込めてATOMOSのSHOGUNも投入。双方特に何も設定することなくHDMIケーブルの1本で繋がってしまう。残念ながら4K収録時には本体のトリガーがSHOGUNに効かないが(手動でのREC)、HDでのSDI運用ならそれも問題ない。LS300には本体に波形モニター等は持っていないのと、舞台の様に出来れば細かく色んな情報を見るのにSHOGUNとの組み合わせは当に最強だ。但しLS300の4Kアウトは本体の収録と同じく4:2:0-8bitなのであくまでもモニタリングとバックアップ運用と言う考えが正解だ。

総評

このカメラは現場で全てを決めて、後は自分の中のワークフローに載せてインハウスですませる方には当に最初の4Kとしてはうってつけの1台だとお勧めできる。前記したがとにかくファイルが軽い事でNLEへの負担が少ない。ウチの編集環境は最新ではない第2世代のi7をベースにしてるが全く問題はない(HDDはSSD仕様)。しかし逆に言えば後処理(カラーグレーディング含む)をすると言う方には少々厳しいかも知れない。LAWやLogも搭載しておらず8bitでも4:2:2ならまだ少しはグレーディングの幅も出来るが、4:2:0ではやはりバウンディングが大きい。NEX-FS700でのグレーディングに近いかも知れないので制作系で使うには余程その点を注意した方が良いだろう。筆者的にはその点は100%満足できる物ではない。その代わりENG系ではこれほど何でも出来るカメラはない。特にHVR-Z5JやXF305系のユーザーが乗り換えるなら自信を持ってお勧めしたい。

6月9日(火)14:00~15:00の時間帯でセミナーと言うか少しお喋りをさせて貰う事になった。場所等の詳細は下記のJVCサイトから申し込みも兼ねて見て欲しい。ココでは説明できない微妙なニュアンスが伝わればと思う。もちろんハンズオンもあるので、実機にしっかりと触ってもらいたい。尚SDカードはUHS-I スピードクラス3(U3)規格がUltra HD収録には必要なので注意を!

セミナー詳細: http://www3.jvckenwood.com/pro/event/

WRITER PROFILE

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。