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Column

Vol.10 映像業界のジェンダーについて考える

2015-06-12 掲載

女性だから?

「アニメ」だから。「人間ドラマ」だから。「癒し系」だから。いろいろな扉がノックされて仕事は私の元にやってくる。まあやっぱり昨今特に多いのは「女性」だから、「母親」だからとくる仕事だ。広告の仕事はターゲットが明確なので、気持ちがわかるということでターゲットの代表として呼ばれる事も少なくない。うーん、でも、でも私は本当に「女性」を代表して発言していいのかしら?「母親」を代表していいのかしら?毎度小さな罪悪感を感じてしまう。

先日友人から女性ファッション誌向けにアンケートを頼まれた。そこには「あなたのあるべきヒールの高さは?」「憧れの外国人女性セレブは?」「最近自分へのご褒美、何を買った?」などという質問がつらつらと並んでいる。あぁ…、めまい。

さらっと答えが出るのが最後の質問で、答えは「カメラ」。うーん、求められている回答とは違う気がする…。これらの質問にスパッと答えられるのが現代の「女性」としてあるべき姿なのだろうか…?だ、だれか~、水を。

自分が「一般的」というラインから大きくはみ出しているんじゃないかとうっすら気づきつつも、昨今は堂々と「女性代表」みたいな顔で発言する図太さを身につけはじめている私。冷静に考えるとちょっと恥ずかしい。

昔はジェンダーで仕事が来る事に違和感を感じていたが、いまはそれも個性のひとつと開き直って「お母さん」という新しい扉が開かれたなあ、ラッキー!くらいに思っている。まあフリーランスにとっては仕事の間口は広いに越した事は無い。そのうち「親の介護」という扉とか、「健康食品」という扉とか、まだみぬ扉が開いていくのかもしれない。

性別は判断基準のひとつ

スタッフを選ぶとき、私にとっても性別は判断基準のひとつだ。基本的に男社会のガテン系現場なので、そこに女性が1人でもいると気持ちが穏やかでいられるし、息がつまったときのよりどころにもなる。たいていヘアメイクやスタイリストは女性にお願いすることが多く、男性スタッフがタバコを吸いにいくときなんかに、私は女性スタッフの基地にまざって甘いものをつまみながらおしゃべりをして気分転換をする。最近はPMやADなどに女性が入ってる事も少なくないし、現場に女性がいるのは珍しい光景ではなくなった。

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編集室を出たら目の前にドーン。近くにおいしいケーキ屋あり

女性スタッフがいる時は編集の合間に「おやつにケーキ買ってきちゃう?」、ロケハン中に「たいやき屋があるけど。食べるよね?よね?」などと半ば強引な女子トーク的展開に持っていくこともできる。若い男子に同じ事をやるのはやっぱりなかなか勇気がいる。同性同士ってだけで結束感があるのは、人数が圧倒的に少ないからだろうか…?

ちょっと前に化粧品会社からCMの企画の仕事でお声がかかった。商品は男性用化粧品。チームスタッフは私をのぞいて全員が男性であり社員プランナーである。普段このクライアントの仕事で出会うのはほぼ女性だけなので、なんとも新鮮だ。男性化粧品の宣伝が向いているだろうと唯一選ばれし女…。この仕事において私のジェンダーの位置づけは興味深い。性別は関係なく呼ばれたということか?いや、まて。私はみんなと同じく男性代表として呼ばれているのか…。


深夜に今後の人生について語る

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目の錯覚をいかしつつ、アナログセットで走るミニカーを撮影。スタジオを2つ行ったり来たりしながら

先日撮影で深夜をとっくにすぎてしまった時のこと。照明の準備をぼーっと待ちながらクライアントの女性とぽつりぽつりと話をした。彼女も私と同じ幼児の子どもを持つお母さんで、仕事とはいえ深夜も2時をまわってかなりの不良母だ。

「じつはいまの会社、今月いっぱいで辞めるんです」と彼女は言う。えぇ~、目の前で御社の撮影してるのに~?と驚きつつも話を聞くと、子どもを連れて夫の海外赴任についていくことにしたという。「言ってみれば駐在さんの奥さんという感じです。いろいろ悩んだけど、そういう人生を歩もうと決めてしまいました」と。言葉のはしばしから悩んで悩んで選択した答えだったということが伝わってくる。

スタジオの隅の暗がりで、まぶしく照らしだされたセットをみつめがら、ぽつりぽつりと今後の人生について語る私たち。たった半年くらいの期間だったけれどいっしょに仕事をして、少しずつ距離を縮めてきた。きっと違う形で出会っていたら友達として仲良くなっていただろうなと思わせてくれる、なんだか気の合う女性だった。仕事が終わるたびにスタッフとは別れがくる。でも彼女との別れはちょっと違う。女の人生はその時々でいろんな選択肢がある。みんないつか自分で決断しなくてはいけない時がくる。

働いている人、専業主婦の人、育児休暇中の人…。いろんな女性たちを身近に眺め、会話をし、考える。やっぱり「女性の代表」にはなれないけれど、代弁者くらいになることはできる。ちょっと恥ずかしいけれど、これからもほどほどに図太くやっていこうと思う。


WRITER PROFILE

オースミ ユーカ 映像ディレクター。企画、脚本から演出までジャンルを問わず活動。


[ Writer : オースミ ユーカ ]
[ DATE : 2015-06-12 ]
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