PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > コラム > 江口靖二 > [江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.20 "8K"はデジタルサイネージにこそ最適なのだ!DSJ2015レポート

News

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.20 “8K”はデジタルサイネージにこそ最適なのだ!DSJ2015レポート

2015-06-19 掲載

txt:江口靖二 構成:編集部

今年も6月10日から12日までの3日間、幕張メッセで「デジタルサイネージジャパン(DSJ)2015」が開催された。今年で7回目の開催になるこの展示会は、「Interop」や「Connected Media」、「APPS JAPAN」などと合わせて、13万6000人以上が来場した。DSJ2015のトピックとしては、何と言っても8Kサイネージであったと思う。

やっと?4Kが続々導入されはじめた

4Kが徐々に現実的なものになりつつある中で、デジタルサイネージの世界でも今年の4月以降、常設の4Kサイネージが続々導入されている。いまのところはJR東京駅、西武池袋駅、東急渋谷駅、阪急梅田駅などで広告利用での導入が進んだ。

とはいいながらも、実際には4Kですらまだ導入途上であるわけだが、DSJ2015ではデジタルサイネージコンソーシアムとNHKと共同で、「8Kサイネージプロジェクト」を進めてきた。これは8Kの利用用途として、放送、医療、パブリックビューイングに加えて、デジタルサイネージも非常に有望であると考えるからだ。放送に関しては国が定めるロードマップに従って、粛々と実用化に向けた取り組みが進んでいる。医療の世界でも同様だ。これらに加え、8Kの解像度はデジタルサイネージにこそ、最も成長性が期待されているのではないか、という仮説である。

デジタルサイネージにおける8Kには、2つの方向性がある。ひとつは高い解像度を活かした大画面化である。すでにマルチディスプレイであれば8K以上の解像度で運用されている事例が多数ある。たとえば羽田空港の国際線ターミナルには、32面マルチで12Kで表示されている。こうしたマルチ画面はもちろん、80インチを超える利用シーンは駅構内や空港、大型商業施設などで潜在的なニーズは高い。また100インチを超えるような屋外大型ビジョンでは、更なる高画質化のニーズも高い。LEDディスプレイの低価格化もこれに拍車をかけている。2020年のオリンピックに向けて各種施設や街頭に、パブリックビューイング用の施設も相当数導入されるに違いない。

もう一つの利用は高画質化を活かしたコンテンツニーズも強いということだ。例えば化粧品やジュエリー、車などでは、印刷との画質比較において、デジタルサイネージの利用を躊躇する広告主もあるのも事実だ。今回の「8Kサイネージプロジェクト」では、これらの可能性を検証することが目的でスタートした。デジタルサイネージコンソーシアムでは、NHKと検討を重ねて、これらの検証のために、世界ではじめてデジタルサイネージのためだけのコンテンツを実際に企画し制作した。これをDSJ2015会場内に設けられた8Kパビリオンにて公開展示を行ったのである。

デジタルサイネージと8Kは相性がいい

ds2015_20_01397 現実にはあり得ないサイズで、現実以上の高解像度で表現される映像のインパクトは圧巻だ
ds2015_18_20
京都の観光サイネージを想定したもの

まずデジタルサイネージの特徴として縦画面での利用が想定されるので、98インチのディスプレイを縦に設置する前提で企画を進めた。このディスプレイも、BOE社の協力により、縦設置ができるものを用意した。現時点で世界にはこれ1台しか無い。そしてデジタルサイネージコンソーシアム会員から広く企画を募集して、実際のサイネージとして見た場合に、8Kの特徴があるものを厳選して制作に入った。制作に関してはNHKの全面協力を得ることができた。選ばれた企画は3点で、ジェイアール東海エージェンシーの企画による京都の観光サイネージを想定したもの、森ビルの企画による東京のランドスケープを表現したもの、そしてHNKエンタープライズによる化粧品メーカーを想定した女性のアップを多用した企画である。

京都と女性モデルの撮影にはソニーのF65を、東京の都市景観にはニコンのD800によるタイムラプス撮影を行った。これまでNHKでは放送利用を想定した景色やドラマ、あるいはライブのような作品を多数制作してきたのだが、これらとは接触態度が異なるデジタルサイネージの場合、より短時間で、よりインパクトのあるものが求められると考えられる。そこで特に女性モデルの企画では、製作過程における課題と実際に表示した場合のインパクトを検証した。


特に制作上の課題も浮き彫りに

ds2015_20_mix 産毛の一本一本まで再現される8Kサイネージ。インパクトはサイネージにとって非常に重要だ

8Kではこれまで以上に細部まで再現可能なので、例えばメイクにも今までよりもはるかに多くの時間を要した。例えばマスカラひとつ取っても、いままで気にならなかった「ダマ」になってしまう部分が気になってしまうので、ヘアメイクさんたちは大型のルーペで確認しながらの撮影となった。合わせて照明のセッティングにも多くに時間を必要とした。

こうした今まで以上に手間を掛けて実際に得られる映像と、それをデジタルサイネージとして見た場合に、手間に見合うだけのインパクトを得られるかどうかがポイントである。結果としてはそのリアルさ、臨場感は圧倒的なものであったと言えよう。何年か後に、おそらく2020年頃までには、機材やポスプロ関連にかかる費用は問題ない程度まで低下することは間違いない。HDや4Kがそうであった、そうなりつつあるようにである。

可能性を現実味に変える努力

前述した西武池袋駅では、HDと4Kのサイネージを至近距離で比較できる設置環境になっている。そこでは4Kの表現力が際立っていることが確認できる。そして今回98インチ縦で8Kサイネージコンテンツを見てしまうと、4Kにすら戻れないことは誰しも感じたことだろう。2020年というのはやはり一つのターニングポイントになるだろうし、コスト面がクリアになれば(必ずなるのだが)、デジタルサイネージにおける8Kのニーズはかなり明確であることは検証されたのではないかと考えている。

冒頭で述べたように、4Kですらまだまだこれからであるわけだが、デジタルサイネージの普及を加速させるためには8Kサイネージの可能性は無限大であり、多くの人々の努力と挑戦が必要である。今回のトライアルは一つの大きなきっかけになったのではないだろうか。


WRITER PROFILE

江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。


[ Writer : 江口靖二 ]
[ DATE : 2015-06-19 ]
[ TAG : ]

関連のコラム一覧

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.30 一番わかりやすくて人に優しい観光案内サイネージ

txt:江口靖二 構成:編集部 川越にある観光案内サイネージ このところ観光案内に特化したデジタルサイネージがとても多くなっている。しかし日本国内にはあまり使い勝手のい... 続きを読む

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.29 システムとコンテンツの両方が新しいマロニエゲート銀座の10Kサイネージ

txt:江口靖二 構成:編集部 マロニエゲート銀座で見つけた花時計型サイネージ 商業施設でのデジタルサイネージは、販売促進と館内案内などのインフォメーション提供として使... 続きを読む

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.28 生活シーンに溶け込むためのデジタルサイネージの微かな変化

txt:江口靖二 構成:編集部 Digital Signage Expo 2017から見えたサイネージの今 デジタルサイネージは、広告、販促、情報提供などの目的で利用が... 続きを読む

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.27 ライブビューイングビジネスの可能性

txt:江口靖二 構成:編集部 今、注目されているライブビューイング 家以外の場所にある全てのディスプレイ、スクリーンはデジタルサイネージである。デジタルサイネージは広... 続きを読む

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.26 お手軽系のデジタルサイネージのオーナーを訪ねて日間賀島に行ってみた

txt:江口靖二 構成:編集部 活躍する小規模デジタルサイネージシステム 一般店舗などの店頭で、安価で手軽に使えるデジタルサイネージを多く見かける。しかし、本格的な普及... 続きを読む

WRITER PROFILE

江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。


Writer

編集部
PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。
小寺信良
業界で噂の新製品を、AV WatchやITmediaのコラムでもおなじみの小寺信良氏がレポート。
raitank
アートディレクター。あまたの海外ソースを読み漁ってHDSLRを独学。国内と海外の情報流通の温度差にモーレツな疑問を感じ、最新の情報を自ら日本語で発信するblogを運営中。
ふるいちやすし
自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。
岡英史
バイクレース及びF3レース参戦など、映像とはかけ離れた経歴を持つ異色ビデオカメラマン
江夏由洋
兄弟で株式会社マリモレコーズを設立し、ノンリニアにおける映像技術、映像制作を中心に、最新技術を取り入れたワークフローを提案している。
鍋潤太郎
ロサンゼルスを拠点とするVFXジャーナリスト。
林和哉
映像プロデューサー/ディレクター。入口から出口まで全てのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。
江口靖二
江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。
栁下隆之
写真家アシスタント、現像所勤務を経て、撮影機材全般を扱う輸入販売代理店で17年余り勤務の後に、撮影業界に転身。一眼カメラによる撮影を得意し、代理店時代に手がけたSteadicamや、スタビライザー系の撮影が大好物。
猿田守一
企業用ビデオ、CM、ブライダル、各種ステージ記録など撮影から編集まで地域に根ざした映像制作活動やCATV局などへの技術協力なども行っている。
オースミ ユーカ
映像ディレクター。企画、脚本から演出までジャンルを問わず活動。
土持幸三
1970年生。鹿児島県出身。俳優を経て渡米。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。
鈴木佑介
日本大学芸術学部 映画学科"演技"コース卒の映像作家。 専門分野は「人を描く」事 。 広告の仕事と個人ブランドでのウェディングがメイン。 セミナー講師・映像コンサルタントとしても活動中。
松本敦
映像クリエイター。企業VPからスポーツイベント撮影まで幅広く手がける。アクションカムやドローンなどの特殊ガジェット好き。
宏哉
フリーランス2年目の駆け出し映像屋さん。バラエティーから報道や空撮まで幅広い番組撮影をこなすテレビカメラマンであり、ダンスイベントから幼稚園お遊戯会収録まで請け負う街のビデオ屋さん。タイムコード・ラボ代表。Next-Zero.com管理人。
山下大輔
東京オフラインセンタープロダクトサポート所属。個人でもAdobe Premiere ProやAfterEffectsの勉強会を定期的に開催している。
柏原一仁
日本大学芸術学部写真学科卒、銀一株式会社海外商品部勤務。 銀一が世界中から輸入する写真・映像用品ブランドのマーケティング担当。静止画・動画・音声と様々な技術に翻弄される日々。好きな食べ物はからあげ。
井上晃
映像制作会社「有限会社マキシメデイア」代表、制作プロデューサー&キャメラマン。Facebookグループ「ATEM Tech Labo」、「Grass Valley EDIUS ユーザーグループ」を主催して、ATEMやEDIUSの布教に、日々勤しんでおるでよ。
奥本宏幸
大阪を拠点にしているフリーランスの映像ディレクター。演出・編集・モーショングラフィックをバランス良くこなす。フィンランドサウナが好きです。
安藤幸央
無類のデジタルガジェット好きである筆者が、SIGGRAPH ASIAやCESなど海外の注目イベントを紹介。
手塚一佳
CGムービー制作、ネットワークゲーム制作を得意とするデジタルデザイン会社アイラ・ラボラトリの代表取締役。
高野光太郎
Cosaelu株式会社 代表取締役 / 映像ディレクター ミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。
ヒマナイヌ
頓知を駆使した創造企業
駿河由知
中央区築地出身。マルチカメラ収録&配信ユニット「LiveNinja」メンバー。2006年より株式会社スタートライン設立。外務省、国連機関、国際NGOなどの国際会議やシンポジウム、企業イベントなどのライブ配信を担当
山本久之
映像エンジニア。フリーランスで映像設備のシステムインテグレーションと、ノンリニア編集に携わる。
ベン マツナガ
未来シネマ/ディレクター。ハリウッドでの大型映像制作、短編時代劇の自主映画制作を経て、現在は、映像を通じて人と人をつなぐことをテーマに様々な映像制作に取り組んでいる
河尻亨一
1974年大阪生まれ。雑誌「広告批評」を経て現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰、企業コンテンツの企画制作なども行う。デザイナー石岡瑛子の伝記「TIMELESS」(http://eiko-timeless.com/)をウェブ連載中。
茂出木謙太郎
株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員
稲田出
映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。
黒田伴比古
報道・ドキュメンタリーエディターでありながら、放送機器に造詣が深く、放送局のシステム構築などにも携わるマルチプレーヤー。
ヒラタモトヨシ
ファッションとテクノロジーを繋ぎイノヴェーションを生み出す事をライフワークとし、WEB/ライブメディア/高精細映像表現を追求。
猪蔵
いつも腹ペコ。世の中の面白いことを常に探っている在野の雑誌編集者。
須藤高宏
東京・国分寺市に於いて録音スタジオ「マイクロサウンド」を運営し各種録音編集に携わる傍ら最近では各種イベント配信音声を担当。
林永子
2005年よりサロンイベント「スナック永子」を開催。通称「永子ママ」
ViewingLab
未来の映像体験を考える有志の研究会。映画配給会社、映像作家、TV局員と会員は多岐に渡る
石川幸宏
映像専門雑誌DVJ編集長を経て、リアルイベントを中心とした「DVJ BUZZ TV」編成局長として活躍中。
山下香欧
米国ベンチャー企業のコンサルタントやフリーランスライターとして、業界出版雑誌に市場動向やイベントのレポートを投稿。
岡田智博
クリエイティブクラスター代表。メディアアートと先端デザインを用いたコンテンツ開発を手がけるスーパー裏方。
萩原正喜
米国コロラド州から、米国のデジタル放送事情からコロラドの日常まで多岐に渡るコラムをお届けします。
坪井昭久
映像ディレクター。代表作はDNP(大日本印刷)コンセプト映像、よしもとディレクターズ100など。3D映像のノンリニア編集講師などを勤める。
しらいあきひこ
カメラメーカー、ゲーム開発などの経験を持つ工学博士が最先端のVR技術を紹介。
秋山謙一
映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。
今間俊博
アナログ時代の事例を通じ、教育関連の最新動向を探る。
金田浩樹
映画・テレビの映像制作を中心に、USTやニコ生等、ライブメディア各分野を横断して活動中。ジャンルや固定概念にとらわれない構成力と発想に定評あり。
伊藤裕美
オフィスH(あっしゅ)代表。下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催している。
UserReport
業界で話題の商品を実際に使ってみてどう感じたかを、各方面の様々な方々にレポートしていただきました。
System5 Labs
SYSTEM5スタッフが販売会社ならではの視点で執筆します。

トップ > コラム > 江口靖二 > [江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.20 “8K”はデジタルサイネージにこそ最適なのだ!DSJ2015レポート