これまで主に撮影と演出について話してきたが、今回は最近重要になってきたデジタルワークフローについて話してみたいと思う。

時代によって変化して来た映像制作ワークフロー

映像制作のワークフローは基本的に大きく3つに分けられる。企画書から脚本を仕上げるなどの撮影準備の「プリプロダクション」、撮影自体の「プロダクション」、編集作業の「ポストプロダクション」。最近のプリプロダクションでは、作品内容に合わせたワークフローや撮影方法、カメラ選び、編集方法が昔に比べて重要になってきている。このワークフロー、つまり作業の流れがすべてデジタルになっているのでデジタルワークフローと呼ぶ。フィルム時代もカメラの種類は多かったが、大まかには16ミリか35ミリ、カメラ、レンズマウント、音とシンクするかしないかで分けられ、それにフィルムの種類で色合いや撮影手法を考えてきた。

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今はカメラおよび編集がデジタルになり、さらにその種類や収録・管理方法が大きく増えて、選択肢が広がった。4Kで撮影する必要があるかどうか、RAWやLogで撮影し、カラーグレーディングをするか、カメラが小さい大きい、カメラで記録させるメディアの種類やファイルの種類も様々で、データを管理する必要があり、頭を悩ます機会が増えてきた。

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「今、このカメラが流行っていると聞いたから…」という安易な気持ちでカメラを選んでしまうと、編集ソフトで対応していなかったり、思ったような映像が撮影できないこともおこり、きちっとワークフローやデータ管理をしないと大変なことになる。フィルム時代は撮影済みネガフィルムの扱いにかなり緊張感を持って行っていたが、最近はSDカードだったりするので雑に扱うスッタフも少なからずいるし、また、編集の事を考えずに「きれい」と言われるファイルで撮影して、後で苦労する作品もある。

だから撮影の前、プリプロダクションの段階で、プロデューサー・監督・撮影監督と編集やCG担当、DIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)などで、カメラの選択から撮影ファイルの選定、撮影したファイルの管理と編集への引き継ぎなどを話し合い、決めて行かなければならない。フィルムで撮影していた時よりも、より複雑になり専門知識が必要になっているのだ。DITは最近できた新しい職種で、一言でいえばデジタルワークフローを管理する人のことで、撮影ファイルから編集ファイル、最終的な書き出しファイルまで熟知している。

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低予算での撮影が多い僕の場合(あぁ、「予算が充分にある」と言ってみたい!)、撮影現場をできるだけコンパクトにしたほうが良いと思っている。さらに時間的に余裕が無いときは、現場での音録りはあきらめて、アフレコにすることも多い。コンパクト→人数が少ないということだが、人数が少ないということは、単に人件費だけではなく、車両の数、駐車場の数、食事の数など、多くに影響する。

有難いことに、僕はそのスタイルのエキスパートである撮影監督の長田勇市さんと仕事をさせていただく機会が多い。長田さんはコンパクトな撮影に興味を持っていらして、コンパクトな撮影・照明クルーで撮影現場をこなし、常に新しい機材を積極的に活用し、時には機材製作会社にアドバイスをおくる。

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現在はミラーレス一眼のGH4で撮影することが多いそうだ。先日も映画の海外ロケでGH4、X1000、FZ1000と、民生機だけで4K撮影を行ったそうだ。単にこのGH4で撮影するのでも、実際にカメラで記録させたものを使うのか、外部レコーダーで記録させたものを使うのか、選択肢は多数ある。今回は外部記録を行わず、カメラ内でLog収録(メーカーから特別に提供)して、そのファイルを編集、カラーグレーディングしたとのこと。今回はDITはいなかったそうだが、デジタルワークフローを編集作業をするポスプロの会社、カラーグレーディングとDCP作業を行う会社と綿密な打ち合わせを行ったそうだ。

このように4K、RAW、Log、DI、DCPなど、撮影・編集環境は刻々と変化してきている。「カメラなんてなんでもいいんだよ、話が面白けりゃ」と、極論を言ってデジタルワークフローに全く興味を持たないプロデューサーはたくさんいる。プリプロダクションは脚本・スタッフィング・キャスティングだけが重要だと思っているのだ。作品の良い悪いを決める要素として、あきらかにデジタルワークフローが入っている時代だと僕は思う。

WRITER PROFILE

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。