土持幸三の映像制作101

txt:土持幸三 構成:編集部

なぜ失敗したのか?失敗から学ぶいろいろ

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本格的な機材を使って撮影する小学校

あらゆる事に言えることだが映像撮影にも失敗がつきものだ。特に初めての撮影は失敗の原因を探すことすら難しい事が多い。川崎市の小学校で映像教育を取り入れている学校では、前年と違う映像をつくり始めてきている。夏休みの宿題として脚本案を考え、その後、脚本を仕上げて撮影・編集と進む本格的な映像を制作する小学校もあるが、ほかの学校はクラスを5・6のグループに分けて学校紹介をすることからスタートした。

偶然にも今年は2つの学校で学校紹介ではなく、近所に住む職人や、川崎マイスターに認定されている方などにインタビューをして仕事ぶりを紹介する、という内容と、日常生活の問題点を提起し、より良い生活をおくるための提案を考え撮影するという内容だった。しかし、なぜか今年は音が録れていないことが多かった。正確に言うと外付けマイクで録音できず、カメラ本体のマイクで録音されていた。マイクはプラグインパワーでカメラから電源供給されているので電池切れではない。オンオフの確認、カメラ本体への接続も確認したが問題ない。原因を突き止めるため撮影現場に張り付いていると判明した。子供たちが無意識のうちにマイクをオフにしていたのだ。

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出来上がった映像は父兄などに向けて発表する

例年だと数人の出演者がいるためマイクを持って出演することが少なかったが、今年はインタビューやプレゼンテーションの撮影がメインになったので1人の子がマイクを手に持って出演することが多くなり、1カットが終わると無意識のうちに手に持っているマイクをオフにしていたのだ。オンオフスイッチには触らないようにと言っても、カラオケ?に慣れているせいか、しゃべり終わるとオフにしてしまうのだ。

では、しゃべる時にオンにしてくれれば良いのだが、なぜかオンにしない。編集で使用するムービーメーカーは音の編集が貧弱なため、カメラに内蔵されたマイクでの録音だと、出演者の近くで撮影したもの以外、音が小さい。インタビューなど再撮影できないものは字幕を入れる事で対応せざるを得なくなった。子供たちは様々な失敗をする。「そんな簡単に撮影できたらプロはいらないじゃん」と言ってはいるが、例えば録画ボタンの近くに他のボタンがあると、必ず押してしまう子が出てくる。結果、やたらスローモーションや静止画の多い映像ができてしまう。

子供向けビデオカメラがあっても良い

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映像授業で習ったことをまとめたもの

これらの問題を解決するために、子供向け、いや初心者向けのカメラをつくってくれるメーカーはないだろうかと思う。まず、ボタンが少ないこと、オンオフのスイッチと録画ボタンがわかりやすいこと、設定ダイヤルがない事、優秀な顔認識と逆光対策を装備している事、外付けマイク用に汎用のアクセサリーシューが付いている事。携帯電話のように反応が良い大きな液晶も欲しい。フルHDとDVDサイズがあれば非力な学校のPCでも編集できていい。カメラの大きさも重要で、手のひらに収まるほど小さいと三脚に載せづらく、何よりも威厳がない。子供達は家に無いようなカメラを手にすることによって初めて大事に扱おうとするからだ。

最後に意外かもしれないが、カメラの底に付いている三脚用ネジ、これも子供達にとっては大敵だ。彼らの多くはネジを回す経験が少なく、生活でモノを回す事が少なくなっているからだろう、三脚のクイックシューをカメラに付けるときに右に回したり左に回したりして試行錯誤する。しまいには斜めに強引に差し込むこともある。おかげで、お借りしているカメラの数台はネジがキチッとネジ穴に密着しない部分ができ、クイックシューとカメラの間に10円玉等を挟んで揺れないよう応急処置をして使っている。三脚用ネジ穴は強力な素材でつくって欲しい。

変な話、携帯電話のようにボタンが少なく気楽にすぐ撮れて、なおかつ顔認識とそれに連動した露出設定が優秀で、小さ過ぎず、音の録音にも気を使っているカメラがあれば、子供や初心者にはベストなカメラなんだと思う。

WRITER PROFILE

土持幸三

土持幸三

鹿児島県出身。LA市立大卒業・加州立大学ではスピルバーグと同期卒業。帰国後、映画・ドラマの脚本・監督を担当。川崎の小学校で映像講師も務める。