セルフィー動画報道を考える

今年のCES取材では、いわゆるニュース取材スタイルで動画納品にトライしてみることにした。ただしInterBEEやNABのようにプロのカメラマンが同行してくれるわけではないので、動画撮影から集音、出演、編集まで、全部1人で行うことになる。このような方法論は、筆者が長年携わってきたテレビ放送からすればありえないリクエストなわけだが、全否定することはできない。その理由は2つある。

1つは、このような方法論はすでにYouTuberでは当たり前になっており、見る側もネットの動画なんてそんなもの、という見方をするようになったことである。もちろん、YouTuberの中でも稼いでいる人は結構いい機材を使っているので、セルフィーであるというだけでクオリティ的には十分なものも存在する。

もう一つの理由は、筆者にはそれができるスキルがあるということである。出演は長年PRONEWSで動画連載をやらせていただいていることから、だいぶ身についてきた。撮影はこれも製品レビューで多くのカメラをテスト撮影してきたので、概ね問題ない。そしておそらく他の人にないのが、編集技術だ。仕事の間口としては、フリーランスのライターという肩書きがあるから記事の依頼を受けるわけだが、ライターでありながらニュースの動画編集ができるスキルを持っている人は、あまりいないだろう。

機材をコンパクトにまとめる

実は昨年のInterBEEの際、この取材スタイルをテストした。オールドレンズをつけて遊ぶために買ったニコンD3300にキットレンズを付け、それをジンバルに乗せて自撮りしながらレポートした。ビデオカメラではなくデジカメを使った理由は、取材時に2種類のカメラを持ちたくなかったからである。ビデオ取材だけでなくテキスト原稿も書くので、その時には写真が必要だ。

さらにジンバルを使ったのは、手ぶれ防止のためではなく、カメラの水平を保つためである。三脚が使えれば別だが、カメラを片手に一人で話を聞きながら、もう片手にはマイクを持っていると、どうしても重さに負けてカメラの水平が取れなくなってしまう。これは事前に実験の結果、どうしてもそこがおろそかになることがわかったのだ。

D3300はステレオミニジャックながらマイク入力はあるので、ハンドマイクも繋いで集音も行うことができた点は良かった。しかしその一方で、AFにかなり難があることがわかった。動画撮影時のAFが遅さとあいまいさは、ニコンのカメラ共通の特徴である。そこで今回は軽量化と動画撮影時のAFの精度を考えて、ソニーのRX-100M3を使うことにした。カメラサイズの割にはジンバルが大仰だが、手持ちの機材の組み合わせなので仕方がない。

今回の動画取材カメラ

画質的には問題ないが、コンパクトデジカメの難点は、外部マイク入力がないことだ。そういう目線で調べてみると、コンパクトデジカメで外部マイク入力を備えているタイプというのは、現行製品では見つけられなかった。

騒々しい場内でインタビューを収録する場合、カメラマイクではどうにもならないのは明らかだ。そこで音声は手持ちのフィールドレコーダ、Roland「R-09HR」で収録し、編集で画と音を合わせることにした。

同期の取れないカメラとレコーダで収録したものを編集時に合わせるというのは、普通の人なら面倒くさくてまずやらないだろう。だがおよそ30年も動画編集をやっている側からすれば、そのような作業は造作もない。今のようにノンリニア編集では簡単だが、昔はリニア編集でこれをやってきたわけである。

実際にこのスタイルで取材したものが、このレポートだ(InterBEEなどでおなじみの「ぶらり」スタイルである。長尺収録なので編集には若干時間がかかるものの、この方法論なら無理がない。

一方失敗があったのは、インタビュー収録だ。RX100M3の動画は、インテリジェントアクティブ補正を入れると、ワイド端で33.5mmしかない。極力安定した映像を撮るためにこのモードを使ったが、対人の撮影ではあまり距離が離れられないので、顔がアップすぎる。スタンダードモードでは25.5mmまで広げられるので、このモードを使った方が良かった。手振れ補正をこまめに切り替えるというのが、ポイントであろう。

次回以降はこの経験を生かして、さらに動画取材を増やしていきたいと考えている。

WRITER PROFILE

小寺信良

18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。映像機器なら家電から放送機器まで、幅広い執筆・評論活動を行う。