txt:石川幸宏 構成:編集部

多様化しながら進化している4Kに注目

CP+2016会場では多くの映像・動画関係の新機材、ソリューションの展示も行われていたが、今年大きく目立ったのは、4K以上の高解像度映像展示とそれに伴う4K対応の周辺機材がさらに一般化してきたことだろう。コンスーマカメラの世界でもすでに4K撮影はスタンダード化してきており、それに伴う4Kもしくはそれ以上の視聴・上映環境も充実して来ている。

TV放送も4Kコンテンツが出始めつつある中、今後は4K対応の大型液晶TVや有機ELなどの高画質4Kモニターの導入と、大容量データの取り扱いツールの普及が順調に進めば、ここ1、2年で4K動画がスタンダード化も一気にしそうな勢いだ。さらにカメラの高感度・低ノイズ化、ハイスピード映像、HDRなど高解像度の進に随伴させたい機能もコンスーマ製品の方が進化のスピードが早く、中には目を奪われるような製品も出て来ている。多様化しながら進化している4Kスタンダード化を下支えする、注目の展示、イベントにフォーカスしてみた。

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ソニーは、α7S IIの超硬感度(最高感度ISO409600)をテストできる夜景ジオラマコーナーを設けていた。高感度も現況の機材選択には大きなモチベーションとなる

REDのニューラインナップが日本初公開

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RED SCARET-Wは、最大5K(5120×2700)/60fps、4K(4096×1728)であれば、150fpsまでの撮影が可能だ。ちなみにBRAIN自体の重量はRAVENと同じだが、カメラとして機能させるには周辺オプションが必須

会場奥手に設けられたプロ向け動画エリア。ここには多くのプロ映像関係機材が並べられているが、今年の注目は何と言ってもRED Digital Cinema社の新製品の登場だろう。機材レンタル会社のビデオサービスブースではRAID社の提供で、REDカメラの新ラインナップ、SCARET-Wと、RED RAVENが国内初展示されていた。

RED SCARET-Wは13.8メガピクセルRED DRAGONセンサーを搭載し、EF、PL等のレンズマウント交換やREDCODE RAWとProResの同時記録、カメラ内3D LUT出力といったREDのモジュール機構の基本機能が使用出来る。最大5K/60fpsから、4K/150fps、2K/300fpsの撮影が可能だ。R3DとApple ProRes各種(LT、422、HQ)に加えて、今後はAvidのDNxHRにも本年初夏頃に対応予定。企業CMやMV、インディペンデント映画等での小規模で本格的な作品制作に向いたシネマカメラといえそうだ。価格はBRAINのみで税抜119万4千円。

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RED RAVENは、最大4.5K(4608×2160pix)/120fpsまでの撮影が可能。小型軽量なBRAINがとにかく売りのリーズナブルなREDカメラ

RED RAVENは、9.9メガピクセルRED DRAGONセンサー搭載の注目のRED最下位機種で、最大4.5K収録が可能で、4K/120fps、2K/240fpsまで対応。DSMCユーザーのための4Kハイスピード撮影用お手軽カメラといったところか。EFマウント固定かつRED特有の各部パーツ交換オプションは効かないものの、軽量アルミニウム構造による約1.6kg(BRAIN+メディアベイ+レンズマウント)のラインナップ最軽量の小型筐体でドローン搭載などにも好都合なお手軽REDカメラだ。価格はBRAINのみで税抜71万4千円。SCARET-WとRAVEN、そして上位機種のWEAPONには、DSMC2アクセサリーの互換性がある。

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今回のCP+ではこの他にもREDカメラを随所で見かけた。カールツァイス社のブースでは、RED WEAPON 6K(Forged Carbon Fiber)に注目の新レンズOtus 28mm・f1.4を装着して実機展示されていた

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中国系のシネマレンズXEENを扱う、JBSクロス社(大阪)のブースでもRED EPIC-Xにでのデモ展示。XEEN Prime Lensシリーズは現状14,24,35,50,85mm T1.5(14mmのみT3.1)の5種を揃える、11枚絞り羽を採用した美しい光芒が魅力。PL/キヤノンEF/ソニーE/ニコンF/MFTの5つのレンズマウントにも対応。価格も1本あたり税抜313,500円と魅力的だ

EOS 5Dsによる8Kタイムラプス映像も公開

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3日目、4日目に行われたキヤノンの世界遺産スペシャルトークショーには両日とも大勢の観客が押し寄せた

キヤノンブースでは、開催後半27日、28日の2日間、同社が昨年からスポンサーとなり、撮影機材も提供しているTBSの人気番組「世界遺産」をモチーフに、同番組プロデューサーの堤慶太氏(TBS)と、4Kコンテンツの制作にあたっている4Kプロデューサー小川直彦氏(TBSビジョン)を招いたトークショーが開催され、多くの来場者を集めた。

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イベントに登壇したTBSの世界遺産プロデューサー、堤慶太氏(左)と4Kプロデューサーの小川直彦氏(左)

昨年から番組収録には、キヤノンのCINEMA EOS SYSTEMを採用し、現在、EOS C500、EOS C300 Mark II、EOS-1D C、XC10といった4K動画対応機種による4Kコンテンツも収録されている。現在4K収録に関しては数回に1回の割合で撮影されており、これまでイタリア/サヴォイア王家の王宮群、コスタリカ/グアナカステ自然保護区、そしてペルー/マチュピチュ歴史地区(3月20日放送予定)が4Kで撮影されている。

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ペルーマチュピチュ撮影の際に、EOS 5Dsを使用して8Kサイズで撮影されたタイムラプス映像も初公開された

トークショーではこの中から本放送を控えた、ペルー/マチュピチュ歴史地区の撮影シーンのメイキング映像とともに、4K撮影現場の詳細が紹介された。断崖絶壁に立つ遺跡群を登山しながら撮影するのは非常に困難を極めるが、CINEMA EOS SYSTEMの機動力と描写力で、これまでなかなか撮影されていないような場所からでも、4Kでの撮影が可能になったという。またマチュピチュではEOS 5Dsによる実質8Kサイズの超高画質によるタイムラプス映像も収録、この映像もこの会場で初公開・上映された(上映は4Kサイズ)。

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4K対応5,000lmのLCOS液晶プロジェクター4K500ST

キヤノンブースではその他、昨年のCanon EXPOで公開された8Kカメラによる8K映像シアターも常設され、連日多くの観客を集めた。またこの上映には1月に発表された、同社の世界最小・最軽量(約17.6kg※1月12日時点)、5,000lmのDCI 4K上映が可能なパワープロジェクター4K500STが使用されていた(4月中旬発売予定)。

4Kを下から支える製品群にも注目

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サンディスク社のポータブルSSDエクストリーム510

その他目立たない部分でも、4Kスタンダードを支える様々な製品群が展示されていた。メモリー分野では、サンディスク社からHDDの最大4倍のスピードと、水滴防塵に強いIP55対応、耐久性の高いゴムバンパーを周辺に備えた新モデル「エクストリーム510」ポータブルSSDを発表。480GBの手のひらサイズの筐体で、最大読取り速度430MB/秒、最大書込み速度400MB/秒。

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最速のSDカード「ビデオスピードクラス」

SDアソシエーションのブースで、最新のSDカード規格「SD 5.0」仕様でUHSスピードクラスの上を行く、4K以上のビデオ記録に向けた現況最速のSDカード「ビデオスピードクラス」を2月25日に発表し、CP+の会場で初公開展示した。最速クラスのV60(最低保証速度60MB/秒)、V90(90MB/秒)は8Kビデオ録画に対応している(V6、V10、V30は4Kビデオ録画対応)。

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エーディテクノブースで参考出品されていたAS4K2K

またエーディテクノ社のブースでは、デジタルサイネージなど、手軽に4K映像を場所を選ばず再生できるソリューションとして、近日発売予定の4K UHD対応のメディアプレイヤー「AS4K2K」を展示。SD(XC)カード(スロット数は1つ)で記録された4K(UHD)2K/60p(YUV4:4:4)の動画を再生、最大8コンテンツの同時でコーディング対応で画面分割表示もできる。またコンテンツを更新する際に便利なUSB自動コピー機能にも対応している。また参考出品として、4K UHDのHDMIスプリッター「HMS-0108」も展示されていた。

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参考出品のHDMIスプリッター「HMS-0108」

盛況なCP+に続いてこれから注目の映像業界

春節祭(旧正月)の混雑時期を敬遠して、いつもより遅い会期になった今年のCP+の登録来場者数は、25日が12,967名、26日が17,921名、27日が22,216名、28日が14,688名で、結果最終日までに合計67,792名を集めた。全日好天候だったことに加えて、キヤノン、ニコン、ソニーなどの主要メーカーがオリンピックイヤーであることから、こぞってフラッグシップの新型機種を発表したこともありイベント自体は大盛況だったが、その中で予想を上回るような、4K/8Kといった高解像度画像・映像への一般大衆の注目もその一因だったようである。さらに市場が求めれば4K、そして8Kの制作機材、周辺関係機材の訴求も思ったより加速しそうな勢いがある。4月にはNABが控える中で、国内の今後の展開にも要注目だ。

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。