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[360°Encyclopedia]Vol.09 バーチャル・リアリティ産業を牽引するのはアダルトコンテンツなのか?

2016-05-20 掲載

txt:茂出木謙太郎 構成:編集部

アダルトコンテンツに牽引されるかもしれないバーチャル・リアリティ産業について考えてみる

2016年はバーチャル・リアリティ(以下:VR)元年ということで、VR関連のニュースが毎日毎日それはもうものすごい数でアップされている。すでに出荷が始まっているOculus Riftは出荷予定が遅れたり、予約ユーザーに行き渡る前に店頭販売を決定したりと、ユーザーを毎日ヤキモキさせている。一方、HTCのVIVEはOculus Riftのどたばたを横に見つつ、すっと製品のSHIPを開始。コントローラーの出来具合や、空間を自由に歩ける体験から、かなり熱くVIVEをプッシュするユーザーも一気に増えた。

また、2016年10月に発売開始となるSonyのプレイステーションVR(以下:PSVR)は、高価なPCを購入しなくても、今持っているPS4がそのまま使えるということ、準備されているゲームの種類も豊富で「鉄拳」や「グランツーリスモ」などの人気タイトルがあることなどから、今年の本命ではないかという噂も囁かれている。ちなみに筆者の手元にはVIVEがいち早く届いていて、目下絶賛好評価獲得中の3Dペイントツール「Tilt Blush」での作品作りに余念がない。

このように実際に現場にいる人間にしてみれば、VRは確実に次の産業として重要な位置づけになるということは疑う余地もないのだが、それと同時に前述のような状況を目の当たりにすれば「新しいゲーム機が発売された」程度の間違った認識を持ってしまう人も多いのではないかと心配せずにはいられない。

こういった心配は多くの人が同じ思いでいるようで、「Oculus RiftやVIVEのようなヘッド・マウント・ディスプレイ(以下:HMD)はギークやオタクだけが購入するようなもので、一般の人は買わない」といった意見をよく耳にする。

そして、何故かそれに続けてよく言われるのが「アダルトコンテンツが充実すればVRはもっと一般的になると思う」という、VHS勝利の歴史を未だ根強く成功体験として語る人達の言葉だ。私はこの「アダルトコンテンツがVRを一般化する」説はそんなに単純な話ではないと思いつつ、こうなるべきではないかという思いがあるので、ぜひ今日はここに記しておきたい。

一般に、VRのアダルトコンテンツとして言われるのが「本物の女性・男性を模したCG」や「萌えCG」をVR空間で好きなように操作したり、アダルト用の端末と連動させてHな行為に及ぶもの、「VR用に撮影したAV」の動きに合わせてアダルト用の端末が連動してHな行為に及ぶもののどちらかではないかと思う(一部鑑賞専用というカテゴリーはあるかも。特にBLとか)。

もっとも、今のところVRと連動するアダルト用の端末は某所で見た試作品以外は知らないのだけれど、水面下ではかなり開発が進んでいるとのこと。果たしてどれくらいの金額になるのだろうか。ハプティクス(皮膚感覚のフィードバック)はあるのだろうか。もしそうなら結構高額そうだなぁ、などと技術的興味は尽きないのだが、ここで私はとても疑問に思う。そのようなコンテンツを体験するためのPCとHMDとアダルト用の端末を揃えるとするなら、おそらく最低でも40万円以上はかかる。はたしてCGの女性や、AVを観るために、今更そんな大金を払う人が大勢いるのだろうか。

AVがVHSの売上を牽引した背景には、そもそも「家庭でポルノ映画(AV)を見る事ができなかった」という時代背景があった。しかし今ではネットに繋げばいくらでも写真も動画もライブ配信も観ることができてしまう時代。それ以上のものを求めるのであればそれはもう、本物であって本物よりも良いものではないとダメなのではないかと思ってしまう。

つまり、前述のアダルト端末は、私から言わせると今やVRの誤訳として定着しつつある“仮想”であって、「あくまでも本物ではない」のだ。この「仮想」部分が強調されてしまっていることが、本質を求める現代に、時代的なずれが生じてきているのではないかと思えて仕方がない。

つまり、VRが「本質的に現実と同じである」ということを大事に考えると、VR空間に出現する女性や男性は「人格を持っている」ことが求められるのではないか。そして、本質的なことを考えると、肉欲を満たすことを優先するのではなく心を満たすことから入り込んで、ちゃんと恋愛を楽しむことができるような、リアルな体験をいくつも用意できることが重要になってくるのではないかと思う。

なので、私のおすすめコンテンツの切り口は、まず「アダルトカテゴリのあるVRチャットルームを開設」というのをご提案する(誰にw)。

いわゆる顔出し式のチャットルームであれば、3Dカメラで撮影しつつチャットルームに部屋ごと空間として設置。彼女の家に遊びに行くようにVRのチャットルームにアクセスする。お互いにアバターを使うのであれば、場の雰囲気が崩れないようなかわいいCGキャラクターを用意。いまやフェイストラッキングなど当たり前なので、実際の表情に合わせてくるくると可愛く表情が変わるキャラクターと、楽しくチャットする…。

本物の異性と楽しくコミュニケーションを行い、そのキャラクターごと好きになってしまうという状況は、空間を同じくすることで、本当の恋愛感情とおそらく区別がつかない。もちろん恋愛の先の展開もあり。

VRは思っている以上に自分の存在が「ここ」にあることを意識することが多い。これは、いままでのゲームやビデオ、そして4DXのような体感型のライドなどよりも、もっと強い。なので、一人称AVのような自分の思い通りに行かない一方通行の映像も、ゲームに出てくるキャラクターが自分の思い通りにしかならないことも、ユーザーはどちらも違和感、とくに「孤独」を感じるということに早晩気がつく。そうしたときには、ぜひともこのアイデアを思い出してほしいw詰めていけばかなり面白いサービスになると思うのだが。

当たり前のことだが、チャットルームの会話はすべて個人情報を除いて解析、学習されていけば、そう遠くない将来は、コンピューターが相手に合わせた最適な会話を紡ぐこともできるようになるだろう(昨日も塾のティーチングアシスタントがAIだったことを、アドバイスを受けた子供は誰も気が付かなかったというニュースが有ったばかりだ)。


WRITER PROFILE

茂出木謙太郎 株式会社キッズプレート代表。「楽しいInternetコンテンツ」をテーマに活動。現在VRの可能性をまさぐり中。CG-ARTS協会会員


[ Writer : 茂出木謙太郎 ]
[ DATE : 2016-05-20 ]
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