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[東京Petit-Cine協会]Vol.74 プチシネ流映画祭出展への道のり

#東京Petit-Cine協会

2016-06-15 掲載

txt:ふるいちやすし 構成:編集部

映画「千年の糸姫」いよいよこれから映画祭への挑戦

映画「千年の糸姫」の英語字幕も完成し、いよいよこれから映画祭への挑戦を始めるところだ。本音を言えば完成したら一刻も早く皆さんに観ていただきたいという思いなのだが、一般的には映画が完成した後、一年間は映画祭に挑戦する期間として一般公開はその後ということになる。

それにはいくつかの理由があって、作り手側の理由としては一般公開の時にできるだけ多くの方に注目して頂く為にも映画祭への入選参加、そしてできれば何かの賞を獲得できればという思いがある。しかしもっと大きな理由は映画祭側のプレミア(初公開)規定という物だ。これにはエリアによって様々な種類があって、例えば製作された国内、映画祭が行われる国、ヨーロッパや北米、アジアといったエリア、そしてワールドプレミアという世界初公開でなければならないといった厳しいものまで、それぞれの映画祭によって様々な応募規定がある。

四大映画祭と呼ばれるカンヌ、ベネチア、ベルリン、モスクワや、東京国際映画祭の国内作品に関してはワールドプレミアである事が条件で、作品によってはこの内の一つに狙いを絞って作品の完成時期を合わせてくる事もあると聞く。もちろん、こういうプレミア規定が無い映画祭も数多く存在するが、権威や知名度のある映画祭になればなるほどプレミア規定は厳しくなると考えていいと思う。逆に言うと映画祭の目的として、いい作品の発掘、発信という事にこだわっているとも言えるので、プレミア作品の方が選ばれやすいという傾向もあるようだ。

これに関連して完成時期の規定もある。ほとんどの場合、完成後一年以内の作品に限られるようだが、こういった規定がなければ山のように作品が集まってしまって映画祭の運営が大変な事になってしまう。長編作品が何百本も集まれば、それを審査するのにどれほどの時間と人が必要になるかを考えてみればわかるだろう。中にはその規定すらない、極端な場合、DVDで発売されていても応募できる映画祭もない訳ではないが、裏を返せばよっぽど作品が集まらない、つまり評判の悪い映画祭である可能性が高い。

以前、知人の監督が南米のとある国際映画祭に入選し、随分苦労をして行ってみたら、地元のお祭の片隅でひっそりと行われていた上映会のようなものだったという悲しい話を聞いた事もある。世界中で星の数ほどもあるかと思える国際映画祭の中から規定を読み解きどれを選んで応募するかは意外に難しい。ただ、ある程度高いレベルの映画祭を目指すのであれば、このプレミア規定と完成時期は意識する必要があるため、最低一年間の公開を我慢する事は必要なのだ。

大きな映画祭入選するハードルの高さ

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こうして規定や規模を吟味して自分の作品に合った映画祭を選ぶことができれば、一般公募に応募する事は大きな映画祭でもそんなに難しい事ではない。中には一旦作品の詳細なデータを登録し、字幕付きの作品をアップロードしておけば、ほんの数クリックで幾つもの映画祭に応募できるWithoutaboxのようなサービスもあり、応募費用も一件0~10,000円程度だ。だがこうして応募するだけでは参加したとは言えず、映画祭の名前やロゴを使う事は許されない。その中から選ばれ、実際に現地で映画祭の公式入選作品(Official Selection)として上映されて初めて正式参加、公式上映作品として認められる。

もちろん、受賞となるとその後、プログラマーとはまた別の審査員達により、映画祭の終了時に決められる物で更に名誉のあるものだ。だから兎にも角にも入選しないと何の意味もないわけだが、それにはもっと複雑な事を理解しておかなくてはならない。プログラマー、セールス会社、バイヤーといった人々がどういう役割を担っているのかを知っておく必要がある。

プログラマーというのは映画祭の正式スタッフで、文字通り上映作品を選び、上映プログラムを作る人達だ。彼らは日々新しい映画に目を光らせ、一般公募とは別に推薦作品として映画祭に持ち込むことができる。その中から入選作品の7~8割が決まり、残りが一般公募枠になるとも言われていて、大きな映画祭ではその殆どがプログラマーの推薦によるものだとも言われている。こういう人達に直接のコネがあればそれに越したことはないが、中にはそれを商売にしている不届き者や、プログラマーに直接見せるというだけで金銭を要求する応募代行屋みたいなのも存在する。

いずれにしても、プログラマーである所以は作品に対する目利きへの信用なので、お金さえ払えばどんな作品でも入選するという事はまずない。ただ、良い作品がプログラマーの目に止まれば入選の確率は飛躍的に上がるということだけは確かだろう。そこで登場するのがセールス会社と呼ばれるものだ。彼らの最後の目的は映画祭ではなく、一般の劇場やバイヤー、 配給会社に対して映画を売る事で、その為の戦略や広報、ポスターのデザインまでも請け負う事がある。その戦略の一つとして映画祭での入選や受賞はなんとしても欲しい勲章なのだ。それだけに作品によって映画祭を選ぶことや、そのプログラマーとの繋がりも彼らの実力として大きなウェイトをしめる。逆にプログラマーが推薦作品を探すのに有力なセールス会社に相談を持ちかけるという事もあると聞く。なんと言っても公開前の作品に出会うこと自体、簡単な事ではないからだ。

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私も作品に英語字幕が載ったら、まず真っ先にセールス会社に預かってもらえとアドバイスを受けた事がある。但し、本当に実力のあるセールス会社との契約はそんじょそこらの映画祭に入選するよりも難しいと言われ、その上費用がかかる。力のあるセールス会社の中には月に数十万円の登録料を取るところもある。とても自主制作のプチシネには無理な話だ。とは言え費用をケチって力のないセールス会社に作品を預けても、結局何もしてもらえなかったという話もある。だが、メジャーな映画祭ではこういう人達の手を借りた作品と同じ土俵で闘わなければならないという事は覚えておかなければならない。

大きな映画祭の会場で見かけるブースと呼ばれる所、あるいはブースだけを並べたイベントは、こういう狭き門の映画祭Official Selectionというのをすっ飛ばして、直接バイヤーと会ったり交渉できたりする場所で、お金さえ払えば比較的簡単に出品する事ができるので、当然、セールス会社だけではなく、個人の参加者も多い。ここでダイレクトにバイヤーに気に入ってもらえれば、いきなり外国の劇場で上映されるチャンスもあるし、他の映画祭のプログラマーも作品を物色しに来ていたりする。ひょっとしたら隣のブースには有力なセールス会社の人がいるかもしれない。

映画祭に参加する意味は賞を狙うだけではなく出会いを求める事にもある

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実は映画祭に参加する意味は賞を狙うだけではなく、こうした出会いを求める事でもある。だから自分たちや作品のプロフィールはもちろん用意しておかなくてはならないし、少ないチャンスを活かして出会った人と深い関係を築く努力とテクニックも必要で、決して単なる晴れ舞台という訳ではないのだ。そこでの行動によって作品の、あるいは今後の活動の道が大きく変わると言っても過言ではない。

さて、このようなコネやお金がモノを言う厳しい状況の中で、プログラマーとのコネもセールス会社に払うお金もない私の「千年の糸姫」という作品はどうすればいいのか?それはこの作品にとって意味のある映画祭を慎重に選び、残された一般公募という枠で応募していく外にはない。ひとつだけボヤくが、たとえ有名人が出ていなくても、いや、ネームバリューやお金を使わずに、これほど険しい道を勝ち抜いて、入選、受賞を果たした他の作品を含めて、日本のマスコミ、劇場、そしてオーディエンスにはもう少し興味を持って注目をしてほしいと思う。それ相応の魅力がきっとあるのに違いないのだから。私もこの作品の魅力を信じて、前のような手前味噌の劇場公開でお茶を濁すような事は決してせず、映画祭への挑戦を続けて行きたいと思う。早く観たいという涙が出るほど嬉しい言葉も戴いているが、公開までは今しばらく待っていただきたい。


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ふるいちやすし 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。


[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2016-06-15 ]
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