txt:オースミユーカ 構成:編集部

大人たちが真剣に遊んでみたら

子ども番組の演出で楽しいのは、美術や小道具をかんがえること。テレビの前の子どもたちを驚かせるために、アナログでバカバカしい手法を思いつき、実際に作ってみることができるのは、いたずらを考えているみたいでただただ楽しい。Eテレで制作している「で~きた」は昭和のアニメ的なノリや、ドリフっぽいベタな笑いをふんだんに番組のドラマパートに入れこんで子どもたちを笑かしてやろう、と大人たちが真剣に遊びながらつくっている。

番組内のミニドラマでは、主人公おうすけくんの失敗が描かれる。ドタバタと積み重なっていった「できないこと」を前に、どうしていいか分からないおうすけくんは、感情がMAXに振り切れて「どうして~~!!」と自問自答するという設定だ。その表現をどう面白く描くか?と考えたのが、涙がぶらり~んと眼から揺れて泣き叫ぶ、というベタなのり。巨大な涙を作って昭和アニメ的な表現を実際に実写でやってみたら面白そう!

さっそく涙の小道具(仕掛け)制作をお願いしたのは、数々のNHK人形番組、美術を手がけているスタジオ・ノーヴァ。人形劇一家の元で育ってきた私としては、ワクワクしすぎる会社とのおつきあいがはじまった。スタジオ・ノーヴァは人形劇団プークから派生した制作集団で、実際プークの人形劇を観に行くと、ひとりの人形使いがいろんな役をやったり、あっと驚く美術を出して物語を展開させたり、とアイデアあふれる美術が次から次へと出て来るのだ。まずは打合せで簡単なラフを描き、口頭でイメージを説明した。すると数日後に先方からイメージ図があがってきた。

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涙の形がこの形状(上イメージ図)でいいのか、素材、取り付け方法など、提案がいろいろあった。番組は一年も続くのでその間壊れないものにする必要があるし、具体的なアイデアには美術制作のノウハウがつまっている。あがってきたイメージ図に対して、私からのお願いは…

  • 線の部分を細く、○の部分を大きめにすると、もっとおもしろくなりそう
  • ポイントは、ビヨヨヨ~ンと伸び縮みすること
  • 線の部分はゴムのような素材、○の部分は重しみたいになるのが理想
    (線の部分の途中までは固いもので、先の方の線と○だけ揺れるとかでも面白いかもしれません)

小道具だけでなく、映像制作はこういうやりとりを何度となく経て少しずつ最終イメージへと近づけて行く地道な作業が大切だ。衣装や眼鏡のデザイン、出演者のオーディションなども並行して進んでいき、その情報を共有することで、お互いのイメージもより具体的になっていく。二日後に先方から私に送られて来たのは、試作品とともに、動画付きのメール。スタジオ・ノーヴァからの提案は…

  • イメージとは違うかもしれませんが、硬いものも面白いのでは?
  • 目から涙が出ているように見せるために、添付のイラストのように涙の溜りも一体であった方が効果的?
kokoro_16_02-03 写真左:第一段階の試作品
写真右:涙溜まりが眼鏡について、目から涙を流しているようにみえるような提案。かつ眼鏡にがっちり補強されて安定感もある。ナイス!

涙の動きイメージ映像

制作過程に流れる幸せな時間

動きは硬いものでも面白いかもなあと思いつつ、当初思い描いたビヨヨーンと伸びる涙のイメージが、捨てきれない私…。数日すると、柔らかいビヨヨーン涙の試作品も完成して、映像イメージが届いた。

樹脂で作られ、動きにあわせて伸びる涙。しかも涙らしい透明感がある。うーん、完璧

これぞ求めていたイメージであり質感のものが出来上がった。最終的に色味の微調整や、涙の長さ、大きさ違いを三段階で作ってもらうなど、またまた無理難題をお願いしつつ、こんな感じの仕上がりになった。

kokoro_16_04 完成品はこちら。主人公おうすけくんの感情がMAXになると涙が溢れる
◎Eテレ「で~きた」毎週火曜午前9:00~9:10 NHK Eテレにて放送
http://www.nhk.or.jp/tokkatsu/dekita/(番組HPでいままでの動画も配信されています)

この他、段々と増えていくタンコブや、デキナイヲデキルマンのカツラ、学校のミニチュアセットなどいつもワクワクさせてくれる美術を作ってもらった。その制作過程にはいつも幸せな時間が流れている。

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左が制作段階のもの。右が仕上がり

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デキナイ小学校のドラマパートはスタジオにセットを組み、外観はミニチュアで作っている。カツラ、ミニチュア、タンコブともスタジオ・ノーヴァ制作

WRITER PROFILE

オースミ ユーカ

CMやEテレ「お伝と伝じろう」「で~きた」の演出など。母業と演出業のバランスなどをPRONEWSコラムに書いています。